2011年開催の「第36回ホリプロタレントスカウトキャラバン~次世代声優アーティストオーディション~」にて、"声質と伸びしろ、そして抜群のほっとけなさ"でグランプリに選ばれ、ホリプロ所属の声優アーティストとなった田所あずさ。2014年7月30日にアルバム『Beyond Myself!』で歌手デビューして以来、「明るく元気に後ろ向き」というキャッチフレーズとは裏腹に、その圧倒的な歌唱力と前向きなパフォーマンスで聴く人の心を掴んできた。

田所あずさ(たどころあずさ)。1993年11月10日生まれ。ホリプロ所属。主な出演は『アイドルマスター ミリオンライブ!』最上静香役、『アイカツ!』霧矢あおい役、『アイカツスターズ!』二階堂ゆず役、『無彩限のファントム・ワールド』ルル役など
撮影:西田航、河邉有実莉(WATAROCK)

今回は、2ndアルバム『It's my CUE.』のリリースを2016年7月6日に控えた田所にインタビューを実施。自身のことをネガティブと評する姿からは想像もできないほど歌うことに対し真摯に取り組む彼女に、本アルバムの魅力についてじっくりと迫った。

田所あずさの目指す音楽「タドコロック」

――前回のアルバム『Beyond Myself!』から丸2年、とうとう2ndアルバム『It's my CUE.』が発売されます。現在の心境はいかがですか。

『It's my CUE.』は歌っていて楽しいと思える楽曲がたくさんあります。その上で挑戦させてもらえる曲もたくさん! レコーディングを行うたびに少しずつ前に進めている気がして、めちゃめちゃ勉強になります。素敵な楽曲たちばかりなので、私も少しでも「魅力的な曲にしていかなきゃ、成長しなきゃな」と思いながらレコーディングをしていました。

――『Beyond Myself!』の時と比べて、レコーディングをする上で変わったことなどはありますか?

そうですね~。……うーん、実は前回の記憶がもうほとんどないんです(笑)。でも、新たな試みや、歌い方にもチャレンジさせていただいているので、新鮮な気持ちでレコーディングをしました!

――今回のアルバム『It's my CUE.』のコンセプトは……。

ロックですね。

――タドコロック!

えへへ。タドコロックはもうただのダジャレです(笑)。私は元々ロックが好きで、ずっと歌いたいと思っていました。今回はその願いを叶えてもらった形ですね。

――田所さんのランティス特設サイトで掲載されている「田所あずさ新聞」にもありましたね。1stシングル「DREAM LINE」はロックに向けての第一歩。2ndシングル「君との約束を数えよう」でロック感、バンド感を強め、3rdシングル「純真Always」の製作時にはもう2ndアルバムで作るべきものが明確になった、と。すべて計画していたわけではないのかもしれませんけど、『It's my CUE.』に向けて、壮大な「田所あずさプロジェクト」が始動していたんだなと感じました。

私が「ロックが好き」と言い続けていたから叶えていただいたので、最初のころはこうなるはずではなかったと思います(笑)。でも、満を持して……ですね!

――今回のアルバムでは「spit out」、「アンソリティア」と作詞もされていますよね。……英語の作詞はされないんですか?

しませんよー! 一生しません!(笑)

――言い切っちゃって大丈夫ですか?

いいんです! 絶対やらないと誓います(笑)。

――田所さんは『スーパーナチュラル』や『ウォーキング・デッド』を始めとした海外ドラマにハマって英語の勉強を始めました。『声優グランプリ』の連載「トラブルトラベル英会話」や、ラジオ「田所あずさのオールナイトニッポンモバイル」でも英語力を鍛えていて、かなり英語力がアップしていますよね。

いやいやいや、やめてくださいよー半笑いで言うのー!

――失礼しました! そういえば『アイドルマスター ミリオンライブ!』の3rdツアー・福岡公演でも英語を披露していましたよね(「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 3rdLIVE TOUR BELIEVE MY DRE@M!!」。1月31日から4月17日まで、名古屋、仙台、大阪、福岡、幕張の5都市7公演で開催された全国ツアー)。

あれは問題がいじわる!(笑)。しょうがなかったです。

――ではやっぱり得意?

もー! 得意って言わないです、一生!

――ははは。田所さんは昔から歌うことが好きだったんですよね。

小さい頃から大好きでした。でも、小さいころは音痴って言われていたんですよ。

――ええっ! 信じられない……。

おばあちゃんの飲み屋で「歌いたい!」と言っても、「駄目だ!」って。母にも「下手だ」と言われていました。あ、昔は運動神経も悪かったんですよ。

――テニス部で部長も務めていたのに。

そうなんです。なにかを境にすべてが変わったんですよ。なぜか運動神経もよくなって、歌もより好きになりましたね。

私の出番!

――不思議だなあ……。そこはまた次の機会にお話を聞かせてください! それではアルバムの話に移りたいと思います。リード曲の「It's my CUE.」を聴かせていただきました。いつもの田所さんの歌い方とはかなり変わっていて、カッコ良さに驚きました。あれは田所さんが思うロックの表現なのか、歌唱指導あってのものなのか、どちらでしょうか。

両方ですね。私にできるカッコ良さは意識しました。そこからディレクターさんに、クセの入れ方とか、「ここで息継ぎしたほうがカッコいいよ」とか、細かい部分をディレクションしていただいて、一緒に作っていきました。

――アルバムタイトルでもあり、リード曲でもある「It's my CUE.」には「私の出番」という意味が込められています。このタイトルの由来は?

元は、私のブログ(「不安でしょうがないっ!」)の記事タイトルでも使った「That's my cue.」ですね。アルバムタイトルを決める会議のときに、好きな海外ドラマに出てくる単語みたいなのをたくさん出したんですよ。そのときに「That's my cue.」が目に止まって、「It's my CUE.」にしたらいいんじゃない? って。「ここから私の出番だ」って意味で、ロックでカッコいい感じもするじゃないですか。それに、私はみんなを引っ張っていけるようなアーティストにあこがれているので、「私についてきて」というニュアンスも入っているような気がしたので、『It's my CUE.』に決まりました。

――ライブのMCで「いつかみんなを引っ張っていける人間になるまで、私を信じてついてきてください」と言っていたり、別のインタビューでも「みなさんを引っ張っていけるステージにしたい」と発言していましたもんね。「It's my CUE.」はMVも収録しましたね。

はい、今回もバンド演奏のシーンが入っています。初のツインギターもありで、よりロックに振っていただいて嬉しかったです。広い空間で一曲通しくらいの感じで撮影したんですけど、汗ダラダラでハァハァしながら撮影して、ライブ感があって楽しかったですね。あと、目の下にビーズを貼って涙のメイクをするシーンがあって、これはいままでのMV撮影にはなかったので面白かったです!

――MVからでも楽しそうなのが伝わってきました。それでいてすごくカッコいい。アルバム1曲目、「Come on,A-Z!!(before the CUE)」はいかがでしょうか。

疾走感があって、アルバムの1曲目にぴったりだと思いました。テンションが高まる「始まり感」があって、アルバムの期待度を高めてくれています。ライブの想像も膨らみましたね。ファンのみんなが歌う部分がたくさんあるので。はやくみんなと一緒に歌いたいです

――「Its' time,A-Z!! Come on,A-Z!!」ですね。「A-Z」はやはりAZUSAから?

それもあります! あとはAからZ。最初から最後までついてこーい! って。

――まさに「私の出番」というアルバムコンセプトと、田所さんの目指す「私についてきて」というアーティストにピッタリな1曲目になりましたね。次は3曲目の「Fighter's high」。

この曲は難易度が高かったですね。作詞作曲のQ-MHzさんがレコーディングに来てくださって、アドバイスをいただくこともありました。たとえば、「センチメンタル抗生剤じゃ」や「センチメンタルチューニングして」という歌詞があるんですけど、ここの「センチメンタル」の「ル」の部分をはっきり発音していたんですけど、「そこまで発音しなくていいよ」って。

――声優という職業上、ついちゃんと発音したくなってしまう。

そうなんですよー。「ル」を言うことによってちょっとだけリズムがずれちゃう。目からうろこでした。あとは、途中でラップ部分もあるんですけど、息を吸うところなども細かく教えていただきましたね。

――テンポが速い曲ですもんね。歌詞もすごく詰まっていますし。

だからレコーディングではすっごい苦しくて! 苦しすぎて酸欠になって腰が痛くなりました。「忍耐」って感じの曲でしたね(笑)。