食の宅配サービスが好調だ。矢野経済研究所の「食品宅配サービス市場に関する調査結果 2015」によれば、2015年度の市場規模は1兆9,864億円、2019年度には2兆1,470億円にまで拡大すると予測されている。多くの企業が参入し、競争が激化するこの市場において、独自のビジネスモデルで成長を続けるファンデリーを紹介する。

ファンデリーとは

ファンデリーは健康食宅配事業を行う会社。糖尿病や脂質異常症、高血圧、腎臓病といった食事制限が必要な人向けのお弁当を冷凍で宅配してくれる。メニューは「ヘルシー食」「ヘルシー食多め」「たんぱく質調整食」「ケア食」の4ジャンルに分かれており、すべて管理栄養士・栄養士が考案したもの。注文の電話を受けるオペレーターは全員が管理栄養士・栄養士だ。オペレーターは、必ず身長・体重のみならず血液検査数値や食事制限数値(「塩分は1日~gまで」など)を電話で聞き、一人ひとりに合わせたメニューを提案する(そのほか、WebサイトやFAXでも注文を受け付けている)。

ファンデリーの入居するビル。本社は東京都の赤羽にある

お弁当の盛り付け例。写真は「鶏肉のパプリカ煮込みセット」。カラフルで見た目にもおいしそうだ

創業は2000年。代表取締役の阿部公祐氏が脱サラして起こした会社だ。営業職に就いていたときに多くの経営者と出会い、「みなさん目が輝いていて、とてもカッコよかったんです。それで、自分もビジネスをしてみたいと思うようになりました」(阿部氏)というキッカケ。衣食住のうち、効果がみえやすい「食」にフォーカスし、多くの人の健康に寄与しようと宅配食ビジネスを始めた。

ファンデリー 代表取締役の阿部公祐氏

ファンデリーは「医食同源」ならぬ「一食二医」を掲げる。健康のためにはまず「食事コントロール」、それでも困難な場合に「医療」という考え方だ。食事で健康状態を改善できるなら、高齢化社会、生活習慣病患者の増加によって膨れ上がる医療費の削減にもつながる。

ところが、「創業当時は買い物代行業でしかなく、栄養士が家まで食材を届けることを生かしきれていなかった」と阿部氏は振り返る。はじめから栄養士ありきのビジネスを想定していたものの、食事制限が必要な人に特化していたわけではない。転機は糖尿病患者向けのレトルト食品を届けた時。「もっとちゃんとした食事があったらいいのに」との声を聞き、食事制限が必要な人向けにお弁当を宅配することを思いついたという。

今でこそ他社の参入も目立つが、当時は同じような健康食宅配をしている企業がほとんどなかった。ニッチな市場ながら、食事に悩んでいる人が多いという状況に、商機を見出したわけだ。ただし、阿部氏いわく「当時はとにかくお金がなくてチラシもカタログも作れない状態」だった。そこで、食品メーカーなどから広告を出稿してもらうかたちでカタログを創刊することになる。それが、他社との差別化に大きく貢献している「mealtime」(ミールタイム)だ。