取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長

日本IBMは7月7日、2016年度のクラウド事業方針に関する説明会を開催した。説明会には、今年3月まで日本オラクルの執行役副社長を務めていた三澤智光氏が、取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長として登壇した。

初めに、三澤氏はクラウド事業の新体制について説明した。これまで、クラウド事業関連の部門として、IaaSをカバーする部門「クラウド・サービス」とクラウド上で動作するソフトウェアをカバーする部門「クラウド・ソフトウェア」があったが、今回、これらを統合して「IBMクラウド・プラットフォーム」という体制を整備し、同氏が率いていくという。

続けて、IBMクラウドのポートフォリオが紹介された。同社は、IaaSとして「SoftLayer」、PaaSとして「IBM Bluemix」、SaaSとして、Watsonをはじめ100を超えるサービスを提供している。

IBMクラウドのポートフォリオ

三澤氏は「どのベンダーもIaaSも提供しており、IaaSは差別化の要素にはならなくなってきている」としながらも、「一般的に、SoR(Systems of Record)はパフォーマンスなどの面でクラウドと相性が悪いと言われているが、SoftLayerはGPUを含むカスタマイズ可能なベアメタル・サーバを占有できるため、ハイブリッドクラウドとして、SoRをクラウドに移行する際に有利」と述べた。

Bluemixは、IBMとテクノロジー・パートナーを含む130種類以上のサービスやAPIのカタログを提供しているが、従来のソフトウェアのクラウド対応から、開発環境、ハイブリッドクラウドへのインテグレーション、コグニティブなど幅広い領域をカバーしている。加えて、「Public」(パブリッククラウド)、「Dedicated」(SoftLayer上の自社占有環境)、「Local」(自社データセンターにおけるマネージド・サービスとしてのBluemix)と3種類の環境で利用できるのも特徴だ。

IBM Bluemixの特徴

三澤氏は、IBMのクラウドプラットフォームを支えるポイントとして、オープンな技術とオープンソース・ソフトの活用、オープンソース・コミュニティへの貢献を挙げた。同社は、OpenSack、node.js、Cloud Foundry、Apache Spark、Dockerの開発にコミットしているという。

さらに、IBMのクラウドプラットフォームが注力する分野としては、「SoftLayerとBluemixを主軸としていくこと」「グローバルパートナーシップ」「業種・業界別活用の推進」が紹介された。

まず、「Bluemixの下にSoftLayerがある状態」にし、BluemixでIaaSもPaaSも制御できるようにするため、両者を統合していく。具体的には、アカウントとユーザー・インタフェースを統一することで、SoftLayerとBluemixの連携を強化する。

アカウントとUIが統一されたSoftLayerとBluemix

同日、企業がハイブリッド・クラウドへ移行する中で、既存のオンプレミスのデータやアプリケーションをクラウドに連携させるための製品群「IBM Connectシリーズ」の一部を2016年12月まで無償で提供することが発表された。

無償提供の対象となる製品は、API管理・運用ソフトウェア「IBM API Connect」を中心に、WebSphereユーザーのAPI公開を支援する「IBM WebSphere Connect」、業務ユーザー向けアプリ連携ソリューション「IBM App Connect」が含まれる。

2016年12月まで無償で提供される「IBM Connectシリーズ」の製品

グローバルパートナーシップとしては、VMwareとSAPの提携が紹介された。VMwareとの提携は、今年2月に開催されたイベント「IBM InterConnect 2016」で発表された。この提携の下、VMwareの製品のライセンスをIBMクラウドからワンストップでCPU単位の月額課金で提供され、VMware製品のワークロードのプロビジョニングや拡張がIBMクラウドに対し容易に行える。

SAPとの提携は今年4月に発表、これにより、IBM Cloud上でSAP製品を利用できる「IBM Cloud for SAP スタートアップ」を提供する。最短契約期間は3カ月間で、事前に用意された環境を用いて、「SAP S/4HANA Simple Finance」「ERP on HANA」「BW/BPC on HANA」を3~5営業日程度で顧客に提供するという。

三澤氏は、クラウド事業の展望について「既存の顧客のシステムはまだクラウドの導入が進んでいないため、短期的にはこれらのモダナイズを進めるだけでもビジネスの成長が望める。また、中長期的には、コグニティブという概念を取り入れたアプリケーションの利用が広がることで、これを支えるプラットフォームとしてクラウドが必要になることから、成長が期待できる」と説明した。