安彦良和氏が手がけるコミックを元に制作されたアニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN III 暁の蜂起』が5月21日よりイベント上映される。『機動戦士ガンダム』にいたるシャア・アズナブルを描く物語は佳境を迎え、ついにエドワウがシャアに成り代わり、ジオンの士官学校に入学。ザビ家の御曹司であるガルマ・ザビと運命的な出会いを果たす。

エドワウを『機動戦士ガンダム』から引き続き池田秀一が演じる一方で、新たにガルマを演じるのは声優の柿原徹也。『天元突破グレンラガン』のシモンや『鉄のラインバレル』の早瀬浩一など、理想と現実の間で格闘しながら成長する主人公たちを演じたことも記憶に新しい。また、『機動戦士ガンダムUC』ではアンジェロ・ザウパーとして、池田演じるフル・フロンタルに心酔する役どころを好演。一方で柿原自身は、ドイツ出身で現地の幼稚園で教諭を務め、そこから一念発起して声優を志した異色の経歴の持ち主でもある。

声優の柿原徹也 撮影:大塚素久(SYASYA)

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』は、『機動戦士ガンダム』のキャラクターが多く登場することから、新旧キャストの比較がどうしても話題に上ってしまう。『機動戦士ガンダム』でも強烈な印象を残した人気キャラクター・ガルマという役に、柿原はどのようにして向き合ったのだろうか。

――今回ガルマを演じるにあたって、安彦総監督から何かリクエストはありましたか?

みんなで集合写真を撮ったんですよ。僕と秀一さんで安彦さんをはさんで撮影したのを覚えています。そこから収録に入ったのですが、その時にかけていただいた「今日は柿原さんのガルマにかかっているので」というひと言だけですね。ガルマに関するお話は。

――柿原さんと池田さんという組み合わせだと、どうしても『機動戦士ガンダムUC』のフル・フロンタル&アンジェロを意識してしまいます。

アンジェロは最初からフル・フロンタルを敬愛している役ですよね。でもガルマは、士官学校のお坊ちゃんがシャアに出会って変化していくところを演じています。ガルマは同級生ですから、秀一さんから投げかけられる芝居の関係性も違うんですね。目線も違いますから、秀一さんから歩み寄ってきてくれているのがわかるんです。そのお芝居を聞いて、僕の中で受け止めて、僕が生の声を発したものがガルマの声になるんじゃないかなと思って演じました。

――『機動戦士ガンダム』のガルマは意識されましたか?

『機動戦士ガンダム』のガルマは見返していません。自分の芝居をしないと、『ガンダム』ファンは納得しないんじゃないか。自分の芝居の中で、"坊や"をいかに"坊や"らしく演じられるかだと思いました。その一方で、池田さんがエドワウからシャアを演じたことに、僕は役者としての責任と勇気を感じます。

――ガルマとして一番最初に発したセリフは?

入学式の場面の「はい!」と「宣誓!」ですね。ちなみに、役を通して一番リテイクがあったのがこの「宣誓」でした。僕は日本出身じゃないので、「宣誓」をやったことがなかったんです。家で何度も高校野球の「宣誓!」を見て研究しました。

――劇中で一番印象に残っているセリフは何でしょう。

「触るな、僕に指一本触るな!」ですね。あれはオーディションの時にもあったもので、本番でも渾身の「触るな」ができたと思っています。声優としては格好いいセリフを挙げたいところですが、あの言葉はプライドの高い彼にとって、「いっそ殺してくれ」というくらいのみすぼらしい「触るな」ですから、ああじゃないとだめなんです。ガルマの人間っぽさを大事にしつつ、それでもいつも、僕達が子どものころに真似したアムロやシャアのセリフと同じように、ひと言ひと言がガンダム史に残ってもいいんじゃないかなという気持ちで演じました。

――でも『ガンダム』をはじめ、アニメでは非日常的な場面も描かれていく中で、声優さんはその時の心情を表現する演技の「引き出し」をどうやって増やしていくものなのでしょうか。

人と会って観察したり、収録の現場で先輩方の演技を盗んだりというのが前提ですね。その上で僕は、ディレクターさんや監督さんが「これを求めているであろう」ということはやらないようにしています。求められていることをできるのは当たり前で、そうじゃなくて「これもありだよね」って言ってもらえる芝居をもっていくのがプロとして前提だと思っているんです。もちろん、「それもおもしろいんだけど今回は……」となることもあるのですが、そうやっていくことが自分の引き出しを増やすことにもつながっている気がします。


『機動戦士ガンダム THE ORIGIN III 暁の蜂起』は5月21日よりイベント上映開始。なお、イベント上映期間中には、バンダイビジュアルクラブ(5月28日~)・劇場にてBlu-ray初回限定版「機動戦士ガンダム THE ORIGIN III Blu-ray Disc Collector's Edition」(10,000円/税込)が限定発売される。

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