パナソニックは、テクニクス50周年記念モデルであるダイレクトドライブターンテーブル「SL-1200GAE」(価格33万円)の予約を、2016年4月12日午前10時から開始。わずか30分で、限定台数300台が完売したことを明らかにした。

テクニクス50周年記念モデルのダイレクトドライブターンテーブル「SL-1200GAE」

同社では、「GAE」の「AE」は、「アニバーサリー・エディション」の略称で、全世界で1,200台の限定販売としていた。なお、今年秋には、ダイレクトドライブターンテーブルの新製品の投入が見込まれている。

一方、SL-1200GAEの予約開始にあわせて、パナソニックなど3社は、「レコード再発見プロジェクト」を発足させた。

同プロジェクトは、日本の音楽ファンにレコードの魅力を広めることを目的に、パナソニックのほか、レコード盤製造の東洋化成、レコード針の開発、製造を行うナガオカの3社が共同で推進するもので、4月12日、東京・芝公園の東京タワー 大展望台 Club333ステージにおいて発足会を行った。

具体的な活動については、今後、3社で協議する予定であり、レコードを聴くことができる音楽鑑賞推進イベントを全国で開催することなどを計画しているという。

パナソニック コンシューマー・マーケティング・ジャパン テクニクス担当の伊部哲史氏

パナソニック コンシューマー・マーケティング・ジャパン テクニクス担当の伊部哲史氏は、「テクニクスでは、ターンテーブルのSL-1200は、1970年代に発売し、累計出荷が350万台に到達したパナソニックを代表する製品である。今回のSL-1200GAEは、ダイレクトドライブターンテーブルを再定義すべく、すべての部品を見直した。回転のゆらぎであるコギングを解消し、レコードに刻み込まれた感動的な音楽を再現することができる。3社で、日本のレコード文化に貢献し、活性化させたい」と力を込めた。

ナガオカ 技術アドバイザーの寺村博氏

ナガオカ 技術アドバイザーの寺村博氏は、「MP-500は、最高級のカートリッジであり、演歌からクラシックまでジャンルを選ばないのが特徴。テクニクスのSL-1200GAEのカートリッジとして、評価されたのは心からうれしい。レコードのなかに詰まっている情報を、限りなく引き出してくれるカートリッジだと自負している」と自信を伺わせる。

東洋化成 レコード事業部カッティングエンジニアの西谷俊介氏

東洋化成 レコード事業部カッティングエンジニアの西谷俊介氏は、「針と溝の共鳴から、感動的な音の衝撃を、若い世代を含めて、多くの人たちと共有したい。3社でいろいろな情報を共有して、新たな可能性にチャレンジしていく」と抱負を述べた。

東洋化成は、神奈川県鶴見の自社工場内にカッティングルームを持つ、日本唯一の企業だ。

ピアニストのアリス=紗良・オット氏

発足式では、トークショーが行われ、最初に、テクニクス・アンバサダーであるピアニストのアリス=紗良・オット氏が登壇。「日本の製品は、テクノロジーに優れているという印象を持っている。テクニクスは、Rediscover Musicをメッセージとしているが、この言葉に共感している。テクニクスのOTTAVAは、クオリティが高く、目指している音楽をしっかりと届けることできる製品になっている。テクニクスを通じて、音楽の美しさを、多くの人に伝えたいと考えている」と評価したほか、自ら演奏した楽曲をSL-1200GAEで聴き、「自分のこの演奏を、アナログで聴くのは初めて。ノスタルジックな音は、ウイスキーにあう。懐かしい感じの音がした」と伝えた。

音楽家の鈴木慶一氏

オーディオ評論家の和田博已氏

また、音楽家の鈴木慶一氏と、オーディオ評論家の和田博已氏が「ぼくたちのオーディオヒストリー」として対談。お互いに、「はちみつぱい」としてバンド活動をしている立場から話を進める一方で、それぞれがお気に入りの1枚を選んで試聴した。鈴木氏は、グレイトフル・デッドの「ボックス・オブ・レイン」、和田氏は、はちみつぱいの「薬屋さん」をかけた。

和田博已氏は、「1972年に、はちみつぱいもデビューし、テクニクスのSL-1200も発売された。SL-1200GAEは、かつてのSL-1200よりも10倍以上に性能が高まり、この価格帯では世界最強である。350万台という記録は破られないだろう。私は、スタジオで作ったいい音を、家庭で、どう聴いてもらうかに取り組んできた。このレコードは、1973年当時の空気を閉じこめている感じがする。これをちゃんと聴けることはうれしい。これをみなさんに聴いてほしい」と語った。

ブロードキャスターのピーター・バラカン氏

音楽評論家の藤本国彦氏

さらに、ブロードキャスターのピーター・バラカン氏と音楽評論家の藤本国彦氏による「テクニクス ターンテーブルSL-1200GAEで聴くビートルズ・オリジナル盤のサウンド」として、エリック・クラプトンの「キープ・オン・グローイング」、ビートルズの「バック・イン・ザ・U.S.S.R. 」、「レイン」をかけた。

トークショーではお気に入りの一枚を選んで試聴した

ピーター・バラカン氏は、「3月までの1年間、アナログのレコードしかかけないというラジオ番組をやってきたが、リスナーにもアナログの違いが伝わっているのがわかった。CDとハイレゾ、そしてアナログを聴き比べると、やはりアナログがいいということになる。アナログのレコードに触ったことがない、どうやってかけるかわからないという若い人も、こうした音に触れてもらいたい。レコードは取り扱いが丁寧になり、聴き方まで丁寧になる。これもいい体験だと思ってほしい」とコメント。藤本氏は、「CDの雑誌を作っていながらも、アナログの音がいいと感じる。最近では、新譜でも、CDとともにレコードが出たり、プレーヤーの価格が下がり、手に入りやすくなった。テクニクスのようなプレーヤーで、アナログの音を聴くと、CDの音が聴けなくなる」などと述べた。

(左から)東洋化成 レコード事業部カッティングエンジニアの西谷俊介氏、オーディオ評論家の和田博已氏、音楽評論家の鈴木慶一氏、ピアニストのアリス=紗良・オット氏、ブロードキャスターのピーター・バラカン氏、音楽評論家の藤本国彦氏、パナソニック コンシューマー・マーケティング・ジャパン テクニクス担当の伊部哲史氏、ナガオカ 技術アドバイザーの寺村博氏

また、この日は、東京タワーの地下ホールには、「テクニクス SL-1200GAE 試聴ルーム」を設置、実際に音に楽しむことができるようになっていた。

東京タワー地下ホールに設置された「テクニクス SL-1200GAE 試聴ルーム」

SL-1200GAEには限定モデルとしてシリアルナンバーが入ることになる

SL-1200GAEに使用されているターンテーブル

コアレス・ダイレクトドライブモーター

高減衰シリコンインシュレーター

ナガオカのMP-500