何となくアンダーグラウンドなイメージがある線路の高架下。南海電鉄の「南海なんば」駅から「今宮戎」駅までの高架下にある商業施設「なんばEKIKANプロジェクト」では、そんなイメージを覆す新しい街づくりが行われています。

昭和13年の建設当時の姿がそのまま残る高架下

コンセプトは「新しいつながりへ」

この高架は、戦前の昭和13年(1938)に作られて以降、倉庫などとして使われてきました。しかも幾多の空襲にも耐えて現在も使用されています。施設内各店舗の天井部のコンクリート表面に見られる木目調の質感は、建設当時の型枠の跡がそのまま残っているものだそう。

コンクリートの天井には、建設当時の型枠の跡が木目のような形で残る

今回は、4月15日に第3期エリアとして新たにオープンした店舗の紹介に加え、プロジェクトの立ち上げスタッフのひとりである南海電鉄の座古達郎氏にコンセプトや今後の展開について話を聞きました。

「70年以上、都市と都市をつないできた産業遺構のような高架橋をリノベーションして商業施設に変え、新しい街づくり、さらには新たな賑(にぎ)わいを創り出そうという試みです。人が中心となって街を変えていくために、ここにしかない『場』を創ることを目指しています」と座古氏。

そうした思いを実現しようと奔走する中、スタッフの間で街のイメージとして共有されたのが、ニューヨーク・ブルックリンの街でした。

「大都会・マンハッタンのそばにあり、倉庫街が連なる立地状況がこの高架下と似ていました。また、クリエイティブな感覚が豊かな若い人々が集まるのも、私たちが目指す街の姿に合致していました。しかも、ニューヨークの地下鉄もブルックリン付近は高架の上を走っているんですよ。そこで、ブルックリンの街をイメージして計画を進めていきました」。

志を持った南海電鉄の若手スタッフと、入居するショップの人々の思いが一体となって生まれた「なんばEKIKANプロジェクト」。ここからは、4月15日にオープンしたばかりの第3期エリアのショップを紹介します。

リアルなニューヨークを感じられるコーヒーショップ

最初に紹介する「BROOKLYN ROASTING COMPANY(ブルックリン ロースティング カンパニー)」は、ブルックリンを代表するスペシャルティコーヒーショップで、2009年にブルックリン ダンボ地区にて創業。原産地や農園にまでこだわった生豆をロースターで焙煎(ばいせん)して使用するのが特徴です。

ブルックリンを代表するスペシャリティコーヒーショップ「BROOKLYN ROASTING COMPANY」

今回オープンした店舗は「Roastery and Espresso Labo」と銘打った日本旗艦店となっており、エントランスの自転車専用パーキングからして、何となくニューヨークっぽさを感じるから不思議。丁寧に1杯ずつ入れられるドリップコーヒーは、Mサイズ350円。今後はショップ内での自家焙煎も始める予定だとか。さらにおいしいコーヒーが楽しめそうです。

エントランスには自転車専用パーキングが

インダストリアルな雰囲気の店内

さらに同店は、ピザやクラフトビールなどを提供するショップ「TOKEN(トークン)」も併設しています。こちらでは、ニューヨークスタイルのピザをカットして1片ずつ販売しており、クラフトビールやコーヒー片手に味わえます。ピザは「レギュラー」(400円)、「マッシュルーム」(500円)、「ペパロニ」(550円)など、リーズナブルにもかかわらずアメリカンサイズなボリューム感が人気。

店内には「TOKEN(トークン)」が併設。ロゴはNYの地下鉄で使われていたコインをイメージ

ニューヨークスタイルのピザやクラフトビールなどを提供する

●information
BROOKLYN ROASTING COMPANY Roastery and Espresso Labo
営業時間: 8:00-19:30(TOKENは11:00~22:30)
定休日: 不定休

自由な組み合わせを楽しむインテリアショップ

腹ごなしのあとは、こだわりのアイテムがそろうショップで買い物なんていかがでしょう。次に紹介する「CRASH GATE(クラッシュゲート)」は、異なるジャンルを融合することでギャップやユーモアのある空間を生み出し、提案するインテリアショップです。

インテリアショップ「CRASH GATE」

「CRASH GATE」は、日本の住環境に合わせた自由な組み合わせの楽しさや、そこから生まれる個性や心地よさを感じられる暮らしを提案しています。こうした「ものではないもの」を大切にしたオリジナル家具雑貨はもちろん、直営店限定商品や家具雑貨の枠を超えた日常の衣食住を彩る個性豊かなアイテムが所狭しと並んでいます。

個性豊かなアイテムが並ぶ店内

●information
CRASH GATE なんば店
営業時間: 11:00~19:00
定休日: 不定休

匠の技と心意気を体感できる野球用品店

続いては、こだわりの野球用品店「HATAKEYAMA(ハタケヤマ)」を紹介。大阪に本社を置き、創業30周年を迎えた野球用品メーカーが構える唯一の直販店です。

こだわりの野球用品店「HATAKEYAMA(ハタケヤマ)」

和牛の革にこだわったグラブやミットは、多数の有名プロ野球選手にも愛用されているほど。より確かなキャッチングを追究し続けたミットやグラブなど、ハタケヤマのすべてがここに集結しています。自社の職人による実演会やグラブづくり体験教室なども開催を予定しており、大人から子供までたくさんの野球好きが集います。

プロにも愛用されるクォリティーのミットやグラブなどをそろえる

●information
HATAKEYAMA
営業時間: 11:00~20:00
定休日: 不定休

流れる時間と人のつながりを楽しんで

最後に、座古氏に「なんばEKIKANプロジェクト」の楽しみ方について話をうかがいました。

「各店舗では趣向を凝らした体験イベントなど、店とお客さまとのつながりを生み出す試みが数多く行われています。買い物や食事に加え、イベントにも参加していただきながら、店舗やスタッフの人々とのつながりを楽しんでほしいですね。そして、時には70年以上その場所に存在し続ける高架下を眺めて、職人の息づかいや当時の様子に思いをはせてもらえるとうれしいです。

今後もEKIKANプロジェクトを拡大し、産業的な街だった南海なんば駅南側に新たな風を吹きこんでいきたいです。まだまだ発展途上の街ですが、1人でも多くの人に、歴史と新しさを合わせ持ったエリアに足を運び、この空気感を楽しんでいただき、大阪の新しいスポットとして定着していけばと思います」。

ぜひなんばEKIKANプロジェクトに足を運び、人と人とをつなぐ趣味性の高い店舗が集まり、現在進行形で新たな「まち」を創造する姿をご覧ください。

●information
なんばEKIKANプロジェクト
大阪府大阪市浪速区敷津東1-1-21(第3期エリア)

※価格は全て税込

筆者プロフィール: 中 直照(なか なおてる)

大阪出身のコピーライター。出版社や中堅ゼネコンなどを経てフリーライターとして独立。その後、2011年にショートカプチーノ設立。コピーライターとして経営者インタビューや企業広報誌、店舗取材など、幅広く執筆。ほかにもホームページ用コンテンツの企画や制作などにも携わっている。