スマートフォン(スマホ)を落とし、タッチパネルを割ってしまったり、割れないまでも傷を付けてしまった、という経験は多くのユーザーが記憶するところだろう。調査会社によると、米国や中国のスマホユーザーは1台のスマホを所有している間、およそ2回、タッチパネルを保護するスクリーンプロテクターを貼っているという。こうした心理は、本体のみならず、スクリーンプロテクターそのものも傷をつけたくない、といったものや、傷が付いたスクリーンプロテクターでは保護できないという判断などからだが、そうしたスクリーンプロテクターそのものの強度も高める取り組みを行っているのが米Corningだ。

Corning East AsiaでPresident/General Managerを務めるClifford L Hund氏。手に持っているのが「Accessory Glass 2 by Corning」を貼り付けたスマホ。これを無造作に床に落とし、割れていないことをアピールしていた

同社はカバーガラスとして「Gorilla Glass」の提供を行ってきたが、新たにカバーガラスを保護するスクリーンプロテクター「Accessory Glass 2 by Corning」の本格供給を開始した。同製品は2016年初頭に開催されたCES 2016に併せて、特定顧客向けに披露したのが最初であったが、「そこからここまでの間に約10社ほどが採用を決めている」(Corning East AsiaでPresident/General Managerを務めるClifford L Hund氏)と、上々の出足であるという。

同製品の特徴は、ひっかき(スクラッチ)耐性が高いこと、ならびに落下による破損に強いことの2点。いずれも実際にユーザーが使用してきた100個のスクリーンプロテクターを回収し、社内でなぜ破損が生じたのか、どういったメカニズムで生じたのかを調査。解析した傷をもとに、その傷を実験室で再現できる仕組みを構築し、その傷に対する技術とはどのようなものかを検討することで実現した。

具体的な製法としては、イオン交換法を用いたガラスの化学強化を採用することで実現。性能を調べる実験方法としては、例えばひっかき傷を作るのには、ガラス瓶の中にカギなどと一緒に入れることでカバンやポケットの中身を再現。結果として、プラスチックフィルムでは傷が生じたが、同製品ではほとんど傷がないことを確認した。一方、落下による破損では、180番のサンドペーパーの上に徐々に高度を上げつつ落とし、傷の付き具合の確認を行っていったという。「傷がつく、つかないは非常に重要な問題。ガラスは本来、無傷であれは非常に強いが、傷がつくと、引っ張られて割れる。結果として、そもそも傷がつかなければ強さを維持しやすくなる」とHund氏は語る。

結果として、ひっかき傷(耐擦傷性能)は市販のソーダライムガラス製スクリーンプロテクターと比べて3-5倍の強さを実現していること、落下(耐破損性能)に対しても25%以上高い場所から落ちても破損しないことが確認されたという。

左がカギなどを入れたビンを回転させて傷がどの程度できるかのテスト。プラスチックフィルムと「Accessory Glass 2 by Corning」の比較で、プラスチックフィルムでは傷がついているが、Accessory Glass 2 by Corningではほとんど傷がついていないことが確認された。中央と右は180番のサンドペーパーの上に垂直および30度の角度を付けて落下させた際、どの程度の高さで割れたのかのソーダライムガラスとの比較。Accessory Glass 2 by Corningのほうが25%ほど高い位置から落としても耐えられる結果となった

Hund氏は、同製品について、「アフターマーケットを中心に、全世界で100社程度、日本では5~10社程度のカスタマと取引できれば」と期待を寄せる。なお、すでにイタリアでは製品の提供を開始しており、他地域でも順次カスタマに向けた提供を開始する計画としている。

「Accessory Glass 2 by Corning」の実物。意外と厚みがあることが分かる