福島第一原子力発電所の事故を受けて、日本に17カ所(解体中、廃止はのぞく)ある原発のうち現在稼働しているのは、鹿児島県の川内原発のみだ。あとは停止中、もしくは点検中とされ、原子炉は稼働していない。そんな中、東京電力が保有する柏崎刈羽原発を見学する機会を得た。日本最多となる7基の原子炉を擁する原発の姿をつぶさに見てきた。

柏崎刈羽原発の1~4号機。これらは柏崎市側にある

柏崎刈羽原発は、その名のとおり新潟県・柏崎市と刈羽村の境界にまたがる原発で、7基の原子炉合計で821.2万kWの発電出力を誇る世界最大規模の原発だ。原発稼働の是非はさておき、貴重な体験だったのでレポートさせていただく。

柏崎刈羽原発は、上越新幹線・長岡駅から西にクルマでおよそ40分の位置にある。水量豊かな信濃川をわたり、青々とした新苗がまぶしい“米どころ”ならではの風景を抜けた先の海岸線に、約420万平方メートルという広大な敷地を使って立地している。

まず、案内されたのは、柏崎刈羽原発の敷地に隣接する「サービスホール」だ。ここには、1/5スケールの原子炉模型などが設置され、原発の仕組みや安全対策などについて一般公開されている。ここで発電所内の見学についてのガイダンスを受け、用意されたバスで柏崎刈羽原発の敷地内へと進んだ。

サービスホール最上階から原発方面をのぞむ。鬱蒼とした防潮林により送電線や排気筒の姿しか確認できない。左端にうっすらと見える紅白の鉄塔は避雷針だ

サービスホール内に展示されている原子炉建屋とタービン建屋の断面模型

電源車や消防車を自前で用意

目を見張るのが、入所時における厳格なチェックだ。詳しくは触れないが、多くの警備員が立ち複数のバリケードが入場門に用意され、不測の事態に備えている。案内役の東京電力のスタッフは、「この入場門は撮影禁止です。そのほかにも撮影してはならない場所が数多くあるので留意してください」と念を押す。

空冷式ガスタービン発電車の1台。2台が1セットになって4,500キロボルトアンペアの発電が行える

バスが最初に止まった場所は、敷地内にいくつも設置された駐車場のひとつだった。ここには緊急時に電源を確保できる「空冷式ガスタービン発電機車」や、電源がない場合でも原子炉などへの注水が可能な消防車、原子炉の熱を海水に逃せる特殊車両が駐車されていた。ちなみにガスタービン発電車が3セット(2台1セット、計6台)、消防車が42台、海水に熱を逃す車両が7台、電源車が25台と、数多くの車両が敷地内に用意されている。万が一、外部からの電源が確保できず、しかも予備発電施設に支障があっても対応できる体制を整えている。

柏崎刈羽原発の副所長 林勝彦氏は「それでも何が起こるかわからない。可能な限り、あらゆる事態を想定した準備を整えなくてはならない」と、福島原発事故からの教訓を話す。