先行する「Amazon Echo」に追いつけるか

そしてグーグルにとって、Google Home、ひいてはGoogle Assistantの提供は、ライバルに対抗する上で非常に重要な意味を持つ。そのライバルとは、Siriを有するアップルではなく、アマゾンだ。実はアマゾンはグーグルに先駆けて、米国で2014年より、音声によるアシスタント機能を備えたスピーカー型の家庭用デバイス「Amazon Echo」を発売。既に高い人気を博しているのだ。

アマゾンが米国で販売している「Amazon Echo」。Google Homeと同様の機能を2014年より提供しており、執筆時点では179.99ドル(約1万9,000円)で販売されている

アマゾンは独自の音声アシスタント「Alexa」を開発し、それを用いた家庭用デバイスとして、Amazon Echoを開発した。そしてAmazon Echoは、話しかけることで音楽を流したり、天気や交通情報をチェックしたりといった基本的な機能が利用できるだけでなく、現在では照明機器を中心としていくつかの家電機器にも対応し、電源のオン・オフや調光などができるようになっている。

またAmazon Echoには、サードパーティーが開発した"スキル"を追加して機能を強化する仕組みも用意されている。既に1000以上のスキルが提供されているそうで、ドミノピザでピザを注文したり、Uberで配車したりもできるという。既に独自のエコシステムを確立させている点も、Amazon Echoが注目される大きなポイントとなっているようだ。

既にAmazon Echo向けのスキルがサードパーティーから提供されており、これらを利用すると声で話しかけるだけでさまざまなサービスが受けられるようになる

つまりAmazon EchoはGoogle Homeよりも約2年近く先行しており、しかも一定の成功を収めているわけだ。ではなぜアマゾンが、Amazon Echoをいち早く提供できたかといえば、グーグルと異なりスマートフォンを手掛けていない(正確には過去手掛けた経験があるものの、成功せず撤退している)ことから、スマートホームと音声アシスタントに集中できたことが大きいと考えられる。

そしてグーグルは、現在Amazon Echoを追う立場であり、Amazon Echoに大きな差を空けられないためにも、可能な限り早いタイミングでGoogle Homeを提供し、スマートホーム分野への参加を明確にする必要があったといえるだろう。そのタイミングが、Google Assistantの開発に目途が立った、今回のGoogle I/Oであったといえるだろう。

Amazon Echoが既に発売されているとはいえ、そもそも米国以外での本格展開はまだなされておらず、日本でも当然ながらAmazon Echoは利用できない。それだけに、音声操作によるスマートホームのアシスタントに関する取り組みや競争が本格化するのはまだこれからともいえるだろう。グーグルだけでなく、アップルなど他のIT関連企業が、アマゾンに対抗してどのような取り組みを見せるのかが、今後大きく注目されるところではないだろうか。