映画監督に、出演役者の印象を伺っていく「監督は語る」シリーズ。今回とりあげるのは、窪田正孝(27)だ。いまや名前を見かけない月はないと言ってもいいほど多くのドラマ、映画に引っ張りだことなり、2016年上半期だけでもドラマ『臨床犯罪学者 火村英生の推理』、映画『ヒーローマニア-生活-』『64‐ロクヨン‐前編/後編』と、大作から意欲作まで幅広く作品を支える、日本の映像界に欠かせない存在となっている。

最新作となる主演映画『MARS(マース)~ただ、君を愛してる~』では、Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔とW主演を務め、深い闇を抱えて零(藤ヶ谷太輔)とキラ(飯豊まりえ)の仲を引き裂こうとする転校生・桐島牧生を演じる。藤ヶ谷演じる樫野零に執着するあまりに多くの問題を起こし、狂気を見せる圧巻の演技は、一体どのように生まれたのか。

耶雲哉治監督
1976年生まれ。富山県出身。早稲田大学在学中に自主映画を製作。2000年ROBOTに所属、2003年に第41回ギャラクシー賞奨励賞を受賞。映画・ドラマ・MV・ドキュメンタリーや、「NO MORE映画泥棒」などCM演出も手掛ける。2014年には、早見あかり主演『百瀬、こっちを向いて。』で長編映画デビューを飾り、第9回アジア国際青少年映画祭最優秀監督賞受賞。東野圭吾原作の「カッコウの卵は誰のもの」(2016年3月~/WOWOW)も手掛けている。

窪田正孝さんの印象

もう、彼は本当に「役者バカ」ですね(笑)。意外と、ふだんは冗談を言うんですよ。衣装合わせのときもずっとしゃべっていて、冗談を言いながらふざけている。でも役者モードになったときは、ストイックに作り上げるタイプです。藤ヶ谷くんは周りとコミュニケーションをとって場を作りながら自分を作り上げるタイプですが、窪田くんは話にもあまり入らなくて、本当にストイックです。

ドラマの牧生は、横にいて零(藤ヶ谷)とキラ(飯豊)の2人を見守る立場だったんですが、「実はこう思ってた」という気持ちを最終回で明かします。そして映画になった時に、本音でぶつかってきて気持ちをさらけ出す。窪田君にとっても、これまで気持ちを抑えていた分、フラストレーションを吐き出す面はあったんじゃないかと思います。ただ、牧生はわかりやすく二面性があるわけではありません。牧生自身は変化がなく、本音を出しただけなんです。この難しい役も窪田くんだからこそできたんじゃないかと思っています。

撮影現場での様子

本当に、ふだんはあんなにふざけてるのに、本番に入った途端急にスイッチが変わる。きっと準備しているんだなと思いますし、何回撮り直しても同じ演技ができるんです。もう自分で演技のプランを完璧に仕上げているんですが、「そこはこうしよう」と別の提案をした時にも、一瞬で軌道修正してくれる、すごい役者です。

これはドラマの話ですが、牧生が零に人工呼吸するシーンで、窪田くんは本当に心臓マッサージと人工呼吸の練習をしてきてくれました。キスシーンにも見えるような、きれいなシーンを撮ろうと思っていたので「そこまでリアルにしなくていいよ」と言ったら、驚いていましたね(笑)。

窪田さんのおすすめシーン

美術室で、初めて牧生がみんなの前で本音を吐き出すシーンです。もう、あっけにとられるしかない。初めて本音を出すところなので、これまでのシーンとギャップがあり、役者としても一番爆発しやすかったのではないでしょうか。こちらも「カット」と言い忘れるほどで、零とぶつかり合うシーンでは、本当に力が入ってしまっています。体を張った大迫力のシーンなので、ぜひ劇場でご確認ください。

映画『MARS(マース)~ただ、君を愛してる~』
海で奇跡的に出逢った零(藤ヶ谷太輔)とキラ(飯豊まりえ)。過去に心の傷を抱えながら孤独に生きてきた2人は惹かれあい、恋に落ちる。そこに、零の死んだ弟・聖の親友、牧生(窪田正孝)が現れる。零とキラのよき理解者であるように見えた牧生は、実は零の持つ秘めた一面「怒りに火がつくと抑えられない激しい凶暴性」に強い憧れを抱いていた。現在公開中。

(C)劇場版「MARS~ただ、君を愛してる~」製作委員会