NTTグループのコーポレート・ベンチャー・キャピタルであるNTTドコモ・ベンチャーズ(NDV)は4月21日、農業向けドローンを提供するカナダのPrecisionHawk社のシリーズC投資ラウンドに参加し、出資を行ったと発表した。PrecisionHawkは同投資ラウンドで1800万ドルを調達。NDV以外では米ベライゾン・ベンチャーズ、ヤマハ発動機などが参加した。なお、各社の投資額は明らかにされていない。

マルチコプタータイプのドローンの例。DJI製「Matrice 600」

ドローンといえば、機体のまわりに複数のプロペラを配置したマルチコプター型をイメージする人が多いかもしれないが、PrecisionHawkのドローン「Lancaster 5」は小さなセスナのような固定翼機。ルートを予め設定することで自動飛行することができ、カメラによる撮影などを行う。1回の飛行時間は45~60分で、上空100mからの撮影でおよそ1.2km2の範囲をカバーすることができる。航空写真のほか、搭載するセンサモジュールを交換することで温度や3Dデータなどのデータも取得可能だ。PrecisionHawkでは、機体と取得したデータを解析するソフトを組み合わせることで作物の生育状況や収穫見込み量を把握する農業用ソリューションとして提供している。

(左)PrecisionHawkのドローン「Lancaster 5」。自動飛行するため飛ばす練習の必要はない。バッテリーがなくなるとユーザーの近くに着地するとのこと。(右)ドローンと解析ソフトを組み合わせた農業向けソリューションを提供 (画像提供:NDV)

投資という手段によってベンチャーを発掘し、NTTグループとのシナジーを生み出すことをミッションとするNDVはPrecisionHawkにどのような魅力を感じ、資金を投じたのだろうか。今回、NDVの秋元信行 副社長に話を聞いた。

NDVの秋元信行 副社長

NTTグループとの親和性

NDVが行う投資には「グループ内のニーズから投資先を探して行う"プラグイン投資"」と「将来的なビジネスの種に対して行う"エキスパンション投資"」の2種類があり、PrecisionHawkの場合は後者にあたる。

秋元氏によれば、エキスパンション投資は規制緩和などを考慮した上で「2020年の政治・社会・文化・技術がどうなっているのか」を見据えて行うという。今回の場合も、この方針の下で有望なマーケットや技術・サービスを絞り込んだ結果、商用ドローンが注力分野の1つに選ばれたということになる。

こうして選定した注力分野に属するベンチャーの中から、NDVでは投資相手のビジネスモデル、通信インフラとの親和性、そして事業規模をフィルタリングして、具体的な投資先を探していく。特に、「通信インフラとの親和性」が要件の1つに挙げられていることがミソで、単に投資として儲かるかではなく通信キャリアであるNTTグループのビジネス上のパートナーとしての将来性が重要なポイントとなる。

「管制システム」のノウハウ吸収を狙う

秋元氏による投資戦略の説明を踏まえると、NDVは2020年頃にはPrecisionHawkがNTTグループにとって重要な協業先になり得ると見ていることがわかる。冒頭で紹介したLancaster 5を実現する機体開発力もその根拠の1つではあるが、NDVが特に評価しているのが「管制システム」への取り組みだという。

航空機の安全な飛行のために飛行情報を管理して交通整理を行うのが航空管制システムの役割だが、社会で利用されるドローンの数が増えてくれば、ドローンに対しても同様のシステムが必要となる。

PrecisionHawkでは、すでに空域情報や衝突回避を支援する機能をもった低高度空域安全プラットフォーム「LATAS(Low-Altitude Traffic and Airspace Safety Platform)」を提供しているほか、ドローン管制システムの実現を目指すアメリカ航空宇宙局(NASA)の「UTM(Unmanned aircraft system Traffic Management)」プログラムに参画するなど、この分野でも積極的な取り組みを展開している。

LATASはドローンの飛行情報を管理し、安全な飛行を実現する (画像提供:NDV)

ドローンの産業利用に向けた取り組みは国内でも数多くあるが、比較的狭い領域を対象としたケースが多い。しかし、それではNTTグループが有する通信インフラの強みを発揮することが出来ない。UTMには米ベライゾンが参加しており、携帯電話の基地局を利用する方針。ドローンと通信インフラの組み合わせに関するノウハウの吸収を狙うにはうってつけだ。「(管制システムへの取り組みは)国内では千葉などの特区で開始されているが、より広域を対象としたシステムは実現が難しい状況だ。投資という手段を通じて関係性を作ることで、海外から知見を得ることができる」(秋元氏)。

NASAが推進する「UTM」。通信には携帯電話の基地局を使う。まさにNTTグループと親和性の高いプロジェクトだ (C)NASA

将来、ドローンが「当たり前のもの」となって街の中をびゅんびゅん飛び回る社会が訪れた時、安全な飛行を実現する管制システムをNTTグループの通信インフラが支える――そんな未来へのチケットをNDVは手に入れようとしているのだ。