watchOS、tvOS、macOS、iOSのメジャーアップグレードのプレビューにフォーカスしたWWDC 2016の基調講演。事前に噂されていたMacBook Proやディスプレイの新製品発表はなかったが、開発者カンファレンスにふさわしい基調講演だった。また4つのOSの一挙アップグレードを実行できるところに、今日のIT産業におけるAppleの強みが現れていた。

Swift風のデザインのWWDC 2016のWebサイトが公開されてから、そのデザインが何を意味するのか一部で議論になっていた。答えはシンプルだ。WWDCは開発者が集うカンファレンスということだ。

WWDC 2016のWebサイト

米サンフランシスコで13日(現地時間)に、米Appleの開発者カンファレンスWWDC 2016が開幕、Bill Graham Civic Auditoriumで基調講演が行われた。事前の噂では、MacBook Proやディスプレイの新製品発表が期待されていたが、ふたを開けてみたらほぼプラットフォームの話題のみ。今年秋にリリースする予定のwatchOS、tvOS、macOS(OS Xから改称)、iOSのメジャーアップグレードのプレビューに大半の時間を費やし、最後にiPadを使ってプログラミングを学べる新アプリ「Swift Playgrounds」を発表した。コンシューマ向け新製品の発表を待っていた人には期待外れだったかもしれないが、開発者カンファレンスにふさわしい基調講演だったといえる。

しかし、なぜこれほどストイックに開発者のための基調講演を徹底したのだろうか。それを読み解くために、今回は基調講演の最後に発表された「Swift Playgrounds」を先に取り上げる。

Swift Playgroundsは、レッスンやチャレンジなどで構成され、ゲーム感覚でSwiftの基本やプログラミングのコンセプトを学び、より高度なチャレンジでスキルを向上させられる。

Swift Playgroundsは子供のためのコード学習アプリという体裁ではあるが、子供から大人まで幅広くプログラミングを学ぶ人の学習とスキル向上に役立ちそうなアプリである

コマンドの候補が表示されるコーディング用のQuickType、マルチタッチを使って指先で編集できるTouch to Edit、スニペット・ライブラリ、コーディング用にデザインされたキーボードなどが用意されているので、iPadでも素早くコーディングでき、すぐに結果を確かめられる。さらにテンプレートを土台に、より高度な、たとえばマルチタッチ・インタラクションやジャイロスコープといったiPadの機能を利用したプロジェクトにも挑戦できる。Xcodeを使ってMacでプログラムしたiOSアプリは、iOSデバイスにインストールしないと試せないが、Swift PlaygroundsはiPadでプログラムするので、作ったプログラムをそのままiPadで走らせられる。

コーディング用にデザインされたキーボード、たとえば「w」キーに触れながら指を下げると「2」が入力されるというようにシンボルや数字が打ちやすい

昨年AppleはWWDCでSwiftのオープンソース化を発表した。そのメリットの一つにプログラミング教育が挙げられる。Swiftはプログラミング学習にも適したモダンが言語である。オープンソースになったことで教育者が独自にSwiftを使ったプログラムを作成できるようになり、iOSアプリ構築のようなプログラミングの知識と経験がある人向けの講義だけではなく、もっと初歩的なプログラミング教育にもSwiftが浸透し始めた。

Swiftの提供、オープンソース化、そしてプログラミング学習を子供たちや初心者に広げるSwift Playgroundsと、この3年間のWWDCにおける発表を振り返ると、Appleが若いエンジニアの育成を重視していることが分かる。WWDCの基調講演をコンシューマ向け製品の発表会にしなかったのも、その姿勢の現れの1つと言えるだろう。

Appleが13日に公開したビデオに登場するフレーズ