同じ会社に勤務している同期で収入もほぼ同じでも、入社数年もすれば貯蓄額は相当の開きが出るのではないかと思います。

しかし、その差は単純に考えられません。語学の習得や資格の取得に支出していれば、将来収入の増加として還元されるかもしれません。また趣味に費やしていたとしても、健康増進やストレスの解消、多くの友人とのコミュニケーションなどは、その後の生活の質の向上に寄与するかもしれません。ではどのような状態が問題といえるのでしょうか。

資産とならない支出が多い人

問題は何に使ったのかも分からない支出で、いつの間にかお金が無くなっていくタイプです。また何も生まない消費だけの支出が多いと将来的にも貯蓄額は増えないでしょう。何を消費のみの支出とするかは人それぞれですので個人的見解ですが、タバコ・菓子などの嗜好品、ギャンブルやゲームなどの趣味、外食や自動販売機の飲み物のように、一般に家で用意すべきものの支出などは、家計を圧迫しがちです。

住まいの場合は即金で買える人は、そんなにいないでしょう。数十年ローンを組み、ようやく手に入れるのがほとんどでしょう。しかし大金とは言え、住まいは資産であり、売ったり貸したりしてお金に変えることができます。市場性の高い資産価値の高い住まいを手に入れれば、購入価格よりも高く売れる場合もあります。しかも住まいがなければ、家賃という出費が永遠に続き、老後も払い続けなければなりません。

逆に考えれば資産となるもの以外には、ローンでの購入は極力避け、一生懸命貯めてから購入するのが基本です。生活に絶対不可欠かどうかは、20~30年前にもその商品が存在し必需品であったかどうかで判断すると良いと思います。

欲求を先に実現する人

まだ貯金もないのに欲しいものが見つかれば、後先考えずに買ってしまうようでは、なかなか貯蓄は増えないでしょう。ローンで購入するようではなおさらです。リボ払いを常用している場合は特に注意が必要です。

何年か前に知る機会のあった、パートで働く人々の一人は、携帯がスマホになり、DVDプレーヤーを買い、と毎月のように新しい持ち物が増えていました。それまでは国民年金の保険料も支払えず、全額免除の適用を受けていた生活だったとのことなので、貯蓄もさほど無いでしょう。まだまだそうしたものを買うよりも、貯蓄にまわすべきだと思いながら見ていました。

生活費の残りを貯蓄する人

そもそも貯蓄はなんのためにあるかと言えば、大きな病気をした時の医療費、少しずつ蓄えなければ確保できない子供の教育費や老後の生活費、住まいを手に入れるための資金、一時的に働けなくなった時などの生活費などでしょう。これらは余ったら貯蓄すればよいものではなく、将来困らないための絶対に必要な貯蓄なはずです。

したがって最初に貯蓄分を除いた残りが使ってよい生活費です。残った生活費分が生活できない額であれば、生活スタイルを改善するか、収入を増やす手だてが必要となります。生活費が足りないので、貯蓄分を少なくするということは、問題を将来に先送りすることに他なりません。収入を増やすには、少しでも若い間の方が対処しやすいはずであり、節約効果も早い方が高いものになります。

最初に貯蓄ありきなのです。そのための改善はまさに「今でしょ!」なのです。

ワードローブをみて、自分の習慣をチェックしよう

よく話題にするのですが、欧米人のワードローブの面積(長さ)は日本人の1/3程度だそうです。良いモノを長く使い、上手に組み合わせることによって少ないアイテムで変化をつけているそうです。日本の場合はどうでしょうか。同じモノをうっかりまた買ってしまったり、買ったけど着ないものがたんすに眠っていたりと、無駄も多いのではないでしょうか。どちらかというと女性向きかも知れませんので、男性の場合は無駄がありそうな分野の支出に置き換えて考えてみてください。

日本には「仕舞う」という言葉があります。実に美しい言葉です。「仕舞う」は単なる収納ではありません。「思い出を胸に仕舞う」とも言うくらいで、美しく納めるという意味合いがあります。まずはワードローブから無駄をなくし美しく仕舞うことをスタートさせて見ませんか。買う前に、本当に必要か、長く使えるか、いろいろ組み合わせが可能でアレンジが効くかなどを考えて見ましょう。ワードローブの見直しが身につけば、次の部分をスタートさせましょう。

断捨離をすると気分がスッキリすると言われているように、モノに心身ともに占領されていては美しくありません。何を選ぶか、確かなものだけを選べるかは、結局は人生設計ができているかどうかにかかっているように思います。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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