今や「ポタアン」ことポータブルアンプがUSB DACを兼ねることは珍しくなく、スマートフォンやタブレットとの接続にもUSBが用いられることが多い。iOSデバイスならばLightning-USBカメラアダプタ、AndroidデバイスならばUSB OTGケーブル経由で接続するという寸法だ。ここに紹介するティアック「HA-P5」も、そのようなポタアンのセオリーに沿った製品。本稿ではその能力を、ティアックがこれまでにリリースしたポタアンと比較しながら検証していく。

HA-P5。入力されているデジタル信号のサンプリング周波数をLEDランプで確認できる。実勢価格は税込59,400円

HA-P5は、このカテゴリで初陣を飾った「HA-P50」(2014年2月発売)とその改良版「HA-P50SE」(2015年9月発売)の上位モデルという位置付けだが、HA-P50のコンセプトとノウハウを継承しつつDSD対応と再生機能を盛り込んだ「HA-P90SD」(2014年11月発売)の後継と考えるほうが実像に近い。

たとえば、HA-P90SDとHA-P5はDACに同じ「BurrBrown PCM1795」を搭載し、DSDネイティブ再生を実現。オペアンプの「BurrBrown OPA1602」も、HA-P90SDから採用しはじめた。両機とも、同軸、光、アナログLINE出力に対応しているが、これはHA-P50やHA-P50SEにはないものだ。

しかし、HA-P5をHA-P90SDから音楽再生機能とmicroSDカードスロットを取り除いた製品とみるのは誤りだ。HA-P5は4極グランド分離に対応した設計を採用。同方式に対応するヘッドホン(3.5mm4極ミニ端子)を接続すれば、左右セパレーションの鋭さをより実感できる。

きょう体デザインに至っては、一新されたと言っていい。従来モデルは両サイドにグリルガードをあしらうなど「UD-501」を彷彿とさせる意匠が見られたが、今回のHA-P5は人間工学に基づいた優しいラウンドフォルムに変更されている。グリルガードを廃したかわりに、ボリュームノブを包みこむ「ボリュームガードデザイン」を採用。携帯時の誤動作対策も抜かりがない。

グリルガードを廃したかわりに「ボリュームガードデザイン」を採用。リアのUSB A端子は、iOSデバイスと直接接続した際のハイレゾ再生をサポートする

左側面には、ゲインと入力端子切替、USB接続(充電)という3種類のスイッチが配されている

製造はハンダ付けから出荷検査までを青梅の自社工場で一貫して行っている「Made in Tokyo」。サードパーティーからアクセサリ類の発売も計画されており、「生活を彩るオーディオデバイス」という新たなコンセプトも導入された。いずれも洗練度が高く、オーナーシップをくすぐる仕掛けとして評価したい。

オーダー家具工房・KOMAとコラボレーションしたHA-P5専用パレット・トレー。天然ウォルナットの一枚板から手作業で作られている(ポタ研2016冬にて撮影)

ティアック歴代ポータブルアンプのスペック比較

HA-P50 HA-P50SE HA-P90SD HA-P5
最大出力(32Ω負荷時) 160mW+160mW 170mW+170mW 160mW+160mW 160mW+160mW
グランドセパレート駆動 × × ×
DAC PCM5102 PCM5102 PCM1795 PCM1795
オペアンプ OPA1652 OPA1602 OPA1602 OPA1602
PCM対応 96kHz/24bit 96kHz/24bit 192kHz/24bit 192kHz/24bit
DSD対応 × × 5.6/2.8MHz 5.6/2.8MHz
対応インピーダンス 8Ω~600Ω 8Ω~600Ω 8Ω~600Ω 16Ω~600Ω
COAXIAL × ×
OPTICAL × ×
LINE(アナログ) × ×
電池容量 2,100mAh 2,100mAh 3,460mAh 2,050mAh
W×H×D※ 64×21.7×112mm 64×21.7×112mm 69.6×21.5×123mm 65.4×21.6×121.4mm
重量 210g 210g 280g 182g

※突起部含まず