東京スカイツリーが完成し、地上波テレビの本放送という大きな役目を後継者に譲った東京タワー(管理・運営は日本電波塔)。観光客もスカイツリーに流れているのかと思いきや、昨年度の来塔者数は227万人で前年度から約15%増えている。特に増加が顕著なのは外国人観光客だ。絶妙な立地と高さを兼ね備える東京タワーは、東京を訪れる訪日外国人が必ず立ち寄る場所、つまりは東京観光のスタート地点とでもいうべき施設に発展する可能性を秘める。

電波塔としての役割は依然として重要

東京タワーは1958年に開業し、電波塔と観光施設という2つの側面で存在感を示し続けてきた。電波塔としては1959年にテレビ放送の電波発射を開始。在京テレビ局がスカイツリーにデジタル放送設備を移した現在も、スカイツリーのバックアップとして、いつでも地上デジタル波を発射できる状態を維持している。

電波塔としての東京タワーは現在、地上デジタル放送のバックアップ機能、「TOKYO FM」と「InterFM」のFMラジオ局2局の発信、マルチメディア放送「i-dio」の発信、「放送大学」テレビ・ラジオ放送の発信、無線中継基地局などの役割を果たしている。当然ながら、アンテナを設置している企業からは施設使用料が入る仕組みだ

日本電波塔 総合メディア部の澤田健課長は、「(スカイツリーに)電波塔としての機能がすべて移ったと勘違いされがち」と苦笑しつつ、東京に2つの放送インフラが存在する防災上の意義を強調した。

電波塔としての新たな可能性は?

地上アナログテレビの放送終了で空いた周波数帯を利用し、新たな放送サービス「i-dio」が始まったように、電波を用いた新規事業は今後も登場する可能性がある。インターネットを通じた動画・音声の配信が一般化しているとはいえ、電波には放送をクリアに、そして確実に届けられるという利点がある。電波送信施設の設置場所を貸す立場の日本電波塔としては、「(新たな放送事業を)いつでも受け入れられるよう、(鉄塔整備などの)準備をしておく」(澤田氏)方針だという。

現在も電波塔として機能する東京タワーだが、テレビの本放送という役割がスカイツリーに移ったことで、テレビ局からの施設使用料が大きく減ったことは想像に難くない。そこで注目したいのが、観光施設としての東京タワーの伸びしろだ。