【レポート】

Windows Insider Programの中身が明確になった

日本マイクロソフトは2016年4月17日、Windows Insider Program参加者を招き、「Windows Insider Meetup in Japan」を開催。Windows Insider Programに対する取り組みや、米国で開催した開発者向けカンファレンス「Build 2016」をレポートしつつ、Windows 10に関するさまざまな情報も飛び交った。

日本マイクロソフトの開発チームがプログラム内容を説明

日本マイクロソフトの社内案内プログラムを受けるインサイダーたち

Microsoftは以前から、製品をリリースする前にプレビュー版をリリースし、市場やユーザーの反応を調査してきた。その動きはWindows 10リリース前から顕著化し、一定のタイミングでプレビュー版をリリースするのではなく、ユーザーの反応をリアルタイムに分析しながらWindows 10の完成度を高める「Windows Insider Program」を続けている。Windows 10をリリースした2015年7月29日以降も続き、現在も続行中だ。

2016年夏には、Windows 10のリリースから2回目の大型アップデートとなるAnniversary Updateを迎える。今回、日本マイクロソフトはWindows Insider Program参加者(=インサイダー)へ感謝の気持ちを伝えると同時にユーザーとの交流を図るため、「Windows Insider Meetup in Japan」を開催。大阪では4月10日に開催済みだが、大阪会場は約60名、東京会場は80名ほどのWindows 10インサイダーが参加した。

おさらいすると、インサイダーは「Windows 10 Insider Preview」と呼ばれる開発中のバージョンを使用し、新機能を試す(バグ出しにも協力する)テストユーザー的な存在である。もちろん筆者も以前からインサイダーとしてプログラムに参加しているが、「フィードバックでWindows 10の開発が前進している」と説明するのは、マイクロソフト ディベロップメント(以下、MSD) オペレーティングシステム開発統括部 クオリティチーム ソフトウェア ディベロップメント テストエンジニアの入谷優氏だ。

マイクロソフト ディベロップメントの入谷優氏

Microsoftは世界中に開発拠点を備えているが、MSDは他国のチームと協力しながら、WindowsやOffice、BingといったMicrosoft製品を開発している。

よく誤解されるそうだが、国内向けの翻訳やローカライズのみ行っている訳ではないという。Microsoftがインサイダープログラムを実施する理由については、「以前は仕様を決めて開発するウォーターフォール型を採用していたが、ユーザーの手元に届くころには時代遅れとなってしまう。素早く価値をユーザーに提供するためアジャイル開発にシフトし、継続的な更新で価値ある体験を提供する」と説明した。

ちょうど、Windows 7の時代はOSとインターネット系アプリケーションを切り分けるWindows Liveブランドを展開していたが、それをOSにも広げたと考えるとわかりやすいかもしれない。

日本マイクロソフトの春日井良隆氏

続いて入谷氏はリング構造を説明。このあたりは拙著記事をご参照いただきたいが、Microsoft WDG(Windows and Devices Group)よりも早くインサイダーに新ビルドを提供する仕組みについて、日本マイクロソフト Windows本部 シニアプロダクトマネージャーの春日井良隆氏も気付かなかったという。

つまり、Windows 10開発チームを除けば、インサイダーはもっとも早くWindows 10の新ビルドを試せる環境にあるということだ。Microsoft/日本マイクロソフト社員向けよりも早く提供する理由について、入谷氏は「世界中から(Insider Previewの)更新を早めてほしいというフィードバックを受けた」と話す。

Windows 10のリング構造。筆者もタイミングは記憶していないが、Microsoft/日本マイクロソフト社員とファーストリングが入れ替わっている

Windows 10の開発プロセス。プログラム参加者のフィードバックは分析やリリースにコミットしている

インサイダーがもっとも興味を持つのは、Microsoftがどのようなデータを収集し、我々のフィードバックをどのようにWindows 10の開発に活かしているかだろう。Microsoftは、インサイダーから収集するデータを客観的データと主観的データの2種類に分けていると述べる。前者は、開発者から見た品質的な数値として表現するテレメトリーデータ、後者はカスタマーフィードバックやカスタマーエンゲージメントから構成されたユーザー視点による品質に関する意見だ。

インサイダーから収集するデータの1つ、テレメトリーデータの内容

こちらはフィードバックを行うなどしたカスタマーフィードバックの概要

まずテレメトリーデータは、実際のパフォーマンス測定や、クラッシュ、ハングアップ時のエラー情報、機能の利用率や利用状況などを収集している。個人を特的できるようなメールアドレスなどは一切収集していないとのこと。一方のカスタマーフィードバックは、フォーラムやフィードバックHub(旧Windowsフィードバック&Insider Hub)から寄せられた意見、投票、さらにTwitterやブログも参照しているそうだ。加えて、今回のミートアップやde:codeといった対外イベント、ユーザー調査といった生の声を参考にしている。両者は性格が異なり、例えばエラーフィードバックを受けた場合、どのような環境で発生しているのかの影響範囲をテレメトリーデータと組み合わせ算出し、改善に活かしているという。

Microsoft/日本マイクロソフト社内で管理するMicrosoft Controlの内容。Build 2016で明かした内容と同じだが、一定のミッションを策定し、その結果がしきい値に達しているか否かを折れ線グラフで確認している

一部の数値や情報はマスクされているが、分析データをPower BIでまとめた状態。これをもとに改修ポイントを判断しているという

データ分析についても説明があった。客観的データは自社データベースに集積し、Microsoft Azure Data Lakeの社内版でデータを分析している。このデータは数百GB(ギガバイト)から、場合によってはTB(テラバイト)クラスになるそうだ。そのデータをSQL Serverに格納し、Power BIで可視化して修正の優先順に用いている。さらにMission Controlシステムを使いながら、ショートカットファイルをダブルクリックし、プログラムが起動するまでのミリ秒をチェックするといった検査も行い、Windows 10の開発を進めているそうだ。

品川本社の20F(MSDがあるフロアー)の写真。Power BIの結果が大きく示されている

主観的データに関しては、Visual Studio Team Servicesで一覧化し、賛成票(Vote)の多いものやMicrosoftが判断する高い重要度案件を選出して、開発チームに情報提供を行っている。MSDもMission Controlのデータを常に見られるように、品川の日本マイクロソフト本社では、誰でもデータを目にできるディスプレイを設置しているそうだ。

入谷氏はその結果として、Windows 10に加わった改修を次のようにアピールした。例えばWindows 10 Insider Preview Birudo 14291で加わった行モードのテキスト入力(手書きモード)キャンバスについて、書きにくいといったフィードバックが多かったため、現在の形に変更したと述べた。MS-IMEの予測変換精度も、比較的新しい単語を上位に移動させせることで、多種多様な候補が出やすくなっている。

Cortanaについてもフィードバックは多く、「どんぐりころころ」の歌詞が間違っていた件について、「指摘するフィードバック件数は非常に多く、日本固有ではダントツだった」(入谷氏)と苦笑い。また、昨今話題の日本語フォント問題についても重視しているとして、Microsoft Edgeに加わったサブピクセルレンダリング(RGBの素子を利用して高精密な描画を行う仕組み)の改善を行ったことをアピールした。その他の日本語フォントに関する点については、「今しばらく待ってほしい」(入谷氏)と話した。

フィードバックをもとに改修した行モードのテキストキャンバス

MS-IMEの予測変換も微調整が繰り返されている

「Cortanaの音声入力をより自然に」というフィードバックはかなり多いそうだ

Cortanaのフィードバックは良好らしく、逐一改修を行っていると日本マイクロソフト/MSDは説明していた

Microsoft Edgeでは若干の改善を行ったフォント描画。問題はフォント、そしてフォント管理システムにあるという意見は改善しにくそうだ……

さらにフィードバックHubの改善として、Windows 10開発チームからのコメントやユーザー同士のコミュニケーションを促進するコメント機能を紹介。このように、インサイダーからのフィードバックで変化するWindows 10だが、入谷氏は開発に反映に活かせる・活かせないフィードバックの説明もしてくれた。

「日本語で書かれていても、我々がチェックしているので安心してほしい。だが、(再現に)必要な情報が不足しているフィードバックは推測になるため反映しにくい。また、似たフィードバックは賛成票が分散してしまうため、既存のフィードバックを検索して賛成票を入れてほしい」(入谷氏)

春日井氏の「自分も(フィードバックに)目を通しているが、厳しい言葉は胸に刺さる。可能であれば真綿でくるんでいただけるとありがたい」という発言には、はっとさせられた。例えば「●●が動かない」といった理由でフィードバックすると、感情的な物言いになりがちだ。PCの向こうには、人間がいることを改めて思い出したいと感じた。

ほかにも、Windows 10 Mobileで有名な日本マイクロソフト デベロッパーエバンジェリズム統括本部 テクニカルエバンジェリズム本部 プラットフォームエバンジェリストの高橋忍氏のプレゼンテーションや、インサイダーによるWindows 10への不満点や評価ポイントなど多数語られたが、これらは別記事で改めたい。

インサイダーにはお馴染みとなったGabriel Aul氏の日本インサイダー向けコメントも披露

日本マイクロソフトの高橋忍氏。過激な発言を乱発し、会場を沸かせていた

最後に高橋氏のコメントを紹介しておく。

「(Windows 10の)日本語に関するフィードバックは日本人しか発せず、このままでは未来永劫変わることはない。数年後のWindows 10を決めるのはインサイダーの皆さんだ。特に(日本語のような)ダブルバイトは優先順位が下がりがちだが、米国のMicrosoft本社は日本を高く評価している。可能であれば賛成票を日課にしてほしい」

阿久津良和(Cactus)

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