「完全自動運転は、技術的には今すぐにでも実現できる」。そう語るのは車載半導体分野の最大手NXP Semiconductorsで上級副社長兼オートモーティブ部門最高責任者を務めるカート・シーバース氏だ。

現在のNXPは2015年に旧来のNXP Semiconductorsと、Freescale Semiconductorが統合することによって誕生した半導体企業であり、その売り上げの約4割を車載半導体が占め、その売り上げ規模は世界トップクラスとなっている。

そんな事業部門を率いる同氏は、現在の車載関連ビジネスのトレンドとして、「シームレスにつながったモビリティ体験」、「自動運転に向けたADASの進化」、「エネルギー効率」といったものがあり、こうした技術的なイノベーションの9割がエレクトロニクス技術の活用により生み出され、その源泉に半導体があることを強調する。「我々はMCU/MPU、アナログ/RF、MEMSセンサ分野でトップクラスのシェアを有し、搭載アプリケーションにおいてもインフォテイメント、セキュアカーアクセス、ボディ/車内ネットワーク、セーフティ、パワートレインといった分野でトップクラスの状況にある。そうした優位性が、将来の自動車市場攻略に威力を発揮する」。

そんんあ同社が将来の自動車市場に向けた取り組みの1つが、旧NXPのトランシーバ技術と旧Freescaleのプロセッサ技術を組み合わせ、自動車の周囲の環境をセンシングする業界最小クラスのレーダーソリューション「NXP Radar」だ。

NXP Radarのモジュール外観。100円玉よりも少し大きい程度のサイズにプロセッサ、トランシーバ、CAN/イーサネット、パワーマネジメントICなど多数のNXPのチップが搭載されている

すでにGoogleがフィールドテストを行っており、将来的には複数台を活用することで、さまざまなシーンでの自動運転に対応することが考えられているという。こうした新規参入者に加え、既存の自動車メーカーも動きを活発化させている。「すでにADASを搭載する自動車メーカートップ10社のうち9社が採用を予定している」(同)としており、今後3年間のCAGR27%と予測され、2019年には7億ドル超の市場へと成長が見込まれる車載レーダー市場での地固めが着実に進んでいることを強調する。

NXP Radarの概要図

NXP Semiconductorsで上級副社長兼オートモーティブ部門最高責任者を務めるカート・シーバース氏

また、従来型のレーダーや光学カメラでは、障害物の先や視覚外に存在する物体を感知することは難しい。そうしたソリューションを補完し、ADASのポテンシャルを最大限に引き出そうという「NXP Secure V2X」の開発も進められているという。これは、車車間、車道間の通信を実現することで、住宅街の交差点といった塀の向こうのような見えない曲がり角であっても、自動車が迫ってきていたり、同じ車線の複数台前にいる自動車の状況を判断し、衝突事故などを未然に防ぐことを可能とするもので、「半導体のみならず、ソフトウェアも含めたもっとも包括的なソリューションを提供できるNXPだからこそ提供できる技術」(同)とする。すでにAudiによる大規模フィールドテストの結果、1.5マイルの距離における通信を5ミリ秒のレイテンシでできることが確認されているほか、米国政府が進めている新車へのV2X搭載の義務化の動きを受けたGMが2017年モデルのキャデラックにV2Xを搭載する計画を打ち出すなど、国家レベルでの道路上での安全確保への取り組みが追い風になりつつあるという。

一方、こうしたネットワークに自動車が接続されることで懸念されるのがセキュリティの確保だ。自動車に搭載されるコンピュータには高い処理パフォーマンスが要求される一方で、電力消費を可能な限り抑えるという二律背反な命題が突きつけられる。そうした課題を同社は、「セキュアな無線インタフェース」、「ゲートウェイのセキュリティの確保」、「車内ネットワーク通信のセキュリティ確保」、「アプリケーションを動作させるプロセッサのセキュリティ」の4つのレイヤに分け、いずれもハードウェアによる保護を実現することで対応している。「これだけ広範囲にセキュアソリューションを提供できるのは我々だけだと思っている。こうした技術ソリューションを活用することで、ネットワークに接続した状態であっても、安心して各種の機能を利用することが可能になる」と同氏は説明する。

NXP Secure V2Xによって実現できる運転時の安全確保のイメージ

コネクテッドカーで懸念されるセキュリティに関しては4つのレイヤにおいて、すべてハードウェアでのセキュリティソリューションを提供することで、他社以上に高いセキュア環境を提案できるという