それではAK300の気になるサウンドに迫ってみよう。今回は筆者がリファレンスにしている3台のヘッドホン・イヤホンでパフォーマンスをチェックした。まずはソニーの「XBA-Z5」だ。BA型とダイナミック型のハイブリッドドライバーを採用するハイレゾイヤホンで、もともと低域の再生パフォーマンスに長けた製品だが、パワーのあるプレーヤーに組み合わせないとバランスのよい音楽が鳴らせない頑固者だ。

ソニーの「XBA-Z5」で再生

ダフト・パンクのアルバム「Random Access Memories」から『Lose Yourself to Dance』では、パンチの効いた低音を軽々と響かせた。リズムの正確さや鋭いスピード感が、アップビートなダンス系、ロック・ポップスの楽曲にぴたりとハマる。お気に入りの音楽がプレーヤーの主張しすぎる個性で色付けされて台無しになってしまうのはいかにも興ざめだが、AK300は音色がとてもニュートラルなぶん、楽器それぞれの個性をありのままに引き出してくれる。たとえば「このギタリストがいま弾いているフェンダーはストラトか? テレキャスか?」みたいな具合で、ディティールにも自然と気持ちが及ぶようになり、音楽を聴く楽しみが無限に広がる手応えが感じられるだろう。

OPPOの「PM-3」で再生

続いてOPPOの「PM-3」を組み合わせた。滑らかで自然な音のつながりと細かいニュアンスの再現力を特徴とする平面駆動型ドライバーユニットを持つポータブルヘッドホンだ。原田知世の「恋愛小説2~若葉のころ」より『September』では、生命力あふれるボーカルの生々しさに息を呑んだ。まるでバンドが目の前に現れ、生演奏を披露しているようなリアルな立体感だ。ボーカルを中央に、楽器の位置関係も鮮明に現れる。ギターのカッティングは粒立ちが良く、休符とのコントラストもくっきりと描かれる。耳に聴こえない「空気の静寂」まで濃く浮かび上がってくるような、実体感みなぎる演奏だ。

最後に、beyerdynamicの半密閉型ヘッドホン「T1 2nd Generation」とのマッチングを紹介しよう。本機はインピーダンスが600Ωと非常に高いので、並大抵のプレーヤーではボリュームをかなり上げないと音がまともに聴こえない。言うまでもなくスマホとの組み合わせには不向きなヘッドホンだ。しかし、AK300との組み合わせでは、まさに水を得た魚のように気持ち良く鳴ってくれた。ボリュームの位置は全体を10とすれば、6から7ぐらいのポジションでも朗々としたサウンドを歌いきる。

Beyerdynamicの「T1 2nd Generation」で再生

TOTOのライブ盤では艶やかなボーカルやエレキのハイトーンがきれいに伸びきる。ドラムスやエレキベースが刻むリズムの低音は打ち込みが鋭く、余韻がすうっと空間に馴染んで溶けていく。音の輪郭が深く明瞭に描かれるので、クラシックのオーケストラを聴いてみても演奏のスケールが雄大に広がる手応えがある。ディティールの再現力や低域の透明感を徹底的に追求したHi-Fiクラスヘッドホンの魅力が、十二分に発揮されたかたちだ。