最近のスーパーヒーローは、よくけんかをしますよね! ということでね、映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』も激闘公開中ですが、今度はマーベル側の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(4月29日公開)のお話。スーパーヒーロー集団アベンジャーズの仲間たちが"争う"という内輪モメ全開の哀しみのドラマで、シリーズ史上もっともシリアスでダーク、それでいて痛快で面白い! という傑作臭がプンプン漂う胸熱作だった!

キャプテン・アメリカ(左)とアイアンマン

まず、マーベル・コミックの実写映画化作品がここまでの数世に出ると、追っかけきれずに尻込みしそうだ、という意見もあろうか。アベンジャーズじゃないの? パート1は観ていたけれど、続編は観てないからどうしよう? 上の句とかあるんだっけ? などなど、およそ勤勉な日本人はパニックになりそうなものだが、まったく心配ない! もともと同シリーズは関連性や継続性、マニア垂涎の展開をガッチリ用意しているものの、基本的には各作品を独立したモノとしてイキナリ観に行っても大丈夫なようには作ってある。

実際、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』もアベンジャーズの活動を前半でザッ! とプレイバックして、どうしてスーパーヒーロー集団同士が戦わなければいけなくなったかを、今回の主役=キャプテン・アメリカの心情に重点を置いて、テンポよく描いていく。

で、今回のお話。超簡単に言ってしまうと、地球で勃発した数々の危機を救ってきたアベンジャーズだが、その活躍の背景には大いなる一般市民の犠牲が伴っていることが国際的な問題に。そこでアベンジャーズは自警団ではなく、国連の管理下に置いてしまおうという案が生まれ、これにアイアンマンが賛同。ところが、そうなればキャプテン・アメリカの旧友バッキ―ことウィンター・ソルジャーを逮捕しなくてはならず、キャプテン・アメリカが激しく抵抗する。両者一歩も譲らないため、アイアンマン派とキャプテン・アメリカ派にチームが分裂してしまい、実力で勝負をつけるしかないというハナシになるわけ。

両派の主張はともに私利私欲ではなく、各々の正義に根差した考え方であるため、少々タチが悪い。それゆえバトルをおっ始める以外に選択肢がなく、かつての仲間たちが哀しみ満点の激突に突入してしまう。両派閥入り乱れてのスーパーヒーロー同士のバトルは凄まじい迫力で、国連の管理下になる前に地球が大破してしまうよ? と心配になるほどだ。

とはいえ、シリアスな展開の中にもシリアスに終始しない、楽しげなエッセンスをちゃっかり用意している発想がニクイ。あのスパイダーマンとアントマンが"シビル・ウォー"な各チームに助太刀で加わり、それぞれの得意技をいかした見せ場の連続で、観客をしっかり楽します。その場にハルクがいないことが残念だが、"まるでハルクの不在をおぎなうかのようなオツなアイデア!"まで発動するなど、さすがディズニーと唸らざるを得ない。

しかし、本作はスーパーヒーロー同士の春の大運動会では終わらず、本当の"シビル・ウォー"がクライマックスに待ち受けている。その心臓に悪い終幕がおそらく、本作をシリーズ最高傑作と評している理由、かもしれない。スーパーヒーローでいることは、本当に報われない仕事だとつくづく思うが、来たる公開日、あなたはどっちの派閥を応援する?

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