NTTドコモは13日、吉澤和弘副社長を新社長とする役員人事を発表した。加藤薰社長は取締役相談役に就任予定。6月16日開催の定時株主総会および取締役会を経て正式に決定する。

新社長に就任予定の吉澤和弘副社長(写真右)と加藤薰社長(写真左)

社長交代により、ドコモは経営者の若返りを図る。加藤社長は現在64歳、吉澤副社長は現在60歳。吉澤氏について加藤社長は「実直、誠実な青年を思わせる若々しいところがある。また、スポーツマンでもある」と人柄について話す。

両者の付き合いはかなり長く「携帯電話の黎明期、ショルダーフォンを実用化する際に、私が課長、彼が係長。二人三脚でやってきた」と加藤社長は振り返る。そして、同氏について「(ドコモの)法人営業部長、人事部長、経営企画部長など幅広く担当し、経験豊富、社内で右に出るものはいない」と評価する。2014年度決算で業績が低迷し、以後のコスト効率化の旗振り役を担ったのも吉澤氏だった。

使命を達成するための3つの重点項目

そんな同氏は「デバイスの進化、ネットワークの高度化、ソフトウェアの進展を加速させることで、さらなる付加価値を提供するのが使命」と話す。そのためにドコモが今後取り組むべき重点項目について次の3つを挙げる。

1つ目が「サービスの創造と進化」。吉澤氏は「スピードを重視しながら、ドコモの持つ技術を活用してイノベーション、多種多様なデータを活用して、サービスの創造を進めたい」とする。

2つ目が「+dの促進」について。「ドコモの強みとなる技術、デバイス、サービスプラットフォーム、モジュールを駆使して、IoT、AI(人工知能)といった先端分野にも積極的に貢献したい。2020年にドコモの技術がいたるところで利用されている、そんな世界を実現して生きたい」(吉澤氏)と抱負を述べる。

3点目が「あらゆる基盤の強化」だ。「プレミアム4G(下り最大375Mbpsの高速通信)の拡大、ネットワーク基盤のさらなる高度化を図る。強い会社になるための構造改革、顧客基盤の拡大、お客様満足度の向上を継続的に取り組んでいく」(同)という。

アセットは揃っている

ドコモはこれまで、スマートフォンを軸に人々の生活に深く関わる様々なサービスを生み出してきた。特に「dマーケット」で括られるサービスでは、衣食住に関わる広がりを見せ、かつ、趣味嗜好という深さも併せ持った利用情報を蓄積、その活用を可能にしている。

さらには、ポイントプログラムの「dポイント」を昨年12月に開始し、これまで蓄積してきた情報に厚みを持たせ、ヘルスケア事業では、今後バイタルデータの活用も視野に入れるなど、個人とより深く関わりうるビジネス基盤も構築しつつある。多種多様なデータの活用により、新サービスを生み出す余地はまだまだ大きいのかもしれない。

外部企業との連携により、新たな価値を創造していく「+d」の取り組みも進んでおり、農業・水産、教育、小売、金融、医療など様々な業界と関わりを持つまでになっている。地方まで張り巡らせた店舗網、そして法人営業部隊は、+dを推進するための強力なネットワークになっている。プレミアム4Gによる高速通信化で、これら一連のサービスを向上させることも可能だろう。

総務省がMVNOへの後押しをし、実質ゼロ円でのスマートフォンの販売ができなくなるなど、逆風が吹くモバイル通信業界。取り巻く環境は厳しいが、顧客に新たな付加価値を提供できるサービスを生み出す可能性、それを実現するアセットがドコモには揃っている。新体制のもと、これからのドコモの動きに期待したい。