温泉宿の庭園で滝とアヒルを

旭橋を過ぎ、箱根銘菓の「湯もち本舗ちもと」の角から湯本橋を渡り、須雲川沿いに箱根湯本の温泉街に入っていくと、宿泊はもちろん、23時間営業の日帰り温泉でも人気の温泉宿「天成園」がある。天成園の裏手、四季の移ろいが感じられる庭園には、「玉簾の瀧」や「玉簾神社」などのパワースポットもあり、縁結びなどのご利益を授かることができる。

「天成園」の庭園入り口にある「飛烟(ひえん)の瀧」は、幅約10m・高さ約20m。烟はけむりの意で、水しぶきが煙のように立ちこめることからその名がついた。下の池や庭園にはかわいいアヒルがいて、訪れる人を和ませてくれる。画像提供: 天成園

庭園へは温泉等の利用がなくても施設横の門から誰でも自由に出入りできる。裏山の豊かな自然と一体となった庭園はゆったりとして、滝の流れる水音やそこに棲む鯉やアヒルの姿にも癒やされる。

庭園には2つの滝がある。ひとつ目は庭園の入り口にある「飛烟(ひえん)の瀧」だ。幅約10m・高さは約20m、"烟(けむり)"の名の通り、水しぶきが煙のように立ちのぼる。滝の下にはコイや時にアヒルが泳いでいる。アヒルはガーガーとかわいい鳴き声をたてては、住処の池と滝を行き来するユーモラスな姿を見せて和ませてくれる。

「玉簾の瀧」は幅約11m・高さ約8m。名の由来は流れ落ちる水の姿が玉簾のように細かく美しいところから。滝の真ん中にはしめ縄をつけた石があり、下の池では金色の鯉が泳いでいる

庭園の奥には「玉簾(たまだれ)の瀧」がある。幅約11m・高さ約8mで、しめ縄が張られた滝には同じくしめ縄を付けた丸い石がある。光線の加減か、時に虹がかかる神秘的な滝は、木々の陰にある飛烟の瀧と対照的に滝の下の池にも光が差し込み、金色の鯉が一層キラキラして神々しく感じる。水の勢いも名前の由来となっている玉簾のように細かく、光を受けて美しいその姿に心洗われる。

名水と神社を楽しんだら温泉で疲れを癒やす

ふたつの滝の間には「玉簾の湧き水」と「玉簾神社」がある。玉簾の湧き水は玉簾の瀧の源流でもあり、古くから「延命の水」として親しまれている。弱アルカリ性で口に含むとまろやかな水はバランスよくミネラル分を含んでいる。

園内にある箱根神社・九頭龍神社の分宮、江戸時代に創建された玉簾神社。縁結びや無病息災、この地の水の守り神の社として古くから崇められている。絵馬やおみくじ、お守りもある

玉簾神社は江戸時代に創建されたもので、箱根神社・九頭龍神社唯一の分宮でもある。箱根大神と九頭龍大神をお祀りしており、縁結びや無病息災、この地の水の守り神として古くから信仰されている。園内ではおみくじ、お守りなども授けてもらえる。

玉簾の瀧の源流となっている湧水は、古くから延命の水として親しまれている。身体に優しい弱アルカリ性、口に含むとまろやかな水はバランスよくミネラル分を含んでいる

パワースポットに癒やされた後は、日帰り温泉などで身体も癒やしてあげるのもいい。天成園の日帰り温泉は23時間営業。この季節「天空大露天風呂」は新緑に囲まれ、目にも美しい。日帰り温泉は大人2,300円(税別)で、浴衣・バスタオル・タオル付き。無料休憩所もあり、有料で食事やボディケアサービスも利用できる。

緑陰の中で天然温泉につかっている気分にさせる「天空大露天風呂」。日帰り温泉は大人2,300円(税別)で、浴衣・バスタオル・タオル付き。無料休憩所、有料で食事やボディケアも利用できる。画像提供: 天成園

箱根は温泉だけでなく、こんな楽しみ方もある。忙しく観光地を巡るのではなく、ゆっくり滞在して富士の眺めやミュージアム巡りなども楽しんでみてはどうだろうか。

(左から)箱根町からの富士山の眺めと、箱根町のミュージアム。画像提供: 神奈川県観光協会

※記事中の情報は2016年4月のもの

筆者プロフィール: 水津陽子

フォーティR&C代表、経営コンサルタント。地域資源を生かした観光や地域ブランドづくり、地域活性化・まちづくりに関する講演、企画コンサルティング、調査研究、執筆等を行っている。著書に『日本人がだけが知らないニッポンの観光地』(日経BP社)等がある。