2016年7月5日、日本マイクロソフトは7月1日から始まった同社の新しい会計年度における経営方針説明会を開催した。そのなかで日本マイクロソフト 代表取締役 社長の平野拓也氏は、Windows 10無償アップグレードの対応について、「ユーザーの皆さんにご不便を強いてしまった。反省している。ご意見を真剣に受け止め、サポート体制を強化する」と述べた。

日本マイクロソフトの設立は1986年2月のため、ちょうど今年で30周年を迎える。前年度(2016年度)のMicrosoftコーポレーションは、Windows 10やSQL Server 2016のローンチ、Red Hatとの提携に代表されるOSS(オープンソースソフトウェア)との連携強化、Surface BookやMicrosoft HoloLens Development Editionのリリース、Windows Holographicプラットフォームの提供、ビジネス向けSNSのLinkedin買収など、話題に事欠くことはなかった。2015年から代表執行役社長に就任し、2016年7月1日から代表取締役社長となった平野拓也氏は、1年を「あっという間だった」と振り返る。

日本マイクロソフト 代表取締役 社長 平野拓也氏

また、Microsoftの「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」とともに、日本マイクロソフトの「革新的で、安心でき、喜んで使って頂けるクラウドとデバイスを提供する」という自社のミッションを掲げ、「お客様を支援するよう今期も努力していく」(平野氏)と新たな会計年度の抱負を述べた。

具体的には、3つの大きな柱を掲げる。1つめは、ワークスタイル変革を核とした、働き方を変えて社員の生産性を高める「プロダクティビティとビジネスプロセス」。2つめは、IoTやAI(人工知能)、ML(機械学習)といったキーワードを実際のビジネスにつなげる「インテリジェントクラウド」。そして3つめは、Windows 10に代表される新OSやSurface Book、Microsoft Hololensといったデバイスを指す「革新的なパーソナルコンピューティング」だ。「この3つを軸にして活動を展開する」(平野氏)。

前年度のMicrosoftによる活動を写真で表したもの。Build 2016に登壇したMicrosoft CEOのSatya Nadella氏(左下)やLinkedin買収時の写真(右下)などが並ぶ

筆者が注目したいのは、「革新的なパーソナルコンピューティング」で平野氏が触れた、Windows 10無償アップグレードの件だ。ちょうどWindows 10は平野氏が代表執行役社長に就任した年にローンチしているため、色々な思い入れがあるのかも知れない。既に企業の8割が導入検討を行っているとアピールしつつも、この数カ月の無償アップグレードにまつわるトラブルについて、次のように述べた。

「Windows 10無償アップグレードに関して、多くの意見やご不満の声を受け取った。ユーザーの皆さんにご不便を強いてしまい反省している。(日本マイクロソフトは意見を)真剣に受け止め、コールセンターの人員を4倍にするなどサポート体制を強化していく」(平野氏)。また、平野氏は日本の状況を米Microsoftへと個人的にフィードバックし、WGX(Windows10を入手する)のUI変更にも寄与したという。消費者庁が行った注意喚起についても、日本マイクロソフトがリーチできないユーザーに告知できたと感謝を述べた。「今後も日本マイクロソフトはお客様の声を真剣に受け止め、迅速な対応と情報発信をさらに心掛けていく」(平野氏)。

こちらは日本マイクロソフトの活動を同じように写真で表したもの。第4回テレワーク時のイメージショット(左上)や、Nadella氏来日時の授業参観シーン(右下)などが特徴的だ

日本マイクロソフト 常務役員 常務 コンシューマー&パートナーグループ担当 高橋美波氏は、現在の約6年と言われているPC買い換えサイクルについて言及。「これを5.5年に縮めれば、PC市場の盛り上がりにもつながる。そのためWindows 10 Anniversary Updateリリース以降のWindows 10搭載PCについては、Windows Helloを中心とした機能をアピールし、PCゲームへの取り組みも秋を目標に進行中だ」(高橋氏)と語る。

他方で、今年度(2017年度)の日本マイクロソフトは、「デジタルトランスフォーメーションが最重要テーマ」(平野氏)とも。具体的には「ワークスタイル変革」「セキュリティ」「グローバルオペレーション」という3分野に対して注力し、専門部隊の立ち上げや自社ノウハウのソリューション化を行う。そのほか「クラウド利用率の増加」「デジタルカルチャーの醸成とデータプラットフォームの拡大」「法人分野でのWindows 10普及」「最新デバイスによる新たなエクスペリエンスの実現」「クラウド時代のパートナーシップ」といった重点分野を設けて、クラウドを中心としたビジネスを展開する。

日本マイクロソフトが今年度重視する6つの取り組み。クラウドへの注力具合が印象的だ

社内文化については「Grwth Mindsetを実現する」(平野氏)とした。米国の心理学者、Carol Dweck氏のMindset理論であるGrwth Mindsetは、固定思考と成長思考を通じて「成長する考え方」を持つというもの。平野氏は「お客様本位」「ダイバーシティ&インクルージョン」「One Microsoft」という3つのビジョンを掲げて、顧客視点の行動を徹底し、介護の不安を解消する取り組みなどを通じて、働き甲斐のある職場の提供、社外文化を取り入れた企業文化の実現を目指すとした。「日本発のイノベーションと醸成で、国としての競争力向上に貢献したい」(平野氏)としつつ、日本マイクロソフト 執行役員 会長の樋口泰行氏が常々語っていた「日本に受け入れられる企業」の実現を目指す。

左から、日本マイクロソフト 執行役員 政策渉外・法務本部長 スサンナ・マケラ氏、同社執行役員 Dynamics ビジネス統括本部超 岩下充志氏、同社執行役員 エンタープライズサービス ゼネラルマネージャー ヘニー・ローブシャー氏、同社常務役員 常務 ゼネラルビジネス担当 高橋明宏氏、同社常務役員 常務 パブリックセクター担当 織田浩義氏、平野氏、マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 社長 安達理氏、日本マイクロソフト 執行役員 常務 マーケティング&オペレーションズ担当 マリアナ・カストロ氏、同社常務役員 常務 コンシューマー&パートナーグループ担当 高橋美波氏、同社執行役員 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏、同社執行役員 最高技術責任者 榊原彰氏

阿久津良和(Cactus)