説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、『どうして日本で「Wallet対応サービス」を見かけないの?』という質問に答えます。

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iOSに付属の「Wallet」(旧名Passbook)は、航空券などのチケットや店舗が発行するクーポンなどを電子化して管理するアプリです。iOS 6のとき登場してから満3年が経過しましたが、米国などの国/地域と比較すると見かけることも利用する機会が少ないことも確かです。

Walletでは、iPhoneの画面に表示された2次元バーコードを読み取ることで、チケットやクーポンの情報を読み取ります。チケットの情報をバーコードで管理する仕組みは多くの航空会社が採用しており、すでにバーコードリーダシステムを設置済という背景もあり、日本では全日空と日本航空がWalletを利用した搭乗手続きをサポートしています。国内線における2社のシェアを考えると、少なくとも空港での登場手続きにおいてWalletの存在感は皆無ではありません。

iTunes Storeでも、Walletが活用されています。「iTunes Pass」と呼ばれる電子チケットをWalletに追加しておき、リアル店舗のアップルストアで金銭を支払いそこへチャージを行うと、以降iTunes StoreやApp Storeの支払いで繰り返し使えるようになります。もっとも、コンビニエンスストアや家電量販店で購入できるiTunes Cardのほうが手っ取り早いため、積極的に利用しているユーザの話は聞いたことがありませんが……。

2016年現在、Passbookと呼ばれていた頃は存在した電子クーポンを発行する国内企業はほとんど見当たらなくなりました。当初の利用目的として挙げられていた会員カードを電子化し統合管理する機能も、日本ではあまり利用されていません。

とはいえ、この変化はAppleがWalletの中心的な役割として「Apple Pay」を据えるよう方針転換したため、と考えるべきです。Walletにクレジットカードやデビットカードを登録しておき、Touch IDによる指紋認証で決済を実行する、という流れをAppleは期待しているのでしょう。Apple Payは日本未導入ということもあり、詳細は明らかにされていませんが、Passbook登場直後にいわれていた2次元バーコードを利用した電子クーポン配布という役割は、すでに過去のものと考えてよさそうです。

日本ではもっぱら航空チケットやiTunes Passの管理に利用されている「Wallet」ですが、本領を発揮するのはApple Pay導入後のことでしょう