マーケットの成長が続いている国内のアニメ産業だが、NTTドコモの「dアニメストア」でも、従来の「見る」だけのサービスから「聴く」「買う」、さらにその先を見据えた形へとサービスを進化させていきたい考えだ。都内で22日に開催された記者説明会では、”アニソン”に特化した新サービスなどが発表された。本稿で紹介していこう。

NTTドコモの「dアニメストア」が新たなサービスを提供する。従来のアニメ動画の視聴サービスに加え、アニメファンの要望に応えた新たな展開を考えているという

dアニメストアの狙い

2012年7月に開始したNTTドコモのdアニメストア。月額400円でアニメ作品が見放題になるサービスで、2016年3月22日現在、約1,600作品(約29,000話)で展開している。会員数は200万人。記者説明会に登壇したNTTドコモ プラットフォームビジネス推進部の田中伸明氏は「作品数と会員数の規模で、ほかに類がない国内最大のアニメ定額動画サービスになった」と胸をはった。

登壇するNTTドコモ プラットフォームビジネス推進部 担当部長の田中伸明氏(左)。dアニメストアは月額400円でアニメ作品が見放題になるサービスで、会員数は200万人(右)

アニメ産業の市場規模は、2014年には過去最高の2,595億円に到達(メディア開発綜研2015年10月発表)。この成長著しいマーケットで、ドコモではまず「聴く」「買う」を充実させていく構えだ。「聴く」の分野では、アニソン(アニメソングの略)に特化したサービスを展開する。ミュージッククリップ(アーティスト映像、ノンテロップアニメ映像、dアニメストア限定オリジナル映像など)を180曲用意してスタートするという。ちなみに国内における上半期シングルCDセールスランキングのTOP100ジャンルの内訳では、アイドルと同じ規模でアニソンが存在している(日経エンタテインメント! 2015/9/24より)。こうした傾向から、田中氏は「アニソンは組織化されていないにも関わらず、これだけの売上が期待できる」とし、新サービスの展開に期待を寄せた。

dアニメストアは「聴く」「買う」を充実させたサービスへと進化させる(左)。「聴く」の分野では、ジャニーズやアイドルと同じ規模での売上が期待できるアニソンに期待する(右)

また「買う」の分野では、アニメイトと連携。dアニメストアの会員を誘導し、アニメ関連グッズの売上につなげていきたい考えだ。ちなみに国内ではアニメ関連のグッズ市場も成長傾向にあるとのこと。2014年は市場全体の規模が1兆6,296億円で、そのうち6,552億円がアニメ関連グッズの売上となっている(アニメ産業レポート2015より)。

「買う」の分野では、アニメイトオンラインショップ dアニメストア店と連携。アニメ関連グッズの売上につなげる(右)

ひとつのアニメ作品には数十の関連楽曲が存在し、また数百の関連グッズが存在する。dアニメストアの新たな展開も、そのあたりに伸びしろを見出している。「ユーザーさんには、作品やアーティストに対する愛がある。dアニメストアでは、そのあたりをサポートしていきたい」と田中氏。桜の開花宣言にちなみ「dアニメストアでも、ここで来期に向けた開花宣言をしたい」と笑顔で話していた。

NTTドコモでは近年、キャリアがオリジナルサービスを提供する従来の形から、パートナー企業とコラボする”協創”による価値創造へと、その経営方針をシフトチェンジしている。dアニメストアにおける今後の展開も、アニメを提供するコンテンツホルダー、アニメ関連のグッズを販売するショップとの連携を進めた”協創”に重きを置いたものだ。市場規模が大きいわりに、競合する”アニメ専用サービス”の数は多くない。このチャンスに、dアニメストアでは大輪の花を咲かせることができるだろうか。今後の展開にも注目したい。

dアニメストアにおいても、”協創”の取り組みを加速させる(左)。会場には特別ゲストとして人気アニメ作品の楽曲を手がける歌手の黒崎真音さんも招かれた(右)