ソニーモバイルコミュニケーションズとアイドルグループのでんぱ組.incがコラボレーションした「でんぱとーく大実験! 研究発表会」が4月9日、都内で開催された。ソニーモバイルのSmartBand Talkに専用アプリを搭載した「Dempa-Talk 零号機」を使った、でんぱ組.incとファンが音声による交流を行うというもの。ソニーモバイルが新しいコミュニケーションの形を研究するための実験と位置づけられており、慶應義塾大学環境情報学部の小川克彦教授による分析も行われた。

実験参加者が集まって盛り上がった発表会場

でんぱ組.inc

Dempa-Talk 零号機によるコミュニケーション

SmartBand Talkは腕時計型のウェアラブルデバイスで、ヘルスケア系の機能に加えてメッセージ内の音声を再生する機能を備えている。その機能を生かしたのが今回の取り組みで、でんぱ組.incのメンバーがテーマに沿って音声メッセージを投稿し、それがファンのSmartBand Talkに届くので、それに対して「いいね」や音声による返信ができるようになっている。

実験に使われたSmartBand Talkベースの「Dempa-Talk 零号機」

音声がアップロードされると通知が来て、タップすると音声がダウンロードされ、再生される

Dempa-Talk 零号機は、登録した実験参加者に有償で提供。実験のための専用アプリがインストールされたほか、バンドのボタンがでんぱ組.inc用にカスタマイズされていた。連携するXperiaスマートフォンは、参加者が所有している(もしくは実験参加のために購入する)ことが前提だったという。

Dempa-Talk 零号機専用のボタン

専用アプリはメンバーのアイコンも表示される

2月13日から3月末までの1カ月半にわたって実験が行われ、メンバー6人が合計で113回の音声を送信し、再生回数は14,873回になったという。いいねの数は4,772回、音声での返信は1,696回で、音声返信の総時間は33,672秒(約9時間)という結果だった。

実験は、メンバーが音声を投稿して、それをユーザー側が聞いて、さらに音声で返信する、というもの。ユーザー側はレポートも提出しているようだ

メンバーはテーマに沿って音声を投稿する

投稿数とユーザーの反応

メンバーは自宅や練習場、撮影現場、ライブ会場とさまざまな場所からメッセージを投稿。メンバーのリアルな音声でライブ前の緊張感、自宅のリラックス感といったさまざまなニュアンスが感じ取られ、それに音声で返信できるところもファンが盛り上がった部分だったようだ。

投稿された音声とその反応の例

投稿はライブ会場や撮影現場だけでなく、自宅からも行われていた

ほかにも色々な投稿に、さまざまな反応が返ってきた、ファンを楽しませるコミュニケーションとなっていたようだ

結果を分析した小川教授は、アイドルとのSNS上のコミュニケーションで求められているものについて、返信や反応に加えて日常の共有、人肌・親近感などが求められており、「でんぱとーく大実験!」を実施した結果、でんぱ組.incのSNSのコミュニケーションに対して「少し満足している」人が減少した代わりに、「満足している」という人が増えて、音声によるコミュニケーションによってファンの満足度が向上する結果が出たという。メンバーに対する親近感が増して、よりメンバーが好きになったといった声もあり、結果は良好だったようだ。

アイドルとのSNS上のコミュニケーションに求められるものと、それに対する声

でんぱ組.incのSNSについて、満足している人の割合が増加

より親近感が増すなどの効果があったという

小川教授は、人と人とのコミュニケーションでは関係性によって好まれるメディアが違うと指摘。同じ音声でもリアルタイム性の高い電話に対して、保存されていつでも聴けるでんぱとーく、文字ではリアルタイムのTwitterやLINE、リアルタイム性の低いメール、という4つのメディアで検証すると、家族や友人とは対面や電話、メール、の順に好まれ、アイドルとのコミュニケーションでは対面、電話に続いてでんぱとーくが好まれたという。小川教授は音声の方が親近感があって好まれるが、電話のようにリアルタイムだと恥ずかしさがあって、お互いのコミュニケーションに「ズレ」がある方がコミュニケーションしやすくなる、と分析。アイドルとのコミュニケーションツールとしては「真骨頂のメディア」と太鼓判を押す。

4種類のコミュニケーションを比較

家族・友人とのコミュニケーションでは対面や電話の方が好まれたが、アイドルだと対面に続いてでんぱとーくを挙げる人も多かった

今回の実験はひとまず終了するが、ソニーモバイルは「SNSの文字や写真だけにとどまらない、新しいコミュニケーションの形」を模索しており、今後もさまざまな取り組みを続けていきたい考えだ。