スマートフォンは、携帯電話とコンピュータ両方の顔を持ちます。ですから、スペック表を見れば専門用語のオンパレード……これではおいそれと比較できません。このコーナーでは、そんなスマートフォン関連の用語をやさしく解説します。今回は「802.11ac Wave2」についてです。

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現在、多くのスマートフォンがWi-Fi規格として「IEEE 802.11ac」をサポートしています。数あるWi-Fi規格のなかでも最新・最速という認識で問題ありませんが、チャネル幅やストリーム数など仕様の違いで伝送速度に差が出てきます。

無線LANの業界団体「Wi-Fi Alliance」では、その違いに基づき「Wi-Fi CERTIFIED ac」という認定規格を設けています。IEEEが定めた規格とは異なるため、第1世代が「802.11ac Wave1」、第2世代が「802.11ac Wave2」と呼ばれます。つまり、大枠ではIEEE 802.11acに準じますが、チャネル幅やストリーム数が少ないものがWave1、それらを増やして高速化したものがWave2となります。

周波数を複数束ねて一度に大容量データの転送を可能にする「チャネルボンディング」は、Wave1では最大80MHzですが、Wave2では最大160MHzにまで拡張されています。電波に指向性を持たせ、特定の端末との転送速度向上と電波干渉緩和を図る「ビームフォーミング」も、Wave2からサポートされます。

操作感で大きな影響があると考えられるのが、MU-MIMO(Multi User-Multi input Multi Output)のサポートです。Wave1までは、端末とアクセスポイントの関係は1対1であり、混雑時には順番待ちの必要がありましたが、MU-MIMOでは同時に最大4基の端末(クライアント)を処理できるようになり、通信効率が改善されます。

ただし、Wave2対応をうたうスマートフォンは2016年4月現在存在しません。MU-MIMOをサポートするスマートフォンは存在しますが、採用の本格化は2016年以降が見込まれます。Wave2対応を明記したルータなどのワイヤレス製品の普及もこれからのため、一般化するのはもう少し先となりそうです。

802.11ac Wave 1/Wave 2の比較
世代 Wave 1 Wave 2
最大伝送速度(理論値) 290Mbps~1.3Gbps 6.93Gbps
MIMO シングル(SU-MIMO) マルチ(MU-MIMO)
ストリーム 3 4~8
チャネル幅 20/40/80MHz 20/40/80/80+80/160MHz