ファミリーマートの看板商品が何かと問われたら「ファミチキ」を挙げる人は多いだろう。新商品のなかで70%が1年以内に消えていくコンビニ商品のなかで、ファミチキは今年で10周年を迎えるロングセラー商品。そんなファミチキはいかにして誕生したのか。現在のファミチキはどのような位置づけなのだろうか。

ロングセラー商品「ファミチキ」の貢献度は?

ファミチキ誕生

コンビニ各社が販売するフライドチキン。レジ前のホッターズに置かれ、当たり前の存在になったフライドチキンだが、その市場を切り開いたのがファミリーマートだ。同社が販売を開始したのは2001年。端緒を開き、ファミチキの生みの親となったのが同社の上田準二会長である。

ファミチキ生みの親の上田準二会長とファミリーマート新CMキャラクターを務める女優の納富有沙さん

2001年に社長に就任した上田氏は、店舗巡回を進める中で、ある店舗で販売されていたフライドチキンに注目したという。上田氏は「かつて私がブロイラー食肉加工工場にいたときに、ある有名なレストランチェーンと一緒につくったフライドチキンとまったく同じだった。当時、そのレストランチェーンのフライドチキンは業界ナンバーワンのクオリティといわれたもの。日本最高のクオリティーなら世界一、世界一なら宇宙一のフライドチキンなわけです」と振り返る。

そして、本社に戻り、各エリアの幹部を集め次のように言ったという。「なぜ、あれを売らないのか。あれを売らないことには、他者との差別化商品につながらない。全店で売ることで来店動機につながるんだということで売ったんですね。そしたら、関東地区を中心にものすごい勢いで売れました」(同氏)。

同氏はもともと商社で畜産業界に携わり、プリマハムの取締役も務めた人物。食肉に関する知識は豊富にあり、細部まで注目できたのだろう。フライドチキンが差別化商品だと方針を打ち出し、全社一丸となって販売に向けて取り組んだ。そんな同社のフライドチキンは主に若者層に受け、2005年に累計1億本の販売を記録するまでに至った。

売れたが課題も残った。フライドチキンの客層は8割が男性だったのだ。女性にも受け入れられる商品にする必要があった。骨を抜き、専用の袋を作り、肉の部位も変え、誕生したのが2006年に販売がスタートしたファミチキである。書けば簡単だが、加工数量は膨大であり、工程がひとつ増えただけでもコストは上がる。袋をつくるだけでも大変な仕事だっただろう。