レッドハット 代表取締役社長 望月弘一氏

レッドハットは4月20日、 新年度事業戦略説明会を開催した。説明会では、代表取締役社長の望月弘一氏が今年度におけるパートナー、エンタープライズ、製品、サービスに関する戦略を説明した。

望月氏は、2017年度に重点を置くビジネス領域として「エンタープライズ向けにオープンソースによる包括的ソリューションを提供」「顧客のビジネスイノベーションに貢献」「ビジネス規模の大幅拡大の基盤を確立」を挙げた。

現在、同社の売上の8割は主力製品の「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」が占めており、残りはクラウドビジネス、ITマネジメントサービス、アプリケーションプラットフォーム・ビジネスで分け合っている。しかし、3年後の2020年にはそれぞれの売上を5対5にもっていきたいという。

望月氏は、昨今のOSビジネスは伸びが見られない中、2017年度はREHLの売上を対前年比10%増を目指しているという意気込みを見せた。

2017年度の重点ビジネス領域

2017年度に強化するソリューション領域

さらに望月氏は、今年度は2025年に向けたビジネス基盤を築くためのテーマとして、「OpenStackでトップシェアを獲得する」「Ansibleビジネスの立ち上げ」「企業によるコンテナを定着させる」「すべてのクラウド、オンプミレスで、RHELのトップシェアを取り続ける」を紹介した。

2017年度の重点ビジネス領域の「RHELとコンテナ技術」については、パートナーのビジネスドライバーとして貢献する。同社のパートナーはハードウェア、OpenStack関連(販売とテクノロジー)、パブリッククラウドなど、実に多岐にわたっている。

望月氏はRHELに関するトピックとして、昨年発表されたマイクロソフトの協業を紹介した。この協業により、マイクロソフトが提供するパブリッククラウド「Azure」上でRHELやJBossなどの主要製品が稼働することになった。相互のサポートも提供されており、日本語でのサポートは近日中に開始される予定だ。また、マイクロソフトとレッドハットの双方の管理ソフトでシームレスに管理することが可能だという。

2017年度の重点ビジネス領域「RHELとコンテナ技術」における取り組み

「クラウドビジネス」については、OpenStack関連のコア製品の上でクラウドのエコシステムの強化・拡大を目指す。具体的には、先進ユーザーに最新技術を国内投入するほか、OpenStack認定技術者を400名から1000名に増員する計画だ。

2017年度の重点ビジネス領域「クラウドビジネス」における取り組み

「ITマネージネントビジネス」については、昨年買収した構成管理ソフト「Ansible」と「Red Hat Insights」の国内投入に注力する。望月氏は「Ansibleは、Software Defined環境の統合管理に有用な製品。Ansibleにより、インフラのソフトウェア化のビジネスの基礎を築いていく」と語った。

Red Hat Insightsは動作中のRHELのプロファイル情報とRed Hatが蓄積したナレッジを定期的かつ自動的にマッチングさせ、重大なバグや脆弱性の修正や典型的な設定ミスなどを発見し、対策案を含むレポートを生成することで予防保守を実現する。

「2017年度の重点ビジネス領域「ITマネージネントビジネス」における取り組み

「アプリケーションプラットフォームビジネス」においては、JBossの成長を基盤に、コンテナ市場とモバイル市場を開拓する。JBoss Enterprise Application Platformは今年5年ぶりに新バージョンが投入され、対前年比40%増の成長を目指すという。

コンテナについては、企業による活用の定着に焦点を当て、コンテナ開発を整備し、コンテナアプリ認定制度を導入する。300人のコンテナ技術者の育成を目標とする。

モバイル市場については、「Red Hat Managed Service」としてのクラウドサービスのプロモーションを強化する。

「2017年度の重点ビジネス領域「アプリケーションプラットフォームビジネス」における取り組み

営業戦略としては、「業種別アプローチの強化」「新製品を加えたトータルソリューション提案」「地域カバレッジの拡大」「顧客のビジネスエンゲージメントの強化」に取り組む。

同日、中部地域での顧客サポートのさらなる向上と市場拡大のため、2016年5月2日に愛知県名古屋市へ中部営業所を開設することが発表された。

コンテナは各ベンダーからさまざまな発表が行われているが、国内の企業ではそれほど導入が進んでいないのが実情だ。ただし、Software Definedな環境において、コンテナは重要な技術の1つと言える。同社の今後の取り組みが、コンテナの導入拡大につながることだろう。