Windows 10のインストールを終えると、スタートメニューにいくつかのUWP (ユニバーサルWindowsプラットフォーム) アプリケーションが並んでいることに気付くだろう。これらは未インストールアプリの広告である。Microsoftは「Promote apps (プロモートアプリケーション) 」もしくは「Programmable Tiles (プログラム可能なタイル) 」と呼んでいるが、2016年夏リリース予定のWindows 10 Anniversary Updateで仕様が変更される。

筆者もすっかり見落としていたのだが、Microsoftが2016年5月13日に公開した「WinHEC 2016」の資料によると、Windows 10リリース時はプロモートアプリケーションを5タイルに制限していたが、これを10タイルに増加させるという。

プロモートアプリケーションの概要と変更理由の説明

その代わりに、Microsoft製の標準UWPアプリケーションを17タイトルから12タイトルに減らして、表示領域を確保する。これらの仕様変更はWindows 10ユーザーをWindowsストアに誘導することが目的と思われるが、こちらの記事でも紹介したように、レジストリやグループポリシーエディターを使えば無効にすることが可能だ。

現時点では予定と断りつつも、図のような構成でプロモートアプリケーションが加わる

資料によると、Windows 10のOOBE (Out of Box Experience: ユーザーが箱からPCを取り出してから使用可能にするまでのプロセス) 状態におけるディスク使用量も変化するという。OSやアプリケーションがインストールされるパーティション領域には、プレインストールデスクトップアプリ用のリカバリーイメージやデスクトップアプリ本体、ドライバーやアプレットに加えて、Windows 10バイナリやシステムファイル、言語パック、累積更新プログラムが含まれている。

MicrosoftはWIMBootのリプレースやフラッシュベースのストレージデバイスに最適化するなど、全般的な見直しを行うことで、32ビット版Windows 10 Home + Office 2016では最大40%。64ビット版Windows 10 Home + Office 2016では最大50%の容量軽減を実現する (ともに言語パックは1つ)。

現在のOOBE時のディスク使用量

Microsoftは32ビット版は40%、64ビット版は50%の削減が実現可能と説明している

また、WinHEC 2016の資料では、Windows 10 Anniversary Updateにおける機能更新ポイントとして、「Windows Security」「Window Hello」「Windows Ink」「Cortana/Speech Platform」の4つを挙げている。Windows Securityでは、以前から報道されていたTPM 2.0チップが2016年夏以降のPCで必須になる点 (現行のPCはそのまま使用可能) や、マルウェア対策としてアプリケーションの実行を制限する「Device Guard」とOSのLSA (Local Security Authority: ローカルセキュリティ機関) を分離させることでセキュリティ強化を図る「Credential Guard」を強調。Device GuardとCredential GuardはWindows 10 EnterpriseおよびWindows 10 Education向け機能のため、Home&Proエディションを選択した多くのユーザーは直接関係ないが、ビジネスシーンでのWindows 10普及につながることは間違いない。

TPM 2.0で実現する機能。新たにデバイスの暗号化が加わっている

Windows HelloはWindows 10 Mobileによる指紋認証のサポートを今夏から開始。Windows InkはBuild 2016で披露したように、Windows 10 Anniversary Updateの核となる機能だ。Microsoftはワコムと協業し、「ベストなインク体験」を提供すると説明している。2048レベルの筆圧と遅延が少ない高精度ペン対応のデバイスを安価版と定義し、4096レベルの筆圧と傾き検知などをペンとタッチ機能をサポートする次世代デバイスを、2016年第4四半期以降の登場を目指すという。同時にUPF(ユニバーサルペンフレームワーク)の提供と、DSC(デジタルステーショナリーコンソーシアム)を設立する。

Cortana/Speech Platformについては、ロック画面上の操作やバッテリー低下の通知、連携させたWindows 10 Mobileデバイスの着信通知や、異なるデバイス間でのマップ共有が新機能として加わる予定だ。また、対応言語もポルトガル語(ブラジル)やフランス語(カナダ)、スペイン語(メキシコ)のサポートを予定。Anniversary Update適用およびそれ以降のプランとして、音声によってPCをスリープ状態から起こすVoice Activationの追加や、音声聞き取り機能の強化も行われる。

Cortanaの音声聞き取りテストシーン。今後はより離れた場所からの呼びかけにも応答できるかもしれない

MicrosoftはWindows 10 Anniversary Updateのリリース日を明確にしていないが、2016年7月28日を最後にWindows 10無償アップグレードは終了する。そこからがMicrosoftのOne Windowsビジョンにおける本当の勝負だ。

阿久津良和(Cactus)