昨今の刀剣ブームの火付け役になった大ヒットゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』を原作とする「舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺」が5月3日より東京・シアター1010にてスタートした。演出・脚本は「ピースピット」主宰の末満健一氏、音楽はmanzo氏とテルジヨシザワ氏が手掛けている。

舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺

最近はアニメや漫画、ゲームが次々と舞台化されており、「2.5次元」なる言葉も生まれているほど。さて、『刀剣乱舞』ははたしてどんな舞台になっているのだろうか。初日に行われたゲネプロと会見の模様をレポートしよう。

『刀剣乱舞』については今さら説明の必要はないだろう。DMMゲームズが開発・運営を担当、ニトロプラスがキャラクターデザインと世界観・シナリオを担当するシミュレーションゲームで、名だたる刀剣が「刀剣男士」となって登場。歴史上の戦場を駆け巡りながら、彼らを育成していく。

刀剣がイケメンになるという設定は突飛にも思えるが、そこにはきちんと「歴史改変を目論む"歴史修正主義者"(れきししゅうせいしゅぎしゃ)と戦う」という物語背景がある。プレイヤーは、歴史修正主義者と対立する時の政府が歴史を守るために過去へ派遣された「審神者(さにわ)」という立場であり、刀剣男士は審神者の「物の心を励起(れいき)する力」によって生み出された存在というわけだ。

舞台版も当然、この設定を踏襲。今回、登場する刀剣男士は「三日月宗近(鈴木拡樹)」「山姥切国広(荒牧慶彦)」「宗三左文字(佐々木喜英)」「江雪左文字(輝馬)」「小夜左文字(納谷健)」「薬研藤四郎(北村諒)」「へし切長谷部(和田雅成)」「不動行光(椎名鯛造)」「一期一振(廣瀬大介)」「鯰尾藤四郎(杉江大志)」「燭台切光忠(東啓介)」「鶴丸国永(染谷俊之)」の計12振りとなる。ゲーム中の個性的な衣裳も完璧に再現されており、ビジュアル面でのクオリティは高い。ボイスの雰囲気から立ち居振る舞いなども、キャスト自身がよく研究して舞台に立っている印象を受けた。

12振りの刀剣男士たち。ゲネプロ後の会見より

物語はそんな刀剣男士たちが集う本丸に、新しい刀剣男士「不動行光」が顕現したところから始まる。

不動行光は織田信長がとても愛した短刀で、後に森蘭丸に授けられたひと振り。信長がどれくらい不動行光を気に入っていたかというと、酔うと膝を叩いて「不動行光、つくも髪、人には五郎左御座候」と歌い自慢したともいわれているほど。そんな謂れを持つ刀だけに刀剣男士となった不動行光自身も織田信長を慕っている。

一方、へし切長谷部も信長に深く関係のある名刀なのだが、こちらは自身に無礼を働いた茶坊主を信長が"圧(へ)し斬った"というエピソードが名の由来。変な名前を付けられ、直臣でもない者に下げ渡されたことから、へし切長谷部は信長を忌み嫌っているのだ。

同じ信長という主を持ちながら、まったく逆の思いを信長に対して持つ2 振りは、本丸でも事あるごとにぶつかり合い険悪な雰囲気になってしまう。また、険悪とまではいわないが、同じ信長を元主とする宗三左文字や薬研藤四郎とも不動行光はうまくかみあわない。これに困り果てたのが、三日月宗近から交代して近侍に任命された山姥切国広である。

事あるごとに対立する不動行光とへし切長谷部

三日月宗近(右)から交代して近侍となった山姥切国広

山姥切国広は霊剣『山姥切』を模して造られたとされる打刀で、オリジナルではないことにコンプレックスを持っている。そのくせ、綺麗と褒められるのが苦手でわざとみすぼらしい格好をしているという、いろいろこじらせてしまった刀なのだ。

不動行光の世話役となった山姥切国広だが、まったくウマが合わない

メンバーの不和と対立、それを何とかしようと奔走して余計にドツボにはまっていくリーダーという物語構造は、刀剣男士たちの性格や関係性をわかりやすく魅力的に描き出していく。

12振りの刀剣男士はそれぞれが個性豊か

後半、そんな刀剣男士たちにさらなる試練が訪れる。審神者より天正十年、織田信長が果てた歴史的事件「本能寺の変」へ出陣の命が下るのだ。不動行光、へし切長谷部、宗三左文字、薬研藤四郎は、本能寺でそれぞれに異なる思いを抱えたまま歴史を守る戦いへ身を投じていく。

