【レポート】

外国人に人気の「芸舞妓パーティー」! 京都・祇園で起業家が起こしたブーム

京都市は2014年、観光客数が初の5,500万人突破の5,564万人となり、過去最高を記録した。その京都で高い訪問率を誇るのが清水・祇園エリアだが、実際、京都の芸舞妓をお座敷に呼んで遊んだ経験を持つ人はどれだけいるだろうか。この素晴らしい日本の文化に身近に触れることでもっと花街や芸舞妓のことを知ってほしいと、新たな出会いの場をつくった若き起業家が、この祇園にはいる。

「芸舞妓パーティー」は京都五花街のひとつ、祇園東お茶屋組合の芸舞妓が招かれる。この日は芸妓のつね桃さんと舞妓の富津愈(とみつゆ)さん。ご挨拶の後、踊りの披露、お座敷遊び、参加者の疑問に芸舞妓さんが答えてくれる質問コーナーがあり、最後に希望すれば記念撮影にも気軽に応じてくれる

地元民でも芸舞妓は縁遠いという現実

2014年、外国人宿泊者客数も前年比62%増の183万人で、これは同年訪日客の7人に1人が京都に宿泊した計算になる。特に清水・祇園エリアは観光や出張など、誰しも一度は訪れたことがある場所だろう。その祇園では今日も、芸舞妓が活躍している。しかし、お座敷遊びは一見さんお断りで敷居が高く、費用も高額で庶民には縁遠いイメージがある。地元・京都の住人であっても、芸舞妓と直接話した経験を持つ人はそれほど多くないという。

一方、京都五花街(かがい)でも近年お茶屋や芸舞妓の数は減少傾向にある。芸舞妓は日々厳しい稽古をして芸を磨いているが、それに触れる機会はお座敷を除けば、各花街が開催する踊りの会などに限られる。そこで立ち上がったのが、祇園の若き起業家・林健さんだ。

祇園東の氏神、火伏の神「観亀(かんき)稲荷社」のお祭りには祇園東の芸舞妓も参加する

祇園といえば、多くは八坂神社に続く四条通や巽橋、花見小路あたりをイメージする人が多いと思うが、それは花街でいえば、祇園甲部エリアに属す。実は祇園にはもうひとつ、祇園東という花街があるが、こちらは祇園甲部の裏手にあり昼間は歩く人も少なく、ひっそりとしている。

この祇園東に「小学生からの夢だった」という喫茶店をオープンさせた人が林さんである。林さんは大学卒業後、フレンチや居酒屋などで修業した後、30歳の時に「祇園喫茶Rinken」をオープンさせた。両親が喫茶店経営をしていたことから喫茶店経営は小学生からの夢だったという。Rinkenは1階が青い列車、地階では様々なイベントが可能なスペースを備え、映画撮影や個展、ライブなども開催するユニークな店だ。

青い列車の「祇園喫茶Rinken」1階はカウンター席のみ。店に入る際は、席毎に設けられたドアを開けて入る

英語を流暢に話す芸舞妓も

ここに店を開いて、林さんは不景気のあおりを受けて年々人が少なくなってきた街と日々厳しい芸の修業をひたむきに行う芸舞妓の姿を、間近に目にするようになった。祇園東は五花街の中でも規模が小さく、近年開発によって古い町並みの多くは失われているが、近くには祇園東の火伏の神「観亀(かんき)稲荷社」がある。

加具都智命(かぐつちのみこと)と宇賀御魂命(うかのみたまのみこと)をご祭神とする祇園東の氏神様では、2月の「二の午祭」や5月の大祭「宵宮祭」、11月の「お火焚き祭」などのお祭にはお茶屋や芸舞妓など地域が一堂に会し、地域の繁栄発展祈願するなど、まちづくりにも熱心に取り組んでいる。

Rinkenはハンバーグとサイフォン珈琲が自慢の店。ベルギービールなどのお酒もある(写真は一番自慢のメニュー「ハンバーグセット+サイフォン珈琲」(税込1,350円)。画像提供: 祇園喫茶Rinken

「もっと祇園東のことを知ってほしい」「なんとかしたい」という思いは次第に強くなり、お茶屋組合と話し合いを重ね、月1回Rinkenの地階で「芸舞妓パーティー」の開催にこぎつけた。Rinkenの芸舞妓パーティーは芸舞妓の舞踊の披露やお座敷遊びはもちろん、花街や芸舞妓への質問コーナーや写真撮影の時間もあり、イベントには英語の通訳もつく。招かれるのは祇園東の芸舞妓で、中には英語が堪能で通訳なしで外国人の質問に答える芸舞妓もいる。

芸舞妓パーティーでは、芸舞妓の踊りの披露や「金比羅舟々」などのお座敷遊び体験、芸舞妓など花柳界への疑問に答えてくれる質問コーナーも

4月からは京懐石とともにゆったりと

間近に見る芸舞妓の姿、踊りは幽玄そのもので、初めて目にするとその美しさに言葉を失う。一方、お座敷遊びでは何とも言えない京ことばの合いの手で、参加する人や場を盛り上げてくれる。質問コーナーではより親しみやすく、ざっくばらんに冗談や笑いを交え答えてくれる。また、イベントの最後には記念写真にも気軽に応じてもらえる。外国人のみならず、日本人客もひときわテンションが上がる瞬間で、一生の思い出になるだろう。

パーティーの後には記念写真の撮影なども気軽に応じてくれる

芸舞妓パーティーは2016年4月より、林さんが経営する祇園の料亭「京柿」に場を移した。Rinkenの地階の場合、参加者は床に座るため窮屈さもあったが、今度はゆったりとしたお座敷で京懐石を楽しみつつ、本格的に楽しめるスタイルとなった。なお、Rinkenは現在も営業しており、芸舞妓パーティーは実施していないが、さまざまなライブイベントを開催している。

京柿は日本画家の西山翠嶂のアトリエ跡地に建つ、京情緒が味わえる空間となっている。芸舞妓パーティーはほぼ月1のペースで開催され、費用は京懐石の食事付きで税込1万9,000円。次回は7月10日、8月6日を予定している。詳しくは芸舞妓パーティーのホームページで確認してほしい。

芸舞妓パーティーは外国人観光客や地元京都の人たちにも人気となり、2016年4月より京都の料亭へ場所を移した。画像提供: 祇園喫茶Rinken

祇園東には京都最古の癒し処も

祇園東では古い町並みが失われつつあるが、ここには作家・吉川英治も利用した京都最古の癒し処「日吉堂」がある。建物の外観も情緒漂うが、その内部も映画にでも出てきそうなレトロな風情がある。館内では最大22人の施術が可能(要予約)で、施術室は全室畳の床暖房を完備、床下や天井に竹炭を敷き詰め、寝具にも備長炭を使用している。

作家吉川英治も利用した京都最古の癒し処「日吉堂」。画像提供: 日吉堂

施術も鍼灸、あんま、指圧、マッサージと多彩だ。館内には整体やタイ古式ストレッチ、足つぼリフレを行う「HIYOSHI」もある。施術の際には専用の施術着や芸舞妓さんが使う箱枕も用意される。非日常感もあり、施術着に着替えるとリラックス度も違う。市内のホテルヘの出張も行っているが、祇園行くならぜひ一度、この雰囲気の中、お好みの癒やしを体験してみてはどうだろうか。

「あんまの部屋」は床の間に畳、純和風の空間になっている。画像提供: 日吉堂

この季節、祇園で見逃せない名所「両足院」

最後にこれからの季節、祇園に行くなら、是非訪ねたい名所がある。芸舞妓パーティーが行われる京柿からは徒歩6分(約500m)、八坂神社からだと四条通から花見小路通に入り「ギオンコーナー」の先に進むと、1202年に栄西禅師が建立した京都最古の禅寺「建仁寺」がある。白砂を敷き詰めた枯山水庭園や俵谷宗達作の国宝「風神雷神図」など、多くの見所があることで知られる名刹だが、その伽藍の中にこの季節限定(2016年は6月6日~7月6日)で名庭を公開する「半夏生の庭園特別公開」がある。

6月から7月初旬にかけて美しい花を咲かせる建仁寺「両足院」の半夏生の庭

両足院は見どころが多い

両足院は白砂と苔に青松が美しい唐門前庭、枯山水庭園の方丈前庭、そして京都府指定名勝庭園の池泉廻遊式庭園があり、梅雨の頃、その池の周りに半夏生が可憐な白い花を咲かせる。池の北側には織田信長の弟織田有楽斎好みの如庵の写し「水月亭」の特別拝観、隣接する「臨池亭」では呈茶、ボランティアによるガイドも行われている。

両足院の脇にある「毘沙門天堂」にちなんだ、毘沙門天の人形に入ったおみくじは縁起物でもあり、癒やされる置物も魅力

雨はうっとうしいものだが、雨に洗われしっとり濡れた庭の緑は目にも鮮やかで、まるで根が生えたようにいつまでも見てしまう。実に美しく癒やされる庭だ。帰りにはお守り授け所に寄って、隣に建つ毘沙門天堂にちなんだ毘沙門人形に入ったおみくじを引くのもいい。おみくじは人形の中に入っている。人形は縁起物でもあり、心癒やされるかわいい置物にもなると人気だ。

敷居が高いと思われがちな芸舞妓とふれあいを、もっと気軽にずっと身近に感じられる芸舞妓パーティーを通じて、ぜひ一度、ここ祇園東で楽しんでいただければと思う。

※記事中の情報は2016年5月のもの

筆者プロフィール: 水津陽子

フォーティR&C代表、経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。著書に『日本人がだけが知らないニッポンの観光地』(日経BP社)等がある。
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