KDDI直営のauショップの6店舗目となる「au SAPPORO」が北海道札幌市で23日にオープンした。au HAKATAに続く50坪の広さの中規模店という位置づけで、auのライフデザイン提案の拠点として、直営による販売ノウハウの集積を図りたい考えだ。同店舗に取材する機会があったので、本稿ではその模様をレポートする。

札幌駅ビル。このパセオ内にau SAPPOROがオープン

地下1階、連絡通路から入ってすぐに位置している

札幌駅ビル内のパセオの地下1階に出店された同店舗は、木材を基調とした什器に、スマホなどの通信端末だけでなく、アクセサリーやau WALLET Marketで取り扱う物販商品を並べ、ドアのない開放的な店舗デザイン。小さく「au」のロゴはあるが、一見するとauショップには見えないのも特徴だ。

auロゴは横に1カ所だけで控えめ

間口の広いデザインで、一見するとauショップには見えない

初の中規模直営店となった福岡県福岡市の「au HAKATA」は、店舗の半分に物販商品、もう半分に通信関連製品を分けたデザインだった。これに対してau SAPPOROは物販と通信関連を分けずに並べており、両店での利用者の動向を検証する意味合いがあるという。

正面にはアクセサリ類を展示

こちらはオフィシャルスポンサーの北海道日本ハムファイターズのグッズも販売

もともと、KDDIは直営店として東京・原宿に「KDDI Designing Studio」をオープン。auブランドの発信基地としての役割を担ってきたが、直接ユーザーと接する直営店を各地に設けることを目的に、名古屋を皮切りに新宿、大阪、福岡と各地に旗艦店をオープンさせてきた。

au NAGOYAからスタートした直営店の6店舗目がこのau SAPPORO

これまでの直営店の役割

au HAKATAは左右で商材を分け、au SAPPOROは各種商材を混在させた

当初は新情報・新商品の発信拠点として位置づけていたが、2014年以降は、「モノ」から「コト」へ、というテーマで端末とライフデザインの提案の双方を提供することをコンセプトにしてきたという。15年以降は、通信関連の端末やサービスに加え、さまざまな商材を提供する拠点として、電気、保険、物販といった商材を扱う拠点として運営されている。

これまでの直営店は大型店だったが、4月のau HAKATAは中規模店として、ほかのauショップと同程度のサイズであり、ここで各種商材を扱うことを検証し、今後同サイズの直営店以外のauショップに拡大するための知見、ノウハウを蓄積することが目的という。

au HAKATAとSAPPOROは、本来同時期のオープンを目指していたそうで、方や通信と物販を分離し、もう一方は融合して売る、という実験的な店舗スタイルを採用しているそうだ。

iPhoneの販売コーナーが側面にあり、ファイターズグッズの奥にはスマートフォンなどが展示されている。奥のカウンターはスマートフォンコーナーに隠され、カウンター内にあるau WALLET Marketの商材の方に目がいく

背の高い什器

カウンターの目隠しとしても機能する説明コーナー。契約時の説明などをあらかじめこちらで済ませておくことで、カウンターの回転率を向上させる

au WALLET Marketで扱う商材の販売コーナー。ショップ店員に説明を受けつつ、タブレットを使って注文を行うといったこともできる

カウンターの奥にはau WALLET Marketの商材が並び、必要に応じて手にとって確認もできるそうだ

複数の土地で、複数のスタイルで店舗を運営し、その知見をフィードバックしてほかのauショップに拡大していくのが狙いだという。

間口を広く取り、スマートフォン以外の商材を前面に並べたほか、契約カウンターも外からは見え辛くして、auユーザー以外もフラリと立ち寄れるようにした。背の高い什器で利用者の回遊を促す設計で、従来のauショップにはない工夫も入れ込んだ。au SHINJUKUでau WALLET Marketの店頭販売を行っているが、そこで成功した商材も並べられ、物販目的でも利用できるようになっている。

au WALLET Market、au+1 Collectionといったさまざまな商材が混在して展示されている

電気、保険といった通信以外のサービスも取り扱っているが、その説明や契約のために、パーティションで区切られた隔離されたスペースも2席設け、契約者のプライバシーを守りつつ販売を行う設計になっており、ここで得られた知見も今後のフィードバックに生かしていくという。

保険サービスなどの説明のためにパーティションで区切られたスペース

直営店の出店は、既存のauショップの稼働率低下に繋がるのではという懸念に対して、同社のコンシューマ事業本部コンシューマ営業本部副本部長の横山克也氏は、「au SHINJUKUのオープンで、周辺のauショップの利用が増えた」という例を挙げ、直営店が集客することで、周囲のauショップでの購買が増加するとの見方を示す。

コンシューマ事業本部コンシューマ営業本部副本部長の横山克也氏

au HAKATAでは、物販側にフラリと立ち寄った来店者が、そのまま通信端末側に移動するという例が多かったそうで、大型テーブルで契約にまつわる説明などを行った結果、契約カウンター席を4席に減らしても、むしろ契約数は増加したという。単に契約カウンターを増やして契約数を増やそうとするよりも効率的な運用ができていると分析する。

au WALLET Marketの商材。この場で購入も可能

オープン記念で20%オフに

また、通常のauショップだと利用者の95%程度がauユーザーだが、au HAKATAでは他キャリアのユーザーの利用も増えており、もくろみ通りと横山氏。au SAPPOROでも、そうした他キャリアのユーザーにも利用してもらいたい考えだ。

横山氏は、「中長期で考えると、(直営以外の)auショップでもすべての商材を扱ってもらいたい」と話し、au HAKATA/SAPPOROに加え、今後も直営店を増やして検証していく。より規模の小さいauショップで扱う商材の取捨選択をするか、どのような店舗デザインにするか、といった検証も行っていく。

KDDIがauショップの強化を図るのは、携帯電話の利用期間が延びていることで、auショップに来店する頻度も減っているため。MVNOの拡大、MNOの囲い込み競争が激化している状況で、auショップへの来店が顧客の引き留めにも繋がるという判断だ。横山氏は「3カ月に1回、半年に1回でも来店してもらうこと。買うのはコーヒーでも水でも構わない」として、auショップへの接点を強化する取り組みを今後も継続していく意向を示している。