父親の育児参加を支援するNPO法人ファザーリング・ジャパンはこのほど、「働き方改革! もう一度考えよう男性の育休のすべて」を開催。お茶の水女子大学 基幹研究院人間科学系所属、『「育メン」現象の社会学』の著者である石井クンツ昌子教授が、「父親が育児休業を取得する意義」について講演した。父親の育休取得には何が必要であり、取得の結果、家族にどのような影響をもたらすのか。石井教授をはじめ、国内外の研究者の調査結果をもとに語られた内容の一部をご紹介する。

お茶の水女子大学大学院 石井クンツ昌子教授が講演

「なぜ父親が育児参加できたのか」に焦点

これまでの父親に関する研究は、父親が育児参加や家事参加を「なぜしないのか」というものが多かったように思います。しかし、育児参加・家事参加ができた父親は何が違うのかということにもっと焦点をあてるべきだと考えています。そこで私は、育児休業(育児を目的とした有給休暇なども含む)を取得した父親たちの研究をしました。今までそのような研究が少なかったというのもありますが、どうやって取ったのかを知りたかったからです。

結果として育休を取れる要因としては特に「職場環境と慣行」があげられるかと思います。それから「周囲の理解とサポート」。家族だけでなく職場によるものも大切です。さらにロールモデルがいるかどうか。私は「パーツモデル」と呼んでいますが、育児参加をしているという部分においてモデルになる人が日本には少ないので、企業に育休を取得した父親が1人でもいたら、それはパーツモデルになり得ます。

それから、経済的サポートも必要です。日本では育児休業給付金が100%出ないからです。また、立ち会い出産も効果があります。アメリカの研究によれば、立ち会い出産をした父親は育児参加が多くなることがわかっています。育児参加が多くなるということは、育休を取得する確率も高くなるでしょう。

父親の育休が子どもにもたらすもの

父親の育休取得が家族にどのような影響を及ぼすのかについても、これまでの国内外の研究結果をもとに考えてみましょう。今回、父親が育休を取得するということは、育児参加の確率を増やすのではないかと想定し、育児参加の多い父親が家族に及ぼす影響をみます。育休取得についての研究は非常に少ないからです。

アメリカで行われた縦断的な調査で、子どもが5歳の時点で父親の育児参加が多かった場合、30年後「成人後の自尊心、学業達成レベル、人生に対する満足感がアップする」という研究報告があります。もちろん、この結果の背景にはいろいろな要因があると思いますが、特に際立っていたのが「父親の育児参加」だったのです。