今回のCOMPUTEXではメモリやSSDを取り扱うメーカーのうちいくつかが出展を控えたり(ブースが取れなかったという話も)、あるいは台北世界貿易中心(TWTC)近くのホテルにプレイベートブースを設ける形をとるなど、少し盛り上がりに欠けた印象となったが、それでもこの先につながる変化のきざしは見えてきた。COMPUTEX TAIPEI 2016におけるSSDメーカーの動向についてレポートしよう。

PCI Express Gen3 x4、NVMe対応のM.2 SSDが各社から登場予定

1つ目の動向としては、PCI Express Gen3 x4、NVMe対応のM.2 SSDを各社が展示していた。この製品分野ではSamsungやKingstonなどが先行しており、2015年のCOMPUTEXでも参考展示していたメーカーはあったが、まだまだ一部にとどまるという様子だった。しかし、2016年はこれらが本格的に登場し、選択肢が豊富になりそうだ。

まずはCOMPUTEX直前に製品発表を行ったOCZ。RevoDrive系統のハイエンド向け製品となる「RD400」は、今回見たNVMe対応M.2 SSDのなかでもとくに転送速度が速く、とりわけ書き込み速度は最速クラスの製品だ。

512GBモデルの公称値では、リードが2.6GB/s、ライトが1.6GB/s。4月にOCZがToshiba傘下に収まったことで、いろいろと調整があり製品リリースにも影響が出ているとの情報もあるが、市場に登場すれば大きなインパクトを与えるだろう。

OCZ RD400。とにかく速さを求める方は注目。容量も最大1TBまで展開される

なお、こうした状況により、コントローラチップがOCZブランドからToshibaブランドになったという。ただし基本的には旧OCZが開発していたチップである。製品では2280サイズのM.2 SSD型に加え、PCI Express拡張カード型が用意されている。

Toshibaに吸収されたことで従来製品にも若干の変化。従来のパッケージにはなかったTOSHIBAロゴが付いた

続いてPlextorの製品「M8Pe」シリーズ。Plextorとしては初のNVMe対応M.2 SSDで、「M8PeG」がM.2型、「P8MeY」がPCI Expressカード型となる。コントローラチップはMarvell製「88SS1093」、採用するNANDチップは東芝の15nmプロセス製MLCとされている。

M.2型モデルの「M8PeG」

PCI Expressカード型モデルの「P8MeY」

特徴的なのがヒートシンク。Plextorでは既存の製品にもヒートシンクを搭載したものがあるが、話を聞くと、やはりヒートシンクによってコントローラチップをうまく冷却することで安定したパフォーマンスが得られるとのこと。

特に、マザーボード上のM.2スロットは、製品によってはグラフィックスカードの直下に設置されることもあるので、冷却には注意しなければならないが、ヒートシンクが搭載されることでその不安を減らすことができるだろう。

最後はU.2 SSD「EP2 U.2」。Intelが提唱するU.2のコネクタは、ハイエンドマザーボードで採用例が進んでいる。内部インターフェースはPCI Express Gen3 x4と、M.2と同じだが、フォームファクタは2.5インチ型となるため、熱対策という点ではM.2よりも有利となる。

U.2 SSDの「EP2 U.2」

ただし、同じコネクタ「SFF-8639」を用いるSAS SSDはエンタープライズ向けに販売されているのに対し、コンシューマー向けのU.2 SSDとなるとIntel製品のほかは選択肢がない状況だった。

もっとも、EP2 U.2も「E」の型番から始まるため、コンシューマー向けではない。基板の裏にはキャパシタが並び、電源喪失時のデータ保護機能を備えているようだ。なお、転送速度やコントローラなどのスペックは公開されていない。

基板の裏にはキャパシタが並ぶ

初耳!?のコントローラチップを搭載するSSDたち

ADATAのSSDは、さまざまなメーカーのコントローラやNANDチップを扱っているため、興味深い製品が多かった。とりわけ注目なのが、Realtek製コントローラ搭載モデルと、Maxiotek製コントローラ搭載モデル、Seagate製コントローラ搭載モデルだ。

まずRealtek製コントローラ搭載モデルが「XG SX7000NP」だ。搭載チップは「RTS5760」。PCI Express Gen2 x4接続でNVMe 1.2をサポートするM.2 SSDとなる。採用するNANDチップはMLCタイプで、転送速度はリードが2GB/s、ライトが800MB/sとされる。

Realtek製「RTS5760」コントローラを搭載する「XPG SX7000NP」

容量は128GB~1TB。こうしたスペックから、M.2 SSDのなかではSerial ATA接続よりも上、PCI Express Gen3 x4モデルよりも下というポジションに収まるのではないかと予想される。もちろん、コンシューマー向け製品のコーナーに展示されていた。チップの上にはしっかりとカニのマークが刻印されているので、マニアの方は、LAN、オーディオチップと合わせ、3匹のカニをマザーボード上で飼ってみるのもよいだろう。

Maxiotekは、JMicronのSSDコントローラ部門を子会社化したものらしい。実際、所在地も同じで階違いのようだ。Maxiotek製コントローラを搭載するADATAの製品としては、「MK8115」チップを搭載する「Ultimate SU700」が展示されていた。SU700は、かなり変わった製品で、DRAMキャッシュを搭載しない。組み合わせるNANDチップも3D MLC/TLCとされている。インターフェースはSerial ATA 3.0だ。

展示ブースでは2種類の基板でデモを拾うしていた。こちらは青色

一方のこちらは緑色

実際に動作デモをしていた基板を見ると、簡素な構造でDRAMチップは見当たらない。ひとつは青い基板で、インターフェース寄りにMaxiotekのシールが貼られたコントローラがあり、もうひとつは緑の基板で、やはりインターフェース寄りにMaxiotekの刻印のチップがあるが奥行きの短いサイズで、その横にはDRAMチップ用のパターンが残っていた。

どちらがより製品に近いのかはADATAブースのスタッフも不明とのこと。ただし、既存の製品にもコストパフォーマンスがよいとのことで、デモ機のパネルにも「HDD Replacement」と、HDDからの換装用途を推していた。

容量は、これもSSD製品のプロダクトマネージャに直接聞けた話ではないので少し正確ではないが、7月ごろに出荷開始となるのが3D MLCチップを採用する1TBまで、年内には3D TLCチップを採用する2TBモデルを投入したいという話だ。

「Ultimate SU700」のデザイン。また、最大容量2TBとある

最後はSeagate製チップ。Seagateが買収したSandForceがベースとなるコントローラと見られるがこちらの型番は不明で、SandForce時代と違う新チップなのかSandForce時代のチップのままなのかもわからない。

製品は「XPG SX950」で、インターフェースはSerial ATA 3.0、NANDチップは3D MLCとされる。容量は128GB~1TB。コンシューマー向け製品の展示コーナーにあったが、Seagateのエラー訂正技術「SHIELD」と、データ保護機能「RAISE」が搭載され、データの信頼性という点ではコンシューマー向け製品のなかでもひとつ上を目指していると見られる。

Seagate製コントローラを搭載する「XPG SX950」。SandForceからSeagateへの変化は、言ってしまえばOCZからToshibaと同じ

また、製品のクセとなりそうなのが、Seagateの「DuraWrite」技術。これもSandForce由来の技術で、書き込むデータを削減してオーバープロビジョニングを実現するとされる。要はSandForce製チップにあった、データ圧縮によって速度を向上させる技術がSeagateでも継承されているといったところだろうか。

見た目重視ユーザーに朗報。AVEXIR製品の入手性が改善する可能性が

AVEXIRブースでは、「S100」シリーズSSDが展示されていた。同社は、マザーボードメーカーなどと協業したCCFL管を用いたハデなメモリなどでお馴染み。見た目重視の姿勢はSSDでも変わらず、S100シリーズSSDは、きょう体の外周や上部カバーにLEDを仕込み、発光させることができる。

AVEXIRの「S100」。AVEXIRロゴもLEDで光るし、カバー部分には膨らみがあるため場合によってはベイと干渉することもある。見せることに特化した製品だ

カバーの造形も独特で、ストレージの地味さを嘆くユーザーにはぴったりの製品だ。こうしたハデさで、COMPUTEX TAIPEI会場でのマザーボードやビデオカード、ケースメーカーの製品デモでは、いたるところでAVEXIRのメモリやSSDが見られた。

側面にもLEDを搭載。LED発光のない底面のネジで固定すのが本製品の正しいディスプレイ方法と言える

なお、現在のところAVEXIR製品の日本国内での取り扱いは少ない。R.O.G. Certifiedのメモリ「雷電」シリーズことRED TESLAなど特に有名なものは入手可能だが、そう簡単には入手できない。しかし、同社の担当によると、世界に向けて出荷対応できる直販サイトを構築するという話もあるようだ。これが実現すれば、もう少し入手性が改善されるかもしれないし、その動向次第では国内代理店の取り扱いも増えるかもしれない。