キーサイト・テクノロジーは2016年6月10日、5G(第5世代移動通信)の実用化に向けた最新の技術動向や開発に向けた計測器/手法などの紹介を行うイベント「Keysight 5G AKIBA Summit 2016」を開催。基調講演にはNTTドコモの5G推進室 室長である中村武宏氏が登壇し、同社が考える5Gで実現されるサービスや展開シナリオ、技術コンセプト、対応周波数などを踏まえた開発ロードマップを示した。

「Keysight 5G AKIBA Summit 2016」の会場風景。会場はほぼ満員状態であり、5Gへの注目の高さが見て取れた

世界の5Gに向けた流れは、ITU(International Telecommunication Union)にて無線通信に関する規則制定と標準化を遂行するITU-R(ITU Radiocommunication Sector)が、2019年に固まる「リリース16」の5G仕様を受けて、2020年に標準化する、といった具合だ。

だが、NTTドコモは総務省が掲げた2020年商用化に沿う形で開発を進めており、遅くとも2018年には仕様が策定されていなければ、2020年での商用展開は難しいこともあることから、2018年に3GPPにより策定される「リリース15」までに規格化された技術を用いて、2020年より「5G」としてサービスを開始し、その後、202X年と同社はするが、リリース16をベースにした「5G+」へと拡張するという流れを検討している。

2020年にリリース15をベースにした5Gをサービスインし、その後、改めてリリース16を受ける形で5G+を2020年代に立ち上げるという

Keysight 5G AKIBA Summit 2016にて2020年の5G商用化に向けた取り組みの説明を行うNTTドコモの中村武宏氏

そのため2020年でのサービスインについて中村氏は、「基本的な機能を搭載し、高速通信が必要とする場所(例えば東京五輪の会場周辺)などでの提供といった限定的なものになる」といった見方を示す。また、開発の容易性を確保する意味も含め、「現状の周波数帯を継続しつつ、拡張をしていくことが必要と」とするほか、新たな周波数については「開発には時間が必要なので、2019年よりも前に割り当てられないと厳しい。デバイスベンダなどの都合としては、2016年中にもある程度の周波数帯が見えないと、端末側に搭載するRFデバイスの開発が間に合わない可能性があるとも言われている」と、機器の開発まで考えると時間的余裕はあまり残されていないとする。

こうした世界と国内の動きを踏まえると、「5Gと5G+は後方互換性を保持した規格として、5Gをベースにしつつ、拡張しやすいような仕様を最初から盛り込んでおく必要がある」とする一方、「5Gの新規割り当て周波数のみで運用できるようすることを一部の国のオペレータが求めており、そうしたことも踏まえておく必要もある」とし、現状では、LTEの発展系をベースにして、そこに新たな周波数を組み合わせることで、(LTEと5Gを)互いに密接に連携させ、スムーズにサービスを切れ目なく提供していくことがサービスとしての方向性となるとした。

2020年のサービスインでは、LTE(LTE-Advancedなどの発展系含む)の通信網と5Gが連携を図る形となる

では、そうした5Gのキラーサービスは何か?、ということを考えると、「まずは機能を提供することでサービスの土台を作り、それをサービサーが活用してもらうことを考えており、無理にNTTドコモ側からキラーサービスを生み出そうとは考えていない」としつつも、さすがに方向性そのものが見出せないと、どういったサービスを開発すれば良いのか、そのものが分からなくなるため、リッチコンテンツとしての8K対応であったり、無数のIoT機器との連携やコネクテッドカー(自動車)への対応といったものを提示しているとする。