内部に不和を抱えたまま戦いへと身を投じていく刀剣男士たち

ここから先はぜひ舞台で観てもらいたい。

本作の見どころの一つは殺陣

多人数での殺陣も

ストーリーの良さばかり語ってしまったが、華麗な殺陣も本作の見どころの一つ。なかにはいかにも動きにくそうな衣裳のキャラクターもいるのだが、それをまったく感じさせない殺陣を披露してくれた。動きも含めてきちんと「そのキャラクターらしい戦い方」になっているのもポイントだ。原作でのキャラクターがアクションしたらこうなるんだろうなと思わせる動きになっている。ファンには嬉しい真剣必殺も登場するのでお楽しみに。

殺陣にはキャラクターの個性が表れている

そんなアクションを盛り上げる音楽も秀逸。どれも耳に残るものばかりで、劇伴好きとしてはサウンドトラックがほしくなった……。

内番をはじめとする日常パートや、作中ではない表現だが、刀剣男士たちが策を練るシーンなどが充実しているのも本作ならでは。刀剣男士それぞれの個性を生かしたやりとりには思わずニヤニヤさせられてしまった。これも舞台ならではの楽しみといえる。

刀剣男士たちが策を練るシーン楽しめる

2.5次元舞台はどんどんクオリティが上がっており、見る方のハードルも上がりっぱなしで、作る方としてはさぞプレッシャーもあることと思う。そんななか、『刀剣乱舞』という難しい原作をここまで面白く仕上げた制作陣には賛辞を贈りたい。

初日のゲネプロ後には、刀剣男士たちの囲み取材が行われた。三日月宗近役の鈴木拡樹は「顔合わせのときに『戦ってください』と言われた」というエピソードを披露し、「最高のステージを届けたい。そのために戦い続けてこの作品を終えたい」と舞台にかける意気込みを語った。

また、染谷俊之(鶴丸国永役)は「驚きの結果を見せたい」、和田雅成(へし切長谷部役)は「最良の結果を主にお届けしたい」、北村諒(薬研藤四郎役)は「大将に楽しんでもらえるよう期待に応えたい」など、それぞれのキャラクター設定に合わせてコメント。

この他、荒牧慶彦(山姥切国広役)は「12振りの魅力ある刀剣男士が織りなす舞台を愛してほしい」、佐々木喜英(宗三左文字役)は「宗三左文字として舞台で精一杯生きたい」、輝馬(江雪左文字役)は「安全に楽しくお客様に楽しんでいただけるようがんばりたい」、納谷健(小夜左文字役)は「これほど大きな2.5次元舞台は初めて。お客さんと盛り上げたい」、椎名鯛造(不動行光役)は「人気の作品なので今後に続けられる作品に」、廣瀬大介(一期一振役)は「アクションを最後まで楽しんでほしい」、杉江大志(鯰尾藤四郎役)は「たくさんの方の思いを背負ってすばらしい作品にしたい」、東啓介(燭台切光忠役)は「刀での殺陣は初めてなのでかっこよく決めたい」とコメントした。

「舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺」は、2016年5月3日(火・祝)~5月14日(土)まで東京・シアター1010にて上演。また5月17日(火)~5月20日(金)まで大阪・大阪メルパルクホールにて上演。大千秋楽となる5月20日(金)の公演は全国の映画館でライブビューイングが行われ、5月27日(金)からはDMM,comにて独占アーカイブ配信も行う。

公演概要

■舞台『刀剣乱舞』
■原案:「刀剣乱舞-ONLINE-」より(DMMゲームズ/Nitroplus)
■脚本・演出: 末満健一
■音楽:manzo テルジヨシザワ
■出演:三日月宗近:鈴木拡樹/山姥切国広:荒牧慶彦/宗三左文字:佐々木喜英/江雪左文字:輝馬/小夜左文字:納谷健/薬研藤四郎:北村諒/へし切長谷部:和田雅成/不動行光:椎名鯛造/一期一振:廣瀬大介/鯰尾藤四郎:杉江大志/燭台切光忠:東啓介/鶴丸国永:染谷俊之/森蘭丸:丸目聖人/明智光秀:窪寺昭ほか
■日程:【東京】シアター1010/2016年5月3日(火・祝)~14日(土) 
    【大阪】大阪メルパルクホール/2016年5月17日(火)~20日(金)

(C)舞台『刀剣乱舞』製作委員会