プラスチック製の収納ケース、物干し竿、植木鉢、掃除機、ホットプレート、LED電球、マットレス、ペット用のトイレ……何の脈絡もないようにみえるが、これらはすべてアイリスオーヤマが実際に扱っている製品である。すでに「何の会社なの?」と思わなくもないが、筆者がこれまででいちばん驚いたのは「米」だ。

アイリスオーヤマが販売する米のラインナップは大きく分けて、2合 / 3合の小袋パック「生鮮米」シリーズ、5kg / 9kgの低温製法米、レンジで温めて食べるパックご飯の3種類。宮城県のひとめぼれのほか、ゆめぴりかやななつぼし、つや姫、あきたこまちなど、北海道と東北の銘柄を扱う

米を売り始めたキッカケ

アイリスオーヤマは宮城県に本社を構える企業。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、角田I.T.P.などアイリスオーヤマの施設も被害を受けた。東北の企業として、どうしたら東北の復興に貢献できるか。たどり着いた答えのひとつが、農業ビジネスを興し、競争力を高めることだった。そこで、農業生産法人 舞台ファームと共同出資で舞台アグリイノベーションを2013年4月に設立。かくしてアイリスオーヤマは精米事業へ参入した。

今回話を伺ったのは、アイリスオーヤマ 食品事業部 事業部長 山田次郎氏

アイリスオーヤマが販売している米の特徴は何といっても低温製法。加えて、精米したての米を密封するパッケージだ。酸化や虫の侵入も防げるうえ、米の鮮度が落ちにくい。一般的な米に比べると、割高感があるものの、そのおいしさで好評を博している。

低温製法を実現するための工場を、宮城県南部の亘理町に建設。2014年7月から稼働している。亘理町は東日本大震災の際、津波で甚大な被害を受けた地域だ。

この亘理精米工場の特徴は、先述の「低温製法」と「倉庫」の2つ。低温製法とは、保管から精米、包装まで15℃に保つというもの。精米時に発生する摩擦熱をできるだけ抑えることで、おいしさをキープできるというわけだ。

低温製法を実現する亘理精米工場

もちろん、低温製法を実現するには相応のコストがかかる。それが米の価格にも反映されているのだが、米の仕入れ値を抑えるなどして価格を下げていく方針だ。仕入れ値を抑えるといっても、農家から安く買い上げるわけではなく、農協を通さずに直で買い取るだけ。そして、それを可能にするのが亘理精米工場の2つめの特徴である「倉庫」だ。

亘理精米工場は42,000tを収容できる倉庫を持つ。一般的に、農家は出荷用の米を自身で保管しておけないので、収穫したら農協に買い取ってもらう。この倉庫の役割もアイリスオーヤマが担うことで、農家と直で売買できるというわけだ。