テレビ局が一斉に衣替えを行う春の番組改編。今回も各局、課題の時間帯に新番組を投入したり、リニューアルを図ったりと、録画視聴が増える中でリアルタイム視聴を取り込むためのタイムテーブルを作成した。この戦略を考えるのが、"テレビ局の中枢"とも言われる「編成部」。今回は、民放キー局の「編成部長」に、春改編を総括してもらい、今後の展望についても語ってもらった。

4番目に登場するのは、他局にないオリジナリティあふれる番組制作でおなじみのテレビ東京。この4月にも、終電を逃した人にフォーカスを当てる『家、ついて行ってイイですか?』という実に"テレ東らしい"番組が、深夜のレギュラー化から半年でゴールデンに進出した。この土曜夜の改革の成果は――?

(視聴率の数字は、ビデオリサーチ調べ・関東地区)


テレビ東京 高野学 編成局編成部長
1967年、新潟県生まれ。早稲田大学卒、1990年にテレビ東京へ入社。営業、テレビ東京制作、編成、制作をへて現在に至る。

――今年の春改編は、木~土曜を中心に着手したと説明されていました。やはり目玉は『土曜スペシャル』を縮小させ、20時台に『家、ついて行ってイイですか?』を深夜から進出させたことだと思うのですが、ここまでの状況はいかがですか?

これまで『土曜スペシャル』は良い時に視聴率10%を超えていたんですが、NHKさんで『ブラタモリ』、テレ朝さんで『池上彰のニュースそうだったのか!!』が始まるなど環境が変わって、数字がとれなくなってきたので、改編しました。『土スペ』『家ついて行って』共に同時間帯の数字はちょっと下がっていますが、『家ついて行って』は、内容的にはとても良いので、辛抱してやっていったら、徐々に認知されていくと思っています。

――深夜でレギュラー化されてから半年でのゴールデン進出でした。とても迅速な決断だったように見えます。

もともとゴールデンで行こうと踏んでいたんです。特番はやっていたんですが、家ついて行っていい人がどれくらいいるのか未知数で、レギュラーになってもあのスタイルで回していけるのかというのが一番不安だったので、制作体制を作ってもらうために、昨年10月に深夜でレギュラー化させ、大丈夫だったら4月からゴールデンで行こうと決めていました。深夜でやっていた時は、M2(男性20~34歳)・F2(女性20~34歳)、男女の30代・40代も非常に多くのファンが付いてくれたので、土曜なら20時台でも視聴習慣さえつけば、年配層も含め幅広い層で見てもらえると考えています。

『土曜スペシャル』(毎週土曜18:30~19:54)
30年続く旅番組。この4月から内藤剛志をMCに迎え、旅に出たゲストが、より実用的な情報をプレゼンしていく形にリニューアルした。

『家、ついて行ってイイですか?』(毎週土曜19:54~20:54)
終電を逃した人にタクシー代を負担する代わりに、自宅を覗かせてもらうというドキュメンタリータッチのバラエティ番組。MCはビビる大木、矢作兼(おぎやはぎ)。

――ほかにも、『木曜8時のコンサート』を『金曜7時のコンサート』に移動させ、木曜20時台に『世界!ニッポン行きたい人応援団』をスタートさせました。こちらはいかがですか?

木曜は若い層の数字もとれて上がりました。金曜は少し下がっているという状況です。総論として、4月の熊本地震で潮目が変わってきたという気がしています。東日本大震災の時も随分感じたのですが、大きな災害があると、NHKさんに大きくとられる傾向があって、中でも年配の視聴者層に支えられているテレ東が、一番影響を受けやすいんです。それに春の改編で『クローズアップ現代』が22時に移動して、19時半から娯楽番組が始まったので、19時台・20時台が食われていますね。そういうこともあるので、全日帯・ゴールデン帯を含めて視聴率は全体的に下がっていますが、今は我慢するしかないという気持ちで辛抱しています。

『世界!ニッポン行きたい人応援団』(毎週木曜19:53~20:54)
"ニッポンに行きたくて行きたくてたまらない"外国人を世界で捜索し、彼らの夢~日本で○○したい~を応援するため、ご招待しようという番組。出演は、織田信成、高橋茂雄(サバンナ)、眞鍋かをり。

『金曜7時のコンサート~名曲!にっぽんの歌~』(毎週金曜18:55~19:56)
宮本隆治と松丸友紀アナウンサーが司会を務める演歌・歌謡曲中心の歌番組。

――いろいろ騒動になりました『開運!なんでも鑑定団』も、若返りを図ってリニューアルされましたよね。こちらの効果はいかがですか?

世帯視聴率でいうと、昨年の同時期からはちょっとだけ下がっていますが、今まで支えてくださった高齢層だけに頼らず、40代・50代の層を取り込むという方針を出してリニューアルして、そこの層は確実に増えています。引き続き、高齢層の方々にも見ていただきながら、40・50代も狙っていきたいと思います。

――朝の情報番組は7時半スタートから、6時40分スタートに前倒しして『モーニングチャージ!』にリニューアルされました。

このゾーンを開拓するのは諦めずにやっていかなければいけないので、まさに辛抱の時間帯ですね。『Newsモーニングサテライト』という経済色の強い番組を受け、男性30~40代、女性の50代を意識して経済ネタの特集を構成するようにしたのですが、数字は上がってきているので、今の時間の方が戦いやすいと考えています。もうちょっと伸ばしていきたいと思っているので、編成的にはまだまだ辛抱です。

『開運!なんでも鑑定団』(毎週火曜20:54~21:54)
1994年にスタートしたお宝鑑定バラエティ。この4月にリニューアルを行い、今田耕司と福澤朗が司会を務める。

『モーニングチャージ!』(毎週月~金曜6:40~7:05)
平日朝の情報番組。大橋未歩・林克征両アナがMCを務め、高田延彦、光浦靖子、水道橋博士、テリー伊藤、天野ひろゆきが、曜日コメンテーターを務める。

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