名古屋メシ"あんかけスパ"のバラエティ王「ユウゼン」は何が魅力的なのか?

数ある名古屋メシの中でも個性派のあんかけスパゲティ。中でも元祖の「ヨコイ」、発祥店「そーれ」は愛知県外の人にも知られている名店だろう。その中で、豊富なオリジナルメニューで個性を放つのが「スパゲティ ユウゼン」(愛知県名古屋市)だ。

あの「あん」は何?

そもそも"あんかけスパ"とは何なのか。「中華料理のあんかけみたいなもの? 」「スパゲティ＋あんの組み合わせがよく分からない」と未体験の人にはどんな料理か、どんな味なのかイメージしにくく、そのせいか、名古屋以外にはなかなか広まらないご当地限定メニューとなっている。

その不可思議さの要因であるあんかけソースだが、実はこれはミートソースの一種。肉や野菜などの具の形状が残らなくなるまで徹底的に煮込んでこし、さらにでんぷんを加えることでとろみを加えている。これが中華料理や和食の"あん"に似ているため、あんかけと呼ばれるようになった。

あんかけスパの特徴はソースの独特のとろみだけではない。コショウによるピリリとした辛み、直径2.2mmの極太麺、麺をゆでた後でラードで炒める調理法。これらが相まって、どっしりとした食べ応えとパンチのある味わいが生み出されている。

"あんかけスパ"はヨコイなしに語れない

発祥は昭和30年代後半。ホテルのコック出身の故・横井博氏が親戚と共同で出店した「そーれ」で考案し、後に独立して「スパゲティハウス ヨコイ」を開店して名物に育て上げた。ヨコイの成功によって、名古屋ではあんかけスパゲティ専門店が続々と誕生。喫茶店で出す店も少なくない。

ソースだけでなくメニューバリエーションも、ヨコイ流がスタンダードになっている。ヨコイが考案したハム中心のミラネーズ、野菜中心のカントリー、そして両者を合わせたミラネーズカントリー、通称"ミラカン"は、ほとんどの店で採用されている。

オリジナルメニューで際立つユウゼン

と、あくまでヨコイを中心に回っている名古屋の"あんかけスパ界"であるが、オリジナルメニューで存在感を発揮しているのが「スパゲティ ユウゼン」である。創業は昭和47年(1972)と、あんかけスパ専門店の中では元祖の「ヨコイ」、発祥店「そーれ」に続くほどの歴史がある。

味の決め手であるソースは正統派。2週間じっくり寝かせて素材の味を凝縮し、沖縄の塩を隠し味にして輪郭をくっきりさせている。

ユニークなのはオリジナルメニューの豊富さ。マヨネーズをたっぷりトッピングしたツナマヨポパイは10年ほど前からのレギュラーメニュー。辛味ミンチをトッピングした激辛スパ、このミンチをソースに混ぜたピリ辛ペペロンスパ、そしてライスと組み合わせたワンプレートのランチなど。さらに春夏秋冬の期間限定スパも毎年新作が登場する。この店から生まれて他の店へ広まったものもある。

独自のサービスも豊富

独自のサービスも豊富だ。毎日3種類が用意されるサービスメニューは終日注文OK。しかもこの3品には、次回来店時に使える50円券がつく。毎回注文すれば、半永久的に50円引きとなるのだ。

13時以降はかぼちゃの素揚げ、カルピス、ウーロン茶いずれかのサービスも。さらに、オリジナルのハバネロソースで激辛にアレンジできたり、要望に応じて麺をラードで炒めずにゆで上げにしてもらったりもできる。何より、休憩時間のない終日営業というのがあんかけスパ専門店の中では珍しい。何かと使い勝手のいい店なのだ。

あんかけスパ激戦区の名古屋の中心部で個性を際立たせているユウゼン。元祖や発祥店を試した後は、あんかけスパの無限の可能性を求めてお試しいただきたい。

●information
スパゲティ ユウゼン
住所: 愛知県名古屋市中区新栄町3-13
営業: 11:00～21:30(土曜日・祝日～20:00、日曜日～17:00※各ラストオーダー)
定休日: 無休

※記事中の情報・価格は2016年3月取材時のもの。価格は税込

筆者プロフィール: 大竹敏之(おおたけとしゆき)

名古屋在住のフリーライター。雑誌、新聞、Webなど幅広い媒体で名古屋情報を発信。Webガイドサイト「オールアバウト」では名古屋ガイドを務める。名古屋メシ関連の著作を数多く出版。『名古屋の喫茶店』『名古屋の居酒屋』『名古屋メン』『続・名古屋の喫茶店』(リベラル社)は自腹リサーチをコンセプトにしてご当地ロングセラーに。10月上旬にはご当地グルメコミックエッセイ『まんぷく名古屋』(KADOKAWA、森下えみこ著)に案内人として登場。