一人暮らしをすることにした

37歳にして、実家を出てはじめて一人暮らしをすることになりました。一般的には大学入学や就職のタイミングで、一人暮らしをはじめることが多いと思います。37という中途半端なタイミングで、同棲や結婚を目的とするわけでもなく、ただ実家を出るというのは、めずらしいのではないでしょうか。フレッシュさのかけらもないアラフォー・パラサイトシングル(男)の誰得感あふれる記録ですが、同じような境遇の方にとって、何かのお役に立てれば嬉しく思います。

はじめての一人暮らし

□私について(Before: 実家暮らし時)
・神奈川県横浜市在住
・職場は川崎市(通勤時間: 約1時間)
・休日の過ごし方: 運動(ジム)、読書、映画鑑賞、酒を飲む
・一カ月の生活費: 約10万円
 内訳)
 ジム: 1万3,000円
 飲み: 4,000×4回=1万6,000円
 その他(雑費): 3万円
 家: 4万円

親には「30歳までに家を出て行け」と言われていたのですが、うやむやにしているうちに7年も経っていました。これだけ経つと、私が実家にいることについて、誰も違和感を抱かなくなっていました。私自身も「パラサイトシングルで何がわるい!」と、世間に対して開き直っていた節がありました。炊事・洗濯・掃除をせずに遊んでいると、このようなふてぶてしさが育まれるのかもしれません。

しかし、同時に不安を感じていました。いつまで親の脛をかじり続けるのだろう。同年代の友人たちは結婚したり、子どもを産んだり、マンションを買ったりしています。一方で私の基本的なライフスタイルは小学生の頃からほとんど変わっていません。このままじゃ、やっべーぞとは思っていたのでした。

そんな矢先、勤め先の会社が突然移転することになりました。実家からだと通勤時間が片道2時間になります。これは「引っ越せ、そして自立せよ」という天からのメッセージだと直感し、清水の舞台から飛び降りるつもりで、実家から出たのでした。家人はホッとしたことでしょう。

住まいの選び方、部屋のつくり方

どこに住むかについては、会社まで徒歩で行けるところに住みたいというのが第一だったので、会社の移転先である文京区に住むことに決めました。住まいについては、広いに越したことはありませんが、山手線の内側は家賃が高く、収入との兼ね合いがあるため迷いました。

結局、どういう生活を送りたいかを考え、それが実現可能かを脳内でシミュレーションして物件を選びました。料理をするならキッチンはこれくらい必要だとか、友人を家に呼ぶ機会がありそうかなど。私は趣味でプログラムや小説を書いたりするので、作業に集中できそうな環境を意識しました。あと腰痛気味なので、固い布団で寝起きをするための布団をしまえるクローゼットがあることが重要でした。

一人暮らしを始めた7畳の部屋

家具については、7畳の部屋がひとつだけなので、なるべくモノを持たない生活を目指しました。部屋が狭いため、モノが少ない生活を送らざるをえない状況になっていても、断捨離とかミニマルライフが流行っていますので、シンプルでカッコよく見られる可能性があります。どうしても必要な家具だけネットで注文しました。

生活に必要な電化製品、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器は、ほとんどタダで手に入りました。Twitterで「だれか私に冷蔵庫をください」と書いたら、譲ってくれる人が現れたからです。言ってみるものです。結婚するのでいらなくなったとか、子どもが産まれたので買い換えるといったタイミングが、けっこうあるものなのですね。

新生活に役立ったもの

実家から持っていくものが少なかったため、引っ越しは半日もかからず完了し、私のパラサイト人生もあっけなく終わりました。脱パラ宣言です。新生活を送るにあたって、これは助かったと思ったことがありましたので書いておきます。

■Amazon Prime Nowがやばい

Amazon Prime Nowで「あれがない!」も即解決

引っ越した直後に「あれがない!」といった場面が多々あったのですが、Amazon Prime Nowを使って2時間ほどで手に入れることができました。バスマットとか、水切りとか、お風呂の蓋とかを買いました。

IKEAも役立った

■クックパッドの特売情報がやばい

どこにスーパーがあって、どのスーパーが安いのか分からず途方に暮れかかったのですが、自宅の郵便番号を入れると周辺のスーパーの特売情報を通知してくれるサービスがクックパッドにあり、これに大変助けられました。特売品とそれを使ったレシピまで提案してくれて、普段の自分だったら作らないような、アスパラとアサリの洋風酒蒸しといった小洒落たものを作ったりできました。

クックパッドで料理もはかどる

■百円ショップはやっぱりすごい

日用品や食器は百円ショップでだいたいそろいました。ただ、食器がすべて百円だとわびしくなりそうな気がしたので、ご飯茶碗と箸と大皿は千円ぐらいのを買いました。メリハリがついて、よい感じになりました。

日用品や食器は百円ショップだいたいそろう

新生活にかかったお金は?

□私について(After: 一人暮らし時)
・東京都文京区市在住
・職場も文京区(通勤時間: 徒歩8分)
・休日の過ごし方: 主に散歩
・一カ月の生活費: 約10万円
 内訳)
 ガス/水道/電気: 6,000円
 食費: 1万5,000円
 日用品: 1万5,000円
 家賃: 4万2,000円(家賃補助が出る)
 飲み: 4,000円×4=1万6,000円

□新生活を始めるのにかかった費用
家賃: 7万8,000円
敷金: 7万8,000円
礼金: 7万8,000円
仲介手数料: 7万8,000円
鍵交換費: 3万8,000円
火災保険料: 2万円(2年分)
引っ越し費用: 10万円
家具(机、椅子、棚、寝具等): 8万円
計: 55万円

実家暮らしから、一人暮らしをするようになり、支出がどれくらい増えるか心配だったのですが(心配すぎて予測とかしたくなかった)、生活を始めるまでのイニシャルコストが結構かかったものの、それを乗り越えれば、一カ月にかかるランニングコストはあまり変わりませんでした。あくまで私のケースですが、同じぐらいの費用なら、自分のしたいように生活できる今の方が満足度が高いと感じています。若者が一人暮らしをしたがる理由が、ようやく理解できました。

職場まで徒歩8分と近くなったことによるメリットもあり、通勤のストレスもなく快適にすごしています。「会社と家が近すぎるとオンとオフの切り替えが難しくない?」と同僚によく聞かれますが、切り替えを意識したことがありません。私はずっとオフ状態なのかもしれません。

また、お金と時間の使い方を見直すよい機会になりました。お金も時間も無駄遣いをしなくなりました。すべてのことにありがたみを感じ、人々に感謝するようになりました。ほぼ毎日自炊をしていたので、たまに食堂に入って誰かが作った餃子を食べると、これまで感じていなかったうまさに目頭が熱くなりました。そんな日々が私を変えたのか、「なんかしっかりした感じがする」と言われました。いいことだらけです。こういったことは金額に換算できませんが、とても得した気分がしています。

著者プロフィール: しーなねこ

珍妙な虚脱感を共有する団体「へもいっ子クラブ」の代表。「リアル桃鉄」「エクストリーム出社」など、視点を変えて生活をおもしろたのしくすることが目標。著書「サラリーマンは早朝旅行をしよう! 平日朝からとことん遊ぶ『エクストリーム出社』」(SB新書・共著)
ブログ: しーなねこのブログ
ツイッター: @shiinaneko