茶トラのカツオくん

今日のテーマは、「オス猫とメス猫で飼い方って違うの?」です。

私はこれまで6匹の猫と暮らしてきましたが、偶然にも1匹以外メス猫でした。その唯一のオス猫でさえ、実家で暮らしているので、実際にはオス猫と一緒に暮らしたことがありませんでした。

しかし、ついに私の家にもオス猫が来ました。それが茶トラのカツオくんです。実際に一緒に暮らしてみると予想以上にパワフルで、オスの性質が強く驚いています。

結論から言ってしまうと、オス猫とメス猫で、飼い方が大きく異なることはないです。ただ、性格とかかりやすい病気が異なるので、知っておくと安心でしょう。

性格の違い

まず、個体差はありますが、私は猫の性別による性格の特徴を以下のように考えています。

オス猫:大胆、活発、よく鳴く、甘えん坊
メス猫:慎重、穏やか、あまり鳴かない、自立心が強い

人間で言うと、小学生の男女の印象に似ているのではないでしょうか。特に1歳未満のオス猫のパワフルさには、初めて猫を飼う方は驚かれるかもしれません。子猫は性別を問わず遊ぶのが大好きですが、オス猫はエネルギーを発散できるように高くジャンプしたり、長くダッシュする遊び方をします。

性ホルモンによる影響

成長に伴い、猫は性成熟を迎えます。猫の性成熟は4カ月齢頃から始まります。

■オス猫の場合
男性ホルモンの影響により闘争心、冒険心が強くなります。外に出ようとしたり、縄張り意識が強くなるんですね。よって、脱走、そしてトイレ外でのマーキング行動などに注意しなくてはいけません。

マーキングは猫にとっては正常な行動ですが、一緒に暮らしていく上で許容できないレベルだと困ってしまいます。しかも男性ホルモンが強くなると尿臭も強くなります。尿によるマーキングを止めるには、去勢手術を行なうことが最も効果的な方法です。

■メス猫の場合
多くのメス猫は6カ月齢前後で最初の発情を迎えます。猫の成長はとても早いので1歳を迎えずに妊娠することもあります。この発情期で問題になるのが鳴き声です。

発情中の猫は、独特の長い、高い声で鳴きます。猫によっては夜通し鳴き続けるので、ペット可のマンションでも近隣の方に迷惑をかけてしまう可能性があります。猫は交尾排卵動物といって、交尾の刺激で排卵します。つまり交尾をしないと排卵しません。室内飼育で猫の発情期が長いのは交尾する機会がなく、排卵しないからです。

かかりやすい病気の違い

人間でも(痛風は男性に多いなど)性別によってかかりやすい病気があるように、猫にもあります。予防法も併記しますので、日頃から気にかけてあげましょう。

オス猫がかかりやすい病気

■糖尿病
糖尿病の猫の60~70%はオス猫がかかります。一旦、糖尿病になってしまうと毎日インスリン注射が必要になってしまうことが多いです。猫の糖尿病の数は、肥満率の上昇に伴って増えていますので、適正体重を維持するよう努めましょう。

■尿閉
尿閉とは、結石や尿道詮子(脱落組織、炎症細胞などの凝集物)が詰まり排尿ができなくなる病気です。オスはメスに比べ尿道が細く、また途中でS字に曲がっているため小さな塊でも詰まりやすいです。

また、実際にものが詰まる以外にも、筋肉の緊張(特発性膀胱炎など)や神経の損傷によっても尿閉は起こります。予防法は水分をたくさんとることです。これは結石形成、特発性膀胱炎、両方の予防になります。

■猫エイズウィルス、猫白血病ウィルス
猫エイズウィルス、猫白血病ウィルスの感染症は、咬傷(こうしょう)によって感染するため、喧嘩が多いオス猫に多いです。完全室内飼いにするか、ワクチンを確実に接種しましょう。

メス猫がかかりやすい病気

■細菌性膀胱炎
メス猫の尿道はオスよりも太く短いです。結石が詰まりにくい一方で、細菌が膀胱に侵入しやすいので注意しましょう。特に高齢のメス猫に多いです。細菌性膀胱炎は症状を示さないことも多いので、健康診断時に尿を調べてもらいましょう。

■乳がん
猫の場合、4対8個の乳頭が胸からお腹にかけて位置しています。腹側のほぼ全域に乳腺が広がっています。この部位にできるしこりは90%が悪性で、しかも転移、再発率がとても高いです。

予防法としては、日頃撫でている時にしこりがないかチェックしましょう。もし何かあれば、数mmのサイズでも一度かかりつけの動物病院で相談して下さい。また発情が来る前に避妊手術(卵巣摘出)を行うと、乳がんの発生率を大きく下げることができます。

■卵巣子宮の病気
卵巣または子宮の腫瘍、子宮に膿がたまる子宮蓄膿症などは猫でも見られる病気です。避妊手術(卵巣子宮摘出)が予防になります。

その他

■免疫が自分を攻撃してしまう病気
免疫が自分を攻撃してしまう病気(自己免疫疾患。全身性エリテマトーデスやバセドウ病など)は、人間の場合女性の発症率が高いです。しかし、猫では性別による発生率の違いはありません。

■前立腺の病気
人間や犬で見られる前立腺肥大、前立腺がんは猫では稀です。また精巣の病気もとても少ないです。

最後に

基本的な飼い方はオス猫でもメス猫でも大きな違いはありません。ただし、かかりやすい病気を知っておくと、健康管理の役に立つでしょう。性格については、個体差が大きいですが、ある程度の偏りはあるなと感じます。オスの方が縄張り意識が強いため、メスの方が多頭飼育でも良好な関係を築きやすいという意見もあります。あまりにオスばかり集まるとお互いにストレスになりやすいでしょう。

■著者プロフィール
山本宗伸
獣医師。猫の病院 Syu Syu CAT Clinic で副院長を務めた後、マンハッタン猫専門病院で研修を積み今年帰国。8月1日の猫専門動物病院 Tokyo Cat Specialists開院に向けて準備中。ブログ nekopeidaも毎月更新中。