幕張メッセで開催されたニコニコ超会議のドワンゴ超自由研究ステージにて、「超IoT発明研究会」と題した座談会が開催された。パネリストは岩佐琢磨氏(Cerevo代表取締役)、八谷和彦氏(東京芸術大学美術学部准教授、メディアアーティスト)、田中邦裕氏(さくらインターネット代表取締役社長)の3名。司会はUEI代表取締役社長・清水亮氏が務めた。

IoTとはInternet of Thingsの略称であり、様々な物がインターネットに接続することを意味している。昨今、IoTはあらゆる分野で耳にするバズワードとなったが、どこか曖昧でふわりとした印象しか持てないという人も多いのではないだろうか。実際にIoTは我々の生活をどう変えるのか。

座談会に集まった3名は、それぞれまったく違う分野で活躍する実業家、あるいはアーティストである。彼らの共通点は一つ、IoTに関する「発明」で世間を賑わせていることだ。

岩佐琢磨氏(Cerevo代表取締役)

たとえばCerevoはアニメ「PSYCHO-PASS(サイコパス)」に登場するデジタル銃「ドミネーター」を実際に開発し、発売した。単なるおもちゃではなく、アニメと同じように変形し、さらにWi-Fiでスマートフォンと接続してアプリと連携できる。その完成度は異常なまでに高い。もともとCerevoはニッチなマーケットをターゲットにしたハードウェアベンチャーで、これまでにもロボットプロジェクターやIoT開発モジュールなど意欲的な製品を次々に送り出している。

一方、田中邦裕氏が創業したさくらインターネットはインターネットデータセンター事業を主軸にする企業だが、今年に入って新サービス「さくらのIoT Platform」を発表。通信環境とデータの保存や処理システムを一体型で提供し、IoT関連のスタートアップを支援している。

最後に八谷和彦氏はメディアアーティストとして様々なアートを制作。代表作には人が乗って空を飛べる飛行具"メーヴェ"があるが、それ以外にもメールソフト「ポストペット」の開発でも知られており、IoTの先駆者的存在でもある。

田中邦裕氏(さくらインターネット代表取締役社長)

八谷和彦氏(東京芸術大学美術学部准教授、メディアアーティスト)

発明とは何か

3者に共通しているのは、様々な製品を「発明」していることだ。では「発明」とは何だろうか。

Crevoの岩佐氏は「隙間を埋めること」と回答する。

「ハードウェアの隙間っていっぱいある。それを発明することで、どんどんオセロが埋まっていくみたいな感じ」(岩佐氏)

八谷氏は「妄想を現実化すること」が発明だという。それも単に作るだけでなく、たとえばメーヴェなら空を飛ばないとダメなのだそう。ちゃんとした機能を持ったもので実現化することが、妄想を現実化するということなのだ。もっとも、そうした発明はお金にはならない。それでも「売れるかどうかを考えるとやれなくなることがいっぱいある。それはとりあえずおいといてやってみるのが発明」(八谷氏)

この八谷氏の言に岩佐氏は、「今はネット上のコミュニティができて、特定の趣味嗜好の人たちとコミュニケーションをとれるようになった」とコメント。SNSなどの発展により、ニッチなクラスタ向けの製品を作っても情報が届くため、採算がとれるようになったという。

今もバックオーダーを抱えているというドミネーターについて、岩佐氏は「僕はドミネーターを作ったときから確実に黒字化できると思っていた。昔は請負仕事などで稼いだお金で作るしかなかったが、今はいかれたメーカーがいかれたものづくりをできるようになった」と力説。

その後、ロボットのタチコマを初お披露目し、実際に音声入力で操作して会場をわかせていた。