2011年に開催された「第36回ホリプロタレントスカウトキャラバン~次世代声優アーティストオーディション~」にてファイナリストに残り、その後ホリプロ所属の声優アーティストとなった大橋彩香。彼女は、2014年8月にシングル「YES!!」でデビューして以来、積極的に楽曲をリリースし、アーティストとしての魅力を開花させている。

今回は、2016年5月18日に1stアルバム『起動 ~Start Up!~』をリリースする大橋にインタビューを実施。本アルバムの魅力に加え、人前で歌うことが苦手だったという彼女の歌に対する想いを直撃した。

大橋彩香(おおはしあやか)。9月13日生まれ。ホリプロ所属。主な出演は『アイドルマスター シンデレラガールズ』の島村卯月役、『アイカツスターズ!』香澄夜空役、『さばげぶっ!』園川モモカ役、『ドキドキ!プリキュア』ランス役など 撮影:西田航

アーティスト・大橋彩香のルーツ

――大橋さんのアーティストデビューは2014年8月に発売したシングル「YES!!」から。いま思えば2011年に行われた「第36回ホリプロタレントスカウトキャラバン~次世代声優アーティストオーディション~」で、「リフレクティア」、「Perfect-area complete!」を歌ったときからアーティストとしての道を歩み始めていた気がします。

そっかー……。オーディションからもう5年も経つんですね。いまは声優活動もアーティスト活動も楽しくやっていますが、アーティストデビューしてからしばらくは人前で歌うことが恥ずかしかったんですよ。

――そうだったんですか。でも、アーティストとしてデビューする前も、「第36回ホリプロタレントスカウトキャラバン」グランプリの田所あずささんや、大橋さんと同じくファイナリストのMachicoさん、木戸衣吹さん、山崎エリイさんとアニメソング・ゲームソングのカバーライブイベント「Anisong Ichiban!! presented by HoriPro」に出演されていますよね。

「Anisong Ichiban!!」は誰かと一緒に歌うことも多いので。それなら平気だったんです。

――たしかに……。たとえばアニメイベントなどでキャラクターソングをひとりで歌う機会もありますよね。

そのときは、「大橋彩香」としてステージに立っている訳ではないんです。たとえば『アイドルマスター シンデレラガールズ』のときは、あくまで「(島村)卯月」としてステージに立っています。「大橋彩香」ではないから恥ずかしくない。なにより卯月を始め、キャラクターたちは「恥ずかしい」なんてきっと思っていません。だから私も緊張しちゃいけないという気持ちがありました。でも、「大橋彩香」がソロアーティストとして歌うとなった瞬間、「もうダメでずぅ~」って(笑)。

――そういえば、「AnimeJapan 2016」の『エンドライド』ステージで、「人前で歌うことが嫌いだった」と口にしていたのが印象に残っています。

そうなんです。小学生のころは、人前で歌うのが本当に嫌いでした。カラオケに誘われても行かなかったし、行っても歌わなかったです。たとえカラオケに行ったとしても、タンバリンやマラカスで盛り上げるだけの役でした。

――そうだったんですね……。

歌いたいと思うようになったのは……中学生になってしばらくしてからです。

――それはどういった心境の変化が?

私、中学生のときにアニメオタクになったんですよ!

――……えっ!?

それまで少女漫画しか読んでなかったんですが、中学生になってからは少年漫画を読んだり、アニメを観たりするようになって、そこからアニソンを聴くようになりました。それまでは洋楽ばかり聴いていたんです。

――洋楽は歌いたいと思わなかったんですか?

洋楽は歌詞が英語じゃないですか! だからあまり「歌いたい」と感じることはなかったんですが、アニソンを聴き始めてからは、「この曲を歌いたい!」って思うようになりました。……でも、人前で歌うのはまだ苦手だったので、最初はひとりカラオケに行っていました。

――アニソンがアーティスト・大橋彩香のルーツだったとは。最初はってことは、そこから人と行くように?

はい! 友だちと行くようになりました。あるとき、「あやの歌う曲がすごく好き!」と言ってくれる子がいて、それがすごく嬉しかったんです! そこからは、人前で歌うのもいいかなって思うようになりました。……でも、人前で歌うことを吹っ切れたのは、アーティスト活動を始めてからなんですよ。

ポリシーは「人に元気を届ける」「笑顔になってもらう」

――人前で歌うことにネガティブな状態で、よくアーティストデビューに踏み切ったな、というのが正直な感想です。

アーティストデビューが決まってからも相変わらず苦手意識はあったんですが、私のアーティスト活動を支えてくれているチームのみなさんが励ましてくれて、一生懸命プロデュースしてくれました。たくさんの人に力を貸していただいたおかげでデビューを迎えられたんですよ。デビューしてからいただいたファンレターやファンの方々とのお渡し会を通じて、自分の歌が及ぼす影響について考えるようになりました。

――ファンからの生の声で気付いたこととは。

「私はうまく歌うよりも、元気を届けることをポリシーに歌っていったらいいんじゃないか」と感じるようになりました。ここで吹っ切れましたね(笑)。もちろん、歌もうまくなりたいですし、パフォーマンスも向上させていきたいです。でも、それよりも大事なことがあると思っています。

――それは「元気を届けたい」というポリシーですか?

それもありますけど、あとは……笑顔です! 私、ステージからファンのみんなが笑顔になっているところを見ると、すごく嬉しくなるんです! でも、みんなを笑顔にするには、まず自分が笑顔にならないといけない。なので、まずは自分が楽しむことを大事にしています。

――大橋さんの魅力は、まさにその笑顔にあると思っています。大橋さんのことを知らない人でも、きっとその笑顔に惹きつけられる。

ありがとうございます! いろいろなアーティストさんが出演するライブステージだと、「私のことは多分知らないんだろうな」ってお客さんはいるじゃないですか。でも、そういう人たちを笑顔にできたときは、やったー!! って気持ちになります。

――「ホリプロタレントスカウトキャラバン」で「Perfect-area complete!」を歌ったときにノリノリで観客を煽っていましたが、あのときからポリシーは変わっていないんですね。いまは「歌うこと」に対して、どういう想いを抱いているんですか?

デビュー当時からは180度変わりました。ステージに立つ恐れみたいなものもなくなって、むしろ楽しみです。「今日は何人の笑顔が見られるかな」とか「どうパフォーマンスすれば喜んでもらえるだろう」と、いろいろなことに気を向けられるようになりました。声優だけどアーティストでもある……という自覚を持てるようになったのかな。

――ステップアップしましたね。

大人になりました(笑)。

――おおー、成人おめでとうございます!

えへへ、なんと言っても、1stシングル「YES!!」を発売したのは2014年8月、まだ19歳でしたからね! この2年で相当変わったなと感じています。アルバムを聴いていても、10代のときと20代になってからの声が違うと感じましたね。いままでは頭のあたりで歌っていたのが、お腹のあたりから声を出して、どっしりと歌えるようになりました。そういう、変化した私にも、今回のアルバムでは注目して欲しいですね。

――「大人」というのも、今回のアルバム『起動 ~Start Up!~』のキーワードになってそうですね。大橋さんは2014年にアーティストデビューをしてから、現在4thシングルまでリリースしていますけど、アルバムは今作が初めてだったんですね。

「まだアルバムを出していないのは意外」ってよく周りの人からも言われます。 4thシングル「ヒトツニナリタイ」を発売したのが2015年12月で、ちょうど「シングルも4枚出たし、そろそろアルバムを出したいなあ」って思っていたところにアルバム制作のお話をいただきました。すごく嬉しかったです!

――そこでアルバム『起動 ~Start Up!~』がまさに動き出した。

はい! 『起動 ~Start Up!~』というタイトルには、これまでの活動を振り返りつつ、アーティスト・大橋彩香として、これからもがんばっていくぞ! という「リスタート」の想いが込められています。「これまでやってきたこと」と「これからやりたいこと」の両方を表現できたらいいなと思っています。

――アルバム、聴かせていただきました。シングルでは明るめの曲が多めでしたけど、アルバムではこれまで歌っていなかったような曲が多いですね。

「これまでの大橋彩香」という明るい面だけではなく、内に秘めていた一面を見せている曲がいくつもあります。「大橋彩香」を知っていただくにはちょうどよい、自己紹介的なアルバムになっていると思います。