台湾の市場動向調査企業TrendForceの半導体メモリ市場専門の調査部門であるDRAMeXchangeは7月5日、「DRAM 価格は6月に底を打って、今後反転するだろう」との見解を発表した。主流のDDR3 4GB製品の大口顧客向け契約価格は2014年10月には32,75ドルだったが、2016年6月には12.5ドルへと62%も低下していた(図参照)。

DRAMeXchangeの調査ディレクターであるAvril Wu氏は「DRAM価格は、ほぼ2年に渡り低下してきたが、先月(2016年6月)は1カ月を通して12.5ドルでほとんどの価格交渉が成立したので、契約価格は安定したように見える」と述べている。

図 DDR3 4GBの平均契約価格の推移(2014年10月から2016年6月まで、ほぼ単調に低下し続けてきた) (出所:DRAMeXchange 2016年7月)

DRAM減産で価格は上昇へ

徐々にDRAMの供給がタイトになってきているため、一次(first-tier)PC OEMは、2016年第3四半期(7~9月期)のDRAM買付契約の交渉をすでに6月に始めている。DRAMeXchangeは、DRAM契約価格は第3四半期に久しぶりに上昇すると見ており、その上げ幅は4~8%程度だと予測している。すでに、DDR3 4GB製品のスポット価格は7月1日までに9%値上げし 16.5ドルになっている。

現在、DRAMメーカーは、PC向けDRAMを減産しているほか、NAND型フラッシュメモリを量産しているSamsung Electronicsの中国・西安工場が市内の変電所の爆発事故の影響で、一時操業停止に陥った影響もあり、DRAM, NANDとも価格は上昇気味である。

ちなみにこの一時操業停止は、6月18日に西安市内の変電所の爆発事故が起こり、工場自体は別系統の電力供給であったため停電そのものは免れたが、電圧が低下。そのため、かなりな製造装置が電圧異常を感知し、結果として停止してしまったため、仕掛かりウェハが不良となり、出荷量が減少したというものである。

モバイル用とサーバ用が値上げをけん引

Wu氏によれば、第3四半期には、モバイルおよびサーバ用途のDRAMが契約価格を押し上げるけん引役となるとしている。PCの需要は減少傾向にあり、それに輪をかけて、Windows10へのOSアップグレードの有料化は、メモリ増設に水を指すことになると見ている。PC向けDRAMの価格は、現金支出原価(cash cost)とほぼ同じになってしまったため、韓国メーカーはPC向けDRAMの生産比率を第2四半期に落とし続けた。このため、PC用DRAMは一部で品薄ぎみになっている。

幸いにして、今年のスマートフォン1台当たりのDRAMメモリ容量は、前年比36%ほど増加する見込みで、今年後半に発売されるフラッグシップモデルには最大6GB搭載される見込みである。またサーバ1台当たりの搭載DRAMも今年は25%成長し110GBに達すると見られており、DRAMメーカーは同分野に期待をかけている。

微細化により利益増大を目指す

Samsungは業界に先駆けて20nmプロセスでの量産化に成功し、他社より高歩留まり、低価格化が図れているが、さらに業界最微小の18nmプロセスを用いたDRAMの生産を開始しようとしている。韓国SK Hynixおよび米Micron Technologyは2015年第4四半期より、それぞれ20nmプロセス、21nmプロセスを用いたDRAM生産を開始しており、現在、その比率を増やそうとしている。

このような微細化の促進により、ウェハ当たりの収穫できるチップ数を増やして、利益を増やそうとしている。用途別生産量の調整や微細化の推進により、2016年の後半、DRAM市場は以前より健全になるだろうとDRAMeXchangeは見ている。