Windows 10の最小ハードウェア要件が変更されたことが話題に上っている。こちらの英語版の最新要件では、必要なメモリ容量やディスプレイサイズのハードルが高められている。

5月30日の編集時点では、日本語版のWebページはまだ更新されておらず、古い要件のままなので、英語版と比べると相違点が確認できる。

従来は32ビット版のWindows 10に必要なメモリ容量を1GBとしていたが、これを新しい要件では2GBに増加。32ビット版のWindows 10 Mobileにおいても同様にこれまでで512MBから1GBに変更している。英語版の新要件ページでは「Windows 10, version 1607」という記述があり、正式名称も確定した形である。

Windows 10 バージョン1607 (redstone 1) では32ビット版も2GB以上のメモリが必要となる

英語版では、Windows 10 Mobileのディスプレイ要件が「9インチ未満」に変更された

こちらは日本語版の要件ページをキャプチャしたもの。「8インチ未満」という記述は従来通りだ

このタイミングでシステム要件を変更するのは、Windows 10 Insider Previewで実装したWindowsインクに代表される数多くの機能を実現するため、物理メモリが1GBでは足りなくなったと察するのが自然である。

筆者も32ビット版Windows 10 Homeエディションが入ったWindowsタブレットを時折使用するが、Windows 10 バージョン1507でもパフォーマンスに不満を覚えるため、バージョン1607以降は使い勝手が悪くなる可能性が高い。

手元に、メモリを1GBしか搭載していないWindowsタブレットがあれば、Windows 10 Insider Previewをインストールしてみたいところだが、こうした低価格デバイスではWindows 10 バージョン1607は動作しない可能性がある。したがって、2016年7月のAnniversary Updateの即時導入は控えて、様子を見るのが賢いスタンスとなる。トラブルシューティングツール「Upgrade Later」を実行し、「Windows 10へのアップグレードを抑止する方法」を参考に通知領域の「Windows 10を入手する」を無効にする設定を行って、Windows 7/8.1を使い続けるべきだろう。

購入時はWindows 8.1がプリインストールされていたAtom搭載Windowsタブレット。改めて確認すると2GBのメモリを搭載しているが、久しぶりに本デバイスで原稿を書いたらパフォーマンス面に不満を覚えた

PCを使い続けるユーザーにとってシステム要件の変更はさしたる問題ではない。長年Windowsを使ってきた方なら、Microsoftが提示する最小システム要件が「インストール可能」なレベルであることは重々承知だからである。だが、こうした複雑さが、PC市場の縮小に拍車を掛けるのではないかと一抹の不安を覚えてしまう。IntelのCEOであるBrian Krzanich氏がモバイル系SoCへの注力を止めると暗に示すなど、Windowsタブレットの先行きが不透明になってきた。

阿久津良和(Cactus)