もともとは450mmクリーンルームとして計画

imecは、もともと2016年から450mmウェハを用いた7nmプロセス開発のための研究開発パイロットラインを稼働させる計画を2012年に立てていた(図7)。

図7 2013年時点のimecの450mmウェハ対応R&Dクリーンルーム(パイロットライン)計画。最上段は資金援助組織名(ENIAC,FP7,KET,HORAIZON2020,は欧州委員会傘下の科学技術振興プロジェクト名、Flemish Gov'tはベルギー国フランダース地方政府、Industryは世界規模の半導体産業界 (出所imec)

この計画における第1期計画(2013~2016年)では、既存の300mmクリーンルームで450mmプロセスモジュールをいくつか選択して評価を行い、第2期計画(2017~2020年)で、新たに建設される450mmクリーンルームでフルフロープロセスおよびデバイスを開発することになっていた。

ベルギーのフランダース地方政府は、この計画を支援するためimecの450mmクリーンルーム建設に対して1億ユーロを資金援助することを2012年7月に発表しており、この補助金を呼び水にして、広く世界中の産業界から10憶ドル規模の出資を募ることを計画していた。

しかし、その後、業界の先頭に立って450mm化を推進してきた米Intelが、PC需要低迷やスマートフォン向けビジネスへの参入苦戦で業績が低迷し、300mmラインが埋まらず、450mm化を「期間の定めなく延期」(Intel関係者の話)してしまった。これに他の先端半導体メーカ―も右に倣えしたため、imecのクリーンルーム建設計画も宙に浮いていた。

その後、300mmウェハを用いて7~5nmプロセス開発やデバイス試作を行うために、新たに多数の装置を導入しなければならなくなり、今回、450mmではなく300mmクリーンルームを増築することになった。この件に関して、imecの広報担当オフィサーであるHanne Degans博士は筆者の取材に対し、「現在、半導体産業界で最先端は未だに300mmであり、増築したクリーンルームには300mm装置を導入するので、300mmクリーンルームと呼ぶことにした。将来、450mmに対する要請が産業界からでてきたら、450mmへ移行することは可能であるが、今はその時ではない」との説明を行っている。

imecには新設分を含めて総床面積12000m2の200mm/300mmクリーンルーム群があり、最先端の半導体プロセス開発/デバイス試作のほか、ナノバイオ研究、ニューロエレクトロニクス研究、シリコンフォトニクス研究、イメージセンサやワイヤレスチップ開発 MEMS試作、太陽電池試作、Si基板上のGaNデバイス試作、などさまざまな目的のために使用されている。

日本がずっこけている間にも世界は爆進する

ちなみに昨秋、imecを訪問した「世界で勝負する仕事術」や「10年後,生き残る理系の条件」などの著者で知られる竹内健中央大学教授がTwitterに「imecでは、世界の多くの企業からお金を集めて巨大な半導体クリーンルーム(試作工場)を建設中。半導体産業は成長しているのに、日本だけずっこけている現実を改めて実感した」と記していた。

日本国内だけに目を向けていては時代遅れになってしまうと言うことだ。日本では、SIRIJ, STARC, EIDECなど最後まで残っていた半導体研究機関や国家プロジェクトが日本の半導体産業の復権に貢献することなく今年度末にことごとく消え去る中、半導体大国ではないベルギーの半導体研究機関は世界中から注目を浴びて、日本の企業とも広範に協業してますます発展していくのはなぜか。日本勢は反省とともに戦略を練り直す必要がありそうだ。