ヴイエムウェアは5月20日、VMware 最高経営責任者(CEO)のパット・ゲルシンガー氏とヴイエムウェア 代表取締役社長のジョン・ロバートソン氏による事業戦略説明会を開催した。

ゲルシンガー氏は、CIOなどの企業のIT部門責任者が現在、サイロ化させずにクラウドを導入することを課題としており、自社のデータセンターにおいてサービスごとにスタック、セキュリティ、コンプライアンスなどがバラバラになることをおそれていると指摘した。

VMware 最高経営責任者(CEO) パット・ゲルシンガー氏

こうした状況に対し、同社は管理・ネットワーク・セキュリティをクラウド間で統合する「ITの制御プレーン」を用意するという戦略を掲げている。「今のデータセンターはまるで博物館のようであり、マルチクラウドの時代となっている。こうした状況では、独自のセキュリティにならないよう、ロックインされることを防ぐ必要がある」とゲルシンガー氏。

同社はプライベートクラウド、マネージドクラウド、パブリッククラウドに対し、段階的に戦略を拡張している。現在は、「マルチクラウド、マルチデバイス戦略」として、新たな制御プレーンにより、NSX、vRealize、AirWatchによる接続性、視認性、セキュリティの確保の実現を目指している。2016年内に詳細が発表される計画だという。

VMwareのクラウド戦略

ゲルシンガー氏はマルチクラウド環境において重要な課題の1つがセキュリティと語った。「アプリケーションはネットワークに分散しており、古いものと新しいものが混在している。こうした環境に対するセキュリティとして、われわれは仮想レイヤ提供する」

これまで、仮想化環境のセキュリティをどう確保するかということが課題だったが、仮想化技術をセキュリティに活用するといった意識に変わっていくという。

ヴイエムウェア 代表取締役社長のジョン・ロバートソン氏からは、日本における事業戦略について説明がなされた。

ヴイエムウェア 代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏

ロバートソン氏は、日本の業績がグローバルで第4位から第3位にアップしたことを挙げ、同社のビジネスが好調であることをアピールした。「グローバルでのポジションが上がることで、本社の日本に対する投資も増えている。vSphereは以前よりも落ちてきているが、エンドユーザーコンピューティングやモバイルが伸びている」

昨年からのビジネスのハイライトとしては、NSX/VSAN/AirWatchといった新たなソリューションの伸び、NTTコミュニケーションズや富士通をはじめとするパートナーシップの強化、顧客からの支持の拡大を挙げた。

NTTコミュニケーションズと富士通との協業拡大は、いずれもクラウドのグローバル展開に関する内容で、「新たなOEMモデル」だという。

今年度は、「Digital Enterprise」による顧客の成功に向け、「SDDC」「ネットワーク&セキュリティ」「ビジネスモビリティ」に注力する。同社の成長において、パートナーがカギを握ることになるが、同社のパートナープログラム「VMware vCloud Air Network」は国内140社のパートナー企業と協業しているという。

なお、今年5月2日に米国で開催された「EMC World 2016」では、買収後の社名が発表されたが、ゲルシンガー氏はDellによる買収について「Dellとの統合だが、順調に進んでいる。以前から話しているように、VMwareに対する影響は最低限な変化になる。DellのCEOであるMichael Dellが『富士通とDellは競合関係にあるが問わない』と公言しているように、独立的なエコシステムを維持することができる。」と説明した。