庭木でよく見かけるザクロ。赤い実を割ってみると真っ赤な粒がこれでもかと詰まっており、食べてみると甘酸っぱい。庭木ではそこらで見るのに、スーパーで売られているのは「カリフォルニア産」。そういえば、筆者は「国産ザクロ」を買ったことも食べたこともないと気づいた。

皮をむくと、中には赤い粒がつまっているザクロ。この粒々を食べる(写真:PIXTA)

ザクロという果物に対して、筆者のように「スーパーで買って食べる、甘くておいしい果物」というイメージを持っている人もいれば、「庭の木からもいで食べる、酸っぱくてカタイ種のある果物」というイメージを持つ人もいる。筆者のまわりでは、「庭の木になるんだからわざわざ買う必要なんてない」と認識している人も少なからずいた(ちなみに、こう述べたのは概して男性)。

スーパーで買って食べるザクロはアメリカやチリ産のもので、きちんと管理されて育ったものだ。ゆえに甘くておいしいし、見た目も立派。一方で、庭木からとれるザクロはあくまで樹や花を愛でるための園芸用であり、果実を売ろうとして栽培したわけでもない。残念ながら、日本国内にはザクロの果実を商業栽培している地域がほとんどなく、正確な統計もとられていないのが現状だ。

不遇のザクロ

「女性ホルモンであるエストロゲンが含まれている」。そんな謳い文句で一時期ザクロがブームになったが、2000年に国民生活センターがテストした結果、期待されるような成分は検出されなかった。ブームは去り、今でもジュースやザクロ酢は細々と売られているが、決してメジャーとはいえない存在だ。

今でこそ"マイナー果物"の地位に甘んじているザクロ。しかし、江戸時代には「甲斐八珍果」のひとつとされていた。甲斐八珍果とは、甲斐国の代表的な果物8種類「ぶどう」「なし」「桃」「柿」「栗」「りんご」「ざくろ」「ぎんなん(またはくるみ)」を総称したもの(山梨県のホームページより)。甲斐国の代表的な果物としてもてはやされていたのに、どうやら忘れ去られてしまったようだ。

スーパーで買えるのはアメリカやチリから輸入したもの。カリフォルニアの「ワンダフル種」という品種が主流だ。グラフはアメリカからのザクロ輸入動向。輸入量は増加傾向にある(米国ザクロ協会提供のデータをもとに作成)

そんなザクロの機能性に注目したのが森下仁丹だ。

森下仁丹は、ザクロ特有のポリフェノールを濃縮した独自の「ザクロエキス」が、タンパク質の糖による変性を抑制する抗糖化作用、ビフィズス菌の生存を維持させるプレバイオ作用、抗アレルギー作用、長寿遺伝子として知られるサーチュイン遺伝子活性化作用などを持つと明らかにし、有用性研究を進めている。どんな有用性かざっくりいうと、ザクロは美肌やアンチエイジングなどに効果があるかもしれないのだ。

ザクロの機能性を利用した商品化を通じて、日本国内でのザクロ栽培を商業化することも見据えている。その産地として、山梨県に白羽の矢が立ったというわけだ。これにより、農林水産省の補助事業「平成25年度 緑と水の環境技術革命プロジェクト事業(新技術の事業化実証)」に採択された。2015年3月をもって同プロジェクト自体はいったん終了したものの、これをキッカケに誕生したのが「ザクロ果実栽培・利用研究会」(以下、ザクロ研究会)なる組織だ。