このことは、顧客満足度の向上だけでなく、デバイス販売以外の収益の可能性の面でも、Appleにとって追い風となる。

これまでiPhone 5sユーザーは、Apple Watchを利用しなければ、Apple Payを使うことができなかった。しかし今後iPhone SEを選ぶ選ぶユーザーもApple Payに対応できる。特に中国市場におけるApple Pay利用のより早い成長に効果を発揮し、手数料収入を伸ばしていく契機となり得る。

NFCを搭載し、Apple Payの利用が可能

2014年まで年間25%の成長を遂げてきたスマートフォン市場は、2015年、10%前後の成長へと鈍化した。こうした環境の中でもシェアを伸ばしているAppleではあるが、同社も2016年第1四半期の決算では、前年同期比と比較してほぼゼロ成長を記録し、2016年第2四半期は前年同期比で減少する可能性もあるという。

iPhone SEそのものは、取り残している買替え需要、あるいは新たなiPhone需要を満たす大きな武器になると考えられるが、Apple Payをビジネスの柱として成長させていく際に、iPhone SEによって対応端末が増えていくことは、非常に重要な意味を持つことになるだろう。

松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura