【インタビュー】

『ばくおん!!』は一発芸みたいな作品だと思っています - 西村純二監督に訊くアニメ制作エピソード

1 メーカー名もロゴも出せないと成立しない

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『ヤングチャンピオン烈』(秋田書店刊)にて連載されている、おりもとみまな氏が描く女子高生×バイクの人気漫画『ばくおん!!』。2016年4月よりTVアニメ化された本作は、「KAWASAKI」「SUZUKI」「DUCATI」「HONDA」「YAMAHA」といったバイクメーカー5社による全面協力の下、リアリティのあるバイク描写でも大きな話題を呼んだ。

TVアニメ『ばくおん!!』西村純二監督

放送は最終回を迎え、Blu-ray&DVD第1巻も発売中の本作より、西村純二監督に、制作時のエピソードや作品の魅力について、あらためてお話をうかがった。

西村純二監督が語るTVアニメ『ばくおん!!』の魅力

『ばくおん!!』キービジュアル

――最初に原作を読んだときの感想はいかがでしたか?

メーカー名などが全部実名だったので、雑誌媒体はそのあたり、あまり厳しくないんだな、というのが正直な最初の印象でした(笑)。基本的には、初めて『ばくおん!!』というバイク漫画を読んだ人と同じだと思います。学園モノ風の"バイク楽しい!"って作品かなと思って読み始めたんですけど、実は、先生のバイク哲学の教本でしたね(笑)。辛辣なギャグの嵐でそれがすごく面白くて大笑いさせてもらいました。

――ご自身でもバイクに乗っていらっしゃる西村監督個人としての素直な感想という感じですね。

『ばくおん!!』には、少し世代が古い話もたくさん出てきます。まさに若い頃の自分が感じていた事そのまんまだったので、余計に面白かったですね。

――監督として、どういったポイントをアニメにしていこうと思いましたか?

『ばくおん!!』は、実在するメーカーのことを好き勝手に語る作品です。これをTVシリーズでやるということは、メーカー名もロゴも、そのまま出す、それが無理なら成立しない。その上で、アニメにするために、表現を柔らかくしたり、「このエピソードは放送できません」みたいな、自主規制でゆるくしたりするのはやめようと。

『ばくおん!!』第8話「ふゆやすみ!!」。バイクに乗る羽音

――あくまでも攻めの姿勢で。

『ばくおん!!』という原作をアニメ化するということは、原作をそのまんま表現することだと思いました。バイクメーカー的には、このアニメに協力するのは勇気のいる決断だったと思います。原作にあるエピソードを、一切ゆるめることなくやっていますからね。実際、オンエアが始まったら、ネットなどで「スズキ、大人」みたいなリアクションがあって(笑)。でも、実は『ばくおん!!』でのスズキは意外とおいしいポジションなのではないかと……。なんだかんだで、バイクに乗ったこともないし、興味もなかった人でも、スズキに"カタナ"というバイクがあることは知ってもらえたのではないかな、と思います。

――実際にバイクに乗っている人が考えるリアルに非常に近いところがあると思います。

実際、『ばくおん!!』の中で、原作者が語っている各メーカーに対する物言いというのは、一理あるような気もします(笑)。スズキはやっぱりちょっと個性的なメーカーですよね? これは四輪の話になりますが、アルトワークスという軽のスポーツモデルがあって、非常に面白いと思っているんですけど、リアブレーキがドラムなんですよ! もちろん前はディスクで、キャリパーも赤くてカッコいい。なのに後ろはドラム。当然、性能的、コスト的、そして売り方など、いろいろな判断があった上だとは思うんですけど、普通に考えて、後ろがドラムのスポーツはホンダは出さないかな(笑)。

――そこはコストの問題じゃないですもんね。

これは四輪の話ですけど、スズキはそれができちゃう。そして、誰もそれにツッコまない(笑)。ツッコんでるのは俺だけで、周りは誰もそれを問題にしない。「その分、コストが下がるんだし、動力性能的にも問題ないでしょう」って。そんなスズキと言うメーカーの我が道を行く面白さをおりもと先生はわかっているんだなって思いました。

――ちなみに、原作者であるおりもとみまな先生とは何かお話はなさいましたか?

大まかな構成ができた段階で、シナリオに入る前に、一度先生とお会いしてお話を聞こうということになり、お会いしました。会議室に来るなり、いきなり先生が話し始めて、そこからまったく話が止まらなくて(笑)。ご自分のバイクの話から、『ばくおん!!』の世界観、さらには虚実取り混ぜたバイクの歴史まで、ずーっと先生がしゃべって、小一時間ほどしたら「じゃあこれで」と帰って行かれました(笑)。

――それだけですか?

本当にそれだけ。とにかく強烈でした。「バイクライフを送る女子高生たちをかわいく描いてください」みたいな話は一言もなく、「バイクというのは古代ギリシャ神話の時代から存在していて……」みたいな話を延々とされたんですけど、それがすごく面白かった! 先生の立ち位置や、その片鱗みたいなものがわかった気がしたので、これなら作れるなって思いました。それこそ、"女の子は可愛く、バイクはカッコよく"とかって言われたらどうしようって感じでしたが、そんな話は一切なかったです(笑)。

『ばくおん!!』第7話「ぶんかさい!!」。文化祭でのバイクレースシーン

――それでは実際の制作現場のことをおうかがいしたいのですが、今回の作品では、本物のバイク音を使ったりしていますよね。

音に関して言えば、実際にバイクに乗っている人にとって、絵と音が違うのはめちゃくちゃ気持ちが悪いんですよ。自分がこれまでに観てきた映像作品の中でも、気になったことが多々あって、これについては、周りの製作スタッフも全く同意見でした。

――音を売りにするのではなく、音が邪魔しないために本物を使ったという感じでしょうか?

その意識のほうが強かったです。もちろん、実際のバイクの音を売りにするというのは間違いではないんだけど、演出としての考えは、「気持ち悪くさせない」ことが第一。だから、極端にいえば、観ている人が気にならなければ、本物と違っていても問題ないという立ち位置ではありました。

――絵作りに関しても、実写を使う以上、その再現には苦労したのではないでしょうか?

バイク本体に限らず、どのレベルまで再現すれば良いか、というのは大きな問題でしたね。例えば、ヘルメットのあご紐を取る、取らないという問題がありました。例えば、登場人物がバイクで登場して、ガバッとヘルメットを取って歩いて行くのを見ると、「あご紐はどうしたんだ?」って思ってしまう。演出的にはあご紐を取るなんて行為は邪魔なんですよ。短い時間の中、やりたいことが山のようにあるのに、いちいちあご紐を取る描写なんか入れてられない。だから、それを省いてしまっても間違っていないし、気にもならないと思うんですよ。でも、俺みたいにどうしても気になってしまう人間もいる(笑)。もちろん、『ばくおん!!』でも、そこをいちいち描くなんてできないんですけど、そこは意識した演出、観ている人が気にならないような描写というのは心がけています。

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インデックス

目次
(1) メーカー名もロゴも出せないと成立しない
(2) 女性キャストに理解してもらうのが大変だった

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