デアゴスティーニをご存知だろうか。ドラクエのラスボスっぽい名前でおなじみ、多種多様なパートワークを出版している企業である。歴史のある会社だし、テレビCMも昔から流れているので一度は耳にしたことがある人も多いだろう。

パートワークは日本語で「分冊百科」。あるテーマに沿って、付録つきの書籍を発行するというものだ。毎号ついてくる付録を集めて組み合わせることで、最終的にフィギュアやDVDコレクション、ジオラマなどが完成するという仕組みである。少しずつ完成に近づいていく様を時間をかけて楽しむのがデアゴスティーニの嗜み方なのだ。

3Dプリンタを集めてつくるデアゴスティーニ、

デアゴスティーニで取り上げられるテーマは、基本的にファンが多く人気のあるジャンルが多いのだが、たまに「そこを突いてきたか!」と驚くようなものが登場することもある。ちょうど一年前に創刊号が発売された「週刊マイ3Dプリンター」シリーズもその一つだ。

「週刊マイ3Dプリンター」

もう一度言うが、"3Dプリンタで作った何か"ではない。3Dプリンタそのものが付録としてついてくる書籍だ。"ついてくる"といっても、そこはデアゴスティーニなので完成品ではない。部品が55号分、つまり55回に分けて収録されており、これを組み合わせることで3Dプリンタが完成するという代物なのである。

この「3Dプリンタができあがるデアゴスティーニ」は創刊当時、ずいぶん話題になった。そりゃそうだ。普通の人が3Dプリンタをほしがるのは、それを使って何かを作りたいからであり、3Dプリンタそのものを作りたいわけではないだろう。「これ、需要はあるんだろうか……」と心配していたが、なんと今回、この「週刊3Dプリンター」を実際に完成させたという方を見つけることができた。というか、このシリーズは実はけっこう売れており、ユーザーもたくさんいるのだという。3Dプリンタを作りたい人がそんなにいたとは……。

しかし、まだよくわからない。何しろデアゴスティーニで3Dプリンターが完成するまでには一年かかるのだ。3Dプリンタ自体は普通に売っているのだから、3Dプリンタで何かを作りたいのなら、そちらを買う方が圧倒的に早い。それなのに、なぜ3Dプリンタ自体を作るのか。

そこで、今回出会うことができた「3Dプリンタを完成させたユーザー」の方にお話を伺うことにした。デアゴスティーニの3Dプリンタ、いったいどんなものなのだろうか。

完成させた人のお宅に直撃

――こんにちは。本日はよろしくお願いします。3Dプリンターを完成させたと伺っておじゃましたのですが、さっそく完成した3Dプリンターを拝見できますか?

秋吉さん:こちらです。

デアゴスティーニ自体に初挑戦だという秋吉郁郎さん。職業はエンジニアとのこと

――おお! 当たり前ですが、本当に3Dプリンターですね! これ、動くんですよね。

秋吉さん:もちろんです(笑)。実際に動かしてみますね。完成までには7~8時間かかりますが……。

これが3Dプリンタだ! 製品名は「idbox!」で、国内メーカー「ボンサイラボ」の監修を受けている

――ありがとうございます! しっかり動いてますね。日常的に活用されているのですか?

秋吉さん:ええ。いろいろなものを作って楽しんでいますよ。

――モデリングデータはご自身で?

秋吉さん:自分で作ることもありますが、ダウンロードしたものを使うことが多いですね。有名なサイトがあって、ユーザーがそこにデータを投稿してくれるので。

――どんなものを作ったのか見せていただけますか?

秋吉さん:iPhoneケースやiPhoneスタンド、名刺入れなど、実際に使うものを中心にいろいろ作っています。最初は失敗することもありましたが、そこはいろいろ調整してうまく作れるようになりました。

スマホの充電スタンド

スマホのバンパー

――失敗というと……。

秋吉さん:フィラメントが熱で膨張して詰まったり、一段目がうまくできなかったり、原因はいろいろありますね。

――でも今はこれだけ実用的なものが作れるようになったんですね。……おや?

作品の一部

――ドラゴンとか蛙とか、フィギュアっぽいものも作られていますね。

秋吉さん:ああ、これは精度を確認するためにテストで作ったものですね。3Dプリンタでフィギュアなどを作る方もいらっしゃるのですが、私自身は実用的なものを作ることが多いです。

――このクリップは?

秋吉さん:出力用にダウンロードしたデータはマネークリップだったんですが、書類を挟むのにちょうどいいので、書類クリップとして使っています